96.昔から今へ
よろしくお願いします
黒髪の冒険者は魔法剣士だった。
ランクAの冒険者で、それなりに名の知れた冒険者だ。
彼は大陸中を仲間と旅しており、ビーランド王国にも気まぐれに立ち寄っただけだった。
だが、そこで現国王の唯一の姫君であるイアラセイの誘拐が起きてしまう。
国王は王国の兵士を派遣して賊を捕えようとしたが、姫の行方は一向につかめない。そのうち、国王への退陣要求が始まる。公にすれば、姫の命はないとの脅し付きだ。
そこで大臣が冒険者ギルドに内密で依頼を出し、自国とは関係のない冒険者である黒髪の男へと依頼が舞い込んだ。
男は最初渋っていたようだが、あっさりと姫を見つけて奪還してしまう。
だが、彼らは姫を誘拐した賊とつながっていたのだ。
悪事がばれた冒険者たちはドラゴンを召喚すると、その騒ぎに乗じて姿を消してしまった。
代わりに、城にはドラゴンが残った。
青灰色のドラゴンなどおとぎ話の世界に存在するほどレアだ。
五大正竜とはまた別格であり、どちらかといえば神に近く崇めなければならないほどだ。
けれど国王はドラゴンへ怒りを向け、兵を差し向けた。
もちろんドラゴンに敵うはずもなく、幾度となく討伐を仕向けてもドラゴンは退治どころか動くことすらしない。
結局、王城の移転を行った。ドラゴンとの関係はそれでひとまず落ち着いたが、姫を誘拐した犯人は、姫の叔父であることが判明する。
もともと国王は婿であり、王妃が正式な王家の血筋だ。姫の叔父は王妃の半分血のつながった弟であるが、母親の身分が平民であったため王位継承権を認められなかった者だった。
その叔父が挙兵し、王都へと何度も攻めてくる。
だが、いつも肝心なところでドラゴンが返り討ちにしていた。
ドラゴンにとってみれば、自分の近くに来る者は討伐しにくる者だろう。
おかげで、国王はそのままだが、内乱にさらされる王都はたまったものではない。
そのうえ、叔父は東の隣国ヴィッテルを味方につけ、さらに兵力を増した。内乱から国と国同士の争いに発展したのだ。
差し向けられる兵力をドラゴンが一蹴する。しばらくはその状態が続いた。
だがある日、危うい均衡状態を保っていた時に、王都の守護となっていたドラゴンがいなくなってしまったのだ。
黒色と銀色の髪をした娘がドラゴンを連れ去ってしまったのだから。
お読みいただきありがとうございました。




