20.銀のイヤーリング
よろしくお願いします。
「あら、こんなところでどうかされました?」
女がのんびりと声をかけてきた。
顔を向けると、金髪の長い髪を揺らしながらレミアルが歩いてきたところだった。
紺色の受付嬢の制服に身を包んで、碧い瞳を細め、小さく首をかしげている。
「お前を探してたんだよ。ギルドの受付に聞いたら研修所まで新人を案内したって言われたから」
「それなら探知魔法で探すか、これで呼び出してくれればよろしいのに」
レミアルが耳につけたシルバーリングを示しながら、ふわりと笑う。
「確かに!」
「なんだ気づいてなかったのか、クロゥ」
「お前、気づいていたなら教えろよ!」
「なんだかわからんが理由があると思ったんだよ」
銀のイヤーリングは通信魔法の魔道具だ。身につけた者同士でメッセージを送ったり会話ができたりする。俺が加工して耐久も性能も強化した特別製だ。
ちなみに銀色に光ってはいるが、元の物質はエアレーという幻獣の角である。水牛に似たカバより牛に近い幻獣だ。角も牙も毛足の長い体毛も皮も余すところなく使えるのだが、角は一番魔価が高い。
イヤーリングは魔価50以上になる。さすが幻獣の角だ。強度が20しかないのでメッセージや声を届ける魔法などの簡単なものしか使えないが。ちなみに、メッセージは消費魔力10で、音声は消費魔力20だ。魔法士にはあまり気にならない程度の魔力消費量だが、ダグラスなどの剣士には地味にツライ消費量ではある。
「クロゥくんは相変わらず抜けてますねぇ」
「レミアルにだけは言われたくないな」
「あら、私の方がお姉さんなんだからしっかりしていますよ?」
「3ヶ月違いで偉ぶるな。それに過去の行いを顧みて発言しろよ」
同じ年だが、レミアルは昔から年上ぶるのだ。
彼女は性格がのんびりでかなりのドジだ。舞踊家という支援職業なのだが、戦闘中に眠りをかけたり、味方を操ったりと明後日な援助ばかりしてくる。
同じ村の出身の幼馴染で、ダグラスと同様付き合いは長いが、このドジに巻き込まれて死にかけたこともある。村を出発した最初のパーティはダグラスとレミアルの三人だったので、なかなか過酷な旅になったことだけは告げておこう。
「お前ら、そんな定型会話してる場合じゃないからな」
「そうだ、とりあえず、いくぞ」
「サジくんのところですか?」
「サジ?」
なぜここでサジェストの名前が出てくるんだ?
サジェストは俺のパーティ仲間で召喚士だ。問題児でもあるので遠方においやっている。
連日、メッセージや通信を届けてくるので、着信拒否しているのが現状だ。
「そういえばサジくんが自分のイヤーリングが壊れたから直してもらいたいって言ってましたよ。クロゥくんに繋がらないって」
故障ではないから、俺にはどうしようもない。
「サジェストに何かあったのか?」
「ここに帰ってくる途中で、連絡がなくなったんですよね。確か、隣の市くらいまでは来ていましたよ」
俺は拒否していたメッセージの未読をすべて開いた。
思わず呻く。
「クロゥ、大丈夫か? サジに何かあったのか?」
「いつものあいつらしい馬鹿な内容に頭が痛くなっただけだ」
ダグラスがなんだ、と小さく息を吐く。
サジェストは昔から俺を心酔してくる男だ。愛の言葉を並べたて崇めてくる。
そんな言葉ばかりが並んだメッセージは時折、場所や出来事が書かれていた。
直近のものに目を通して、俺は二人を見やった。
「あのハゲへの用事がもう一つ増えたぞ」
ありがとうございました。




