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41.内緒の徴集(ダグラス視点)/受付札(レミアル視点)

よろしくお願いいたします。


クロゥインが昼寝に入った13時過ぎ頃、ダグラスは主のいなくなった冒険者ギルド長室で客を迎えていた。

客と言っても、アリッサ、デミトリアス、サジェスト、レミアルの4人だ。


執務室に置かれたソファにそれぞれ座る。


サジェストが念のため、と防音魔法をかける。

空間魔法士が使える空間を切り離す魔法で、聖者が使う防音魔法とは微妙に異なるが、細かいことを気にする者はいない。ようはクロゥインにさえ、聞かれなければいいのだ。


「今年はしないのかと思っていたよ、気合い入れて帰ってきたのに、誰もその話をしないからね」


サジェストが嬉しそうに顔を綻ばせるのを、ダグラスはため息で答えた。


「正直、仕事が立て込んでいたのもある。土トカゲが市街の建物を壊した影響も大きい。あれで、生産者ギルドは大忙しだからな。まあ、できる範囲では進めていたさ。なあ、アリッサちゃん」

「はい。進行状況に問題はないと聞いております。ただ今年は節目ということもありまして、皆さま大層気合いが入っていると言いますか…」

「分かるよ。滾るよね、やっぱりいつも通りにはいかないというか、いかせてたまるかって意地になるというか。予定通りで良かった、今年の俺はスゴイからね」

「それならば、我々も今年こそはと願っているのですが…」


デミトリアスの祈りにも似た言葉に、ダグラスは苦い表情しかできない。


「こればかりは、俺たちにはどうしようもないからな。運を天に任せるしかない。それにしても、今年は特に苛烈になりそうだな。時間調整が大変じゃないか?」

「そうですね、なんとか調整はしているのですが、心しておきます」

「いつもごめんね、クロゥインが我が儘で…」

「いえ、これも大事なことですから。お任せ下さい、腕の見せ所ですからね」

「じゃあ今年もとにかくよろしくお願いします!」


ダグラスが頭を下げると、その場の全員が大きく頷いた。



・・・・・☆・・・・・☆・・・・・☆・・・・・☆・・・・・☆・・・・・


「黒札入りました!」


冒険者ギルドの受付カウンターで、ジェニファーが大きな声を張り上げる。

おおっとどよめきが起こった。


「なんだ、内容は?」

「どんなヤバい山なんだ」

「いやいや、この時期ならアレだろ」

「ああ、あれか! もう、そんな時期かぁ、早いな」

「一年はあっという間だな」


ギルドの一階にいた冒険者たちが盛り上がり、仲間うちで囁きあう。


「センパイ、黒札って何ですか?」


同じく受付カウンターについていたアニーが小声でレミアルに尋ねてくる。

アニーは今年から冒険者ギルドに入ってきた新人だ。

冒険者としてそれなりに稼いでいたが、結婚を機に主婦に専業するため、パートで働き出した女性で、19歳だ。


結婚適齢期が二十歳前半のこの世界において決して早くはないが、既婚率の少ない受付嬢から嫉妬と羨望の眼差しを向けられている。


「アニーさんは初めてかもしれないですね。黒札は、ギルド長を直接指名した依頼の時に発行されるものですよ」

「ギルマスを直接指名ですか?! ええ、高そう…、それっていくらぐらいかかるんでしょうか?」


緑札が十万J未満、青札が十万J以上、黄札が百万J以上、赤札が一千万J以上の依頼報酬だ。もちろん金額が高いぶん、危険が伴う。赤札など、ランクSの冒険者くらいしか達成できない内容ばかりだ。

ちなみに、この世界の通貨は様々な種類があるが、一番普及しているのは大陸通貨だ。『ジェニー』で『J』と表す。


一般人の平均月給が30万Jで、年収4百万Jが基本だ。硬貨は鉄銭、銅銭、青銅貨、白銅貨、小銀貨、銀貨、金貨の7種類。鉄銭1枚が1Jで以降百枚、五百枚、一千枚、一万枚、十万枚、百万枚の価値となる。


「クロゥくんは時価ですよ」

「じ、時価?! いくら出せばいいのか、想像つかない…」


目を白黒させているアニーを、レミアルは微笑みながら見守るのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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