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葛城君の成長とうーたんのおせっかい

あいあい、日付付けてこの時期ですよーってかいただけっす。

「また来たか」


7月10日 月曜 05:30

有給消化しろやゴラー!と言われたので、消化がてら葛城君がどの程度

頑張れているかを道場まで見に来た。


「ちょっと様子見ですよ、体の方はガタガタで錆付いて居たので、

 ほぐしがてらまた始めてます」


ついでにゲーム内で使える動きを重点的に使っている為、鈍った体ごと

反射神経が上昇したのは秘密だ。下手してこの人なら買ってやりかねない。

高校のときのミスを繰り返してはならんのだ。


「そうか、坊も久々に来てな。揉んでやったぞ、はっはっはっ」


心底楽しそうだが、久時にとって見れば果てしなくダウナーな気分だろう。

あ、坊と言うのは久時のことだ。おじさんは何故か久時を毎回そう呼ぶ。


「なにか用事でもあったんですか?」

「なに、新入生を紹介したいとかでな、高校生とカタギリという女を置いて

 さっさと行こうとしたので、久々に稽古してやった。お前もそうだが、

 怠ければ錆付く。その事を忘れるなよ」


ありゃー、それは久時が悪い。ま、見てたら見てたでこの前の俺状態になるから

似たり寄ったりだが。


「分かってますよ、身を持ってね」


読みはまあまあだったが、体がそれについて行かなかった。反応の遅れ、

重心の置き方、どれ一つとって、高校時代の時と比べれば半分以下の実力

と言える。運動を始めたのもそれが理由だ。まあ、実戦に使えるかは

微妙かもしれないが。


「夏目、入れ」


ガラガラガラ


「今来ました!」


元気良く入ってきたのは、寝坊したのか、息を切らし、顔が上気した

少女だった。この子がさっき言っていた高校生か。


「分かっている、客人だ。今茶を入れてくる、話していると良い」

「は~い」

「俺が入れましょう「良い、カタギリも来る、座って待っていろ」あ、はい~」


この爺さん、結構頑固なのだ。故に、こちらが譲らなければ10分以上

首を縦に振ることがないんだ。


「はぁ、かわんねえなあおじさん」

「そうだトウカ、自己紹介は先にしておけ、お前の学校の後輩に当たるらしいぞ」


そう言って足早に部屋を出たおじさんに、やれやれと頭を掻き、

本人の聞こえない場所で了承し、自己紹介を始めた。


「はいはい、わありましたよ。・・・自己紹介だったね、西藤克己。一応、

 こっちでも学校でも先輩って括りになる。・・・学校はOBか。きみは?」

「〈夏目(なつめ) 香奈(かな)〉です、〈塚元つかもと (ゆう)〉君からの紹介で、4日前から通ってます。

よろしくおねがいします!」


おーおー、元気なやっちゃなー。ただ、ここに4日居て尚この台詞が

出るって事は、恐らく今の俺より強い。いや、それほど鈍ったと言うべきか。


「こっちに来る事はあんまりないから、気を使ってもらわなくて良いよ。

 悠君の紹介なのに、久時とこっちに来たんだ?」

「兄ちゃんと違って、俺はそう言うのに関わりたくない。だそうです」

「あー・・・悠君らしいか。そう言えば、葛城君とはもう会ったかな?」


塚本家唯一の異端児、音楽好きのあの子なら、分からないこともない。


「はい、ひさと君とは顔合わせと基礎だけだけど、会ってます。

 話しかけようとすると逃げちゃうので、今仲良くなる方法を模索中です!」

「葛城君は押し強い人多分苦手だから、疲れたときにでも話してあげると良いよ」


基本的に、発言する人間と話しかけられる人間って奴は、話が合わない限り、

必ずと言って良い程話が続かなくなる。だから、一緒に体験した事を

ネタにしてあげると、驚くほど快活に話すのだ。別に葛城君は

そう言うのが苦手でもないが、恐らく話そのものが合わないのだろう。


「はい、頑張ります!」


本当に元気な子だ、千崎辺りと会わせてみたい。


「遅くなりましたー」

「ましたー!」


元気良く頑張る発言をした直後、男女の声が道場に響く。この声・・・。


「うーたん?」


カタギリって片霧の事か!?


「あれー、留守かな?」

「勝手に入りますよー」

「それはそれで問題だと思うんだが?」

「あ、かっちゃん、ういっす!」


やっぱ順応早いなうーたん、多分おじさんから聞いてたんだろうけど。


「あいあい、どうだ、最近は?」

「うーん、護衛って単語が要らなくなってきたかな?」

「うーたん・・・」

「かっちゃん・・・」


そんな馬鹿な、とは言わない。葛城君は少々異常だ。目の前にこぶしが

迫ったとき、それを見ながら避けようとは普通しない。と言うより、出来ない。

人間の反射はそんなに簡単に変えられるものではないのだ。だからこそ、

体力をつければ確実に勝利できると断じられる程度には信用もしている。

・・・そこ、妙な反応やめなさい!・・・っと、話がそれた。でだ、


「へえ、じゃあ何でこの「茶だ、飲め」どうも、道場に通ってる?」

「壊されないように見守ってるんですよ!」

「あ、うん・・・・」


理解できてしまった自分が憎い。


「どうも、こんにちは」

「葛城君は・・・元気ではなさそうだね」


複数の打ち身、体のあちこちに有る痣、どう見ても素人のそれではない。

誰かと稽古してるのか?おじさんはこんな中途半端な傷は残さないし。


「まあ、なんだ、死にはしないから、そこだけは安心してくれると助かるよ」


今まで、肩が外れた~何処が痛い~は聞いた事があるが、神がかり的に

誰一人後遺症を負うことなく、次の日には筋肉痛の残った体を引きずって

この場所まで辿り着ける程度に回復している。それは、加減を間違えたときも

まったく同じだ。だからと言って、別におじさんを勧めることはない。

当日は地獄の苦しみなのだ、カゲすら3日目で逃げ出す程に。


「揃ったなら始めろ、時間が有るわけでもないのだろう?」

「でした!!」

「頑張って「お前もやれ」・・・昔ほど辛くない事を願います」


やっちまた感がすごいぜ・・・。


「かっちゃ~ん、勝負しようぜ!!」

「良いぞ、つっても、記憶どおりならランニング位しかまともに勝負できる

 程の物はないけど。うーたん足遅くなかったっけ?」


校内でも確か真ん中よりかなり下だったような気が・・・。


「ふっふー、誰が私との勝負と言った。戦うのはこの人だー!」

「え、僕ですか?」


指を指された葛城君が動揺している。これは、気を引き締めないと負けるな。


「1月で変わるもんか?」

「やればわかりますよ、ふっふっふ」

「・・・分かった、いつも通りのペースで走れば良いから、決して、

 無理はしないでね。葛城君、先が辛くなるから」

「はい、大丈夫ですよ?」


素っ気無く言う葛城君だが、駄目だなこりゃあ、本気の目をしている。


「そんじゃあまあ、始めますか」


まずは柔軟からー。


・・・・30分後



「ゼッ・・・ハッ・・・・惜しいけどまだ足りなかったね・・・クッソ疲れた!!」

「残念ですね~」

「ハッ・・・ハッ・・でも、頑張れました」


全体で13㎞のコースを、3㎞程走り切った段階で気づいた。この子、化物だ。


「なんつー・・ハッ・・・・どんな事をすれば短期間でここまで・・・ゼェ・・」


短期間でここまで体力をつける方法を克己は知らなかった。故に、

ここからの台詞は必定だった。だが、直後に聞いたことを後悔する。


「ハッ、ハッ、回復促進機能で肉体に掛かる負担を短時間で回復させて、

 それを繰り返しました」

「は・・・君は馬鹿か!!」


当たり前に言っているが、あの機能には絶対的且つ致命的な欠点が存在する。

それが、回復時に起きる、全身がバラバラになったと錯覚する程の激痛と

寿命なのだ。回復ってのはつまり、細胞分裂を促進すると言う事、そんな事を

すればどうなるか、火を見るより明らかだろう。故に、緊急且つ可及的速やかに

治療しなければ死亡する人間に対して使用される最後の手段として存在している。

ここまで考えた時、克己の脳内である事が引っかかった。では、その状態の

人間を判別できる機能は付属していないのか?と。答えは否、必ず付いていた。


「かっちゃんよう、その情報は最早時代遅れなのだよ!!」

「なに?」


そう、つまりは何らかの理由で使用できる状況になったと言う事、

その疑問には夏目ちゃんが答えた。


「促進による細胞の老化現象を緩和する技術がちょっと前に発表されましたよ?」

「マジ?」

「まじまじー、激痛の方は無理だったみたいだから止めたんだけどね」

「うわー・・・恥ずかし!」


情報を取り込んでいない事が裏目に出た。その状況に大仰に克己が顔を覆う。

いやあ、これだけ恥ずかしかったのってうーたんから紹介された人に

ドス利かせて話したとき以来だなぁ・・・つい最近だったわ。


「いえ、お気遣いありがとうです」

「あはは、いやいや、流石にあの技術の革新は無理だと思っていた所為で

 そこに考えが至らなかった。すまない」

「全くもう、かっちゃんはどじだなあ」


茶化すうーたんだが、コイツ、忘れてないだろうな?


「お前は少しくらい賭けの事気にして話すのためらえー!!」


と口では言っているものの、それでも疑問が残る。あの打ち身は何なんだ?

ただ、考えても分からず、うーたんが何も言わない所を見ると、大丈夫なのだろうが。


「気にした所でどうにもならんからね。私はスタンスを崩さん事に決めたんよ」

「の割に口調は定まらないのな」


少し緊張が解れた気がした克己が、久々におちょくるかー。と、思っていると。


「・・・5分」

「!!」


ビシィ!


その言葉一つで、全員の背筋が伸びた。発したのは当然おじさんだ。

この人、まだこの方式採用してんのか、体が覚えてて反応しちまった。


「後5分休憩して良い、柔軟してから基礎、組手、終わったらいつものだ」

「分かってます、この方式の採用、ありがとうございます」

「より合理的と判断しただけだ、感謝される謂れはない」


そんなこと言っちゃってー、ツンデレ(ツン率65%)なんだから。


「方式、です?」

「ああ、元々この道場、基礎と体力作り以外は数ヶ月後まで最後のアレで

 占めてたんだ。だから、組手を初期段階からやってくれないか頼んだ」


あの人曰く、やるなら実力の拮抗した者でなければ実入るものがないのだそうだ。

俺の場合は当時居た3人の生徒の内、一人とやるまでに5ヶ月掛かった。

ちなみに、おじさんとやるアレの寸止めはほぼ無いが、生徒同士での組手には

ある。故にこう言われる、私との組手はとりあえずぶちのめす事だけ考えろ。

私に気遣うなら、その力を持って私を倒してみろ、と。


「じゃ、基礎始めようか」

「毎回思うんですけど、この基礎って、さっきのとどう違うんです?」

「さっきまでは準備運動と体力作り、こっちは習うに当たって必要な

 動作や筋肉を満遍なく鍛える為の・・・おじさん的に言えば、肉体改造かな?」


別に特別な事やるってわけじゃないけどな。


「こっちの方があんまり辛くないのは」

「うーたん、それは1月経ってから言おう。そこまで行けば分かる」


葛城君も同意している、分かれうーたん。


「何をしている、始めろ」

「はいはい」


と言う事で、基礎トレーニングを始め


「トウカは高校時代のメニューだ、体力も戻ったようだからな」

「はえ?」


と言う事で、俺は死んだ・・・。


・・・・30分後



「もう・・・・・むり・・・・だ!!」


ドサッ!!


「よし、終了だ」

「はえー」

「大丈夫、かっちゃん?」


20秒のインターバルが有ったとは言え、30分連続の基礎練は死ねる。


「やはり体が硬くなっているか、早めに直せ」

「無茶言うねー・・・失礼しました」


若干口調が崩れてしまった、良くある事だが、おじさんの前では

極力謝ることにしている。理由は昔の癖だ。


「構わん、組手だ、1本3分、インターバル2分、夏目とカタギリ、トウカと

 ヒサト終わったら次、最後に2人一組で私と組手とする」

「「はい」」

「よろしくお願いします」


・・・・



「5手詰み」

「俺の真似かい、葛城君」


ガッ!


なめやがって、そう思った克己に、葛城君が鬼気迫る表情で突っ込んでくる。これは、


「・・・(強さは本物か、才能マンめ!)」


想像を逸する戦いに、動揺し、克己は本来の実力を出せず、防戦一方の

状況にまで追い詰められていた。誰が予想できる、あの葛城君が速攻と。


「3、2、」

「ただ、まだ甘い!」


重心の浮いた瞬間、ローキックで足を狙いつつ、繰り出された拳を掴む。


「拳は引く時に最も隙を生むんだ、覚えておきなさい!」


ガッ!


「1、・・・!」


蹴りを避け、掴まれた腕で投げられる直前、視線がギリギリ届かない

場所に入ろうとしていた手刀が、克己の体を見失う。弾かれた。この時点で

相手を見れていない証拠だ、がら空きの頭部に肘打ちで終わり。ただ、

そんな事はしないが。おじさんも止めないって事は、そう言う事だろう。


「これは手刀受け、既に習っているだろうけど、君は攻めだけに

 固執してしまうと疎かになる受け技をもう少し多くした方が良い」


死角を突いたとは言え、真直ぐに攻撃してしまえば対処は可能だ。

だからこそ、次の一手の為に受け技が存在する。そこんところは葛城君は

及第点には行けても、まだそこを抜け出せていない。授業には丁度良い。


「次、夫婦手」


両の拳を前に出し前後に構え、重心を低くする。おじさんの見よう見真似で

覚えた付け焼き刃だが、今の葛城君には十分だろう。


「フン!」


ベースは・・・なんだろ、蹴り主体の・・・カポエラ?


「間合いの外から攻めれば良いものでもないけどな」


ガッ!バキッ!


蹴りを放った時点では相手の間合いの外、防御した時点でもそうだ。

だが、次の瞬間には間合いの中に入られていた。慌てて膝蹴りを放つ

ものだから、中途半端に空いた腹部に防御した左手の後に放たれた

右拳が当たる。ただし軽くだ。


「これが夫婦手、防御と攻撃を同時に行う技だけど、足を組み合わせれば

 こんな使い方もある。あと、まだ練習不足だ、精度が甘いし動きもぎこちない」

「グッ・・・!」


数週間で求めるものでもないが、付け焼き刃でも届く可能性がある牙を

見て、少々熱くなってしまう。


「さっきの方がまだマシだ、来ると良い」


[ここからの逆転劇を見せる気はないので、カット!]


・・・・



「勝者、トウカ」

「うーたん弱い」

「う、煩いよかっちゃん!」


組手が終わり、各々やるべき課題が見えたのだろう。特に夏目ちゃんは

分かり易く意欲的だ。別に何かやったって訳でもないんだが、どうしてだろ?


「組む相手は自分で決めると良い、休憩は5分、終わったら風呂でも入って行け」

「うーむ、・・・うーたん、やるか?」

「私ぃ!?」

「やれば分かるよ、多分、この中で一番相性が良いから」

「分かった!」


うん、分かった。他の連中からは結構避けられてんのな、分かったから離れろ!

掴み掛かるな、真面目に痛いんだようーたん!!


「技苦手なら避ける訓練でもしとけよ、中途半端だから苦手意識持たれんだ」

「なんだけどね~、ほら、私、強いから」

「それ、俺の前で言うか?」

「そだよ、だから」


こいつ、懲りてねえな。と思った克己に、聞きたくない言葉が入ってきた。


「今度は私が守ってあげます」

「・・・いらね」

「そんなー!?」


俺のがそんなー、な気分だよ馬鹿!


「休憩時間終了だ、決まったなら早く準備しろ」


・・・・



「先にやらせてもらって悪いね、葛城君、夏目ちゃん」

「構いません」

「大丈夫です!」


おーおー、この2人、万が一にもおじさんを倒せると思っていない顔してるねぇ。

さて、どうだろうか。


「3分」

「2分で良いですよ、加減は少なめで十分です」


この組手、実は時間が短くなる毎に難しくなって行く。3分は今のうーたんと

俺を合わせた時の戦力差を表しているみたいだが、少々加減が過ぎる。


「それほど強いとも思わんが・・・良いだろう、2分だ」

「本気で行きます」

「私も!」


緊張感の無い言葉を合図に、組手が始まった。


「トウカ、お前は教えたつもりだろうが、思うとおりにはならんぞ!」


ガッ


「分かってますよ、だからアレを捨てさせたんです!」


ドカッ、バキ!


「一撃で仕留められる者を存えさせたところで何の意味がある、一撃で殺せ!」

「あんたと俺じゃあ考え方がちげえっつってんだろうが!!」


口調に関しては気にしないで欲しい、組手中は荒くなるんだ。


「入る隙無いなあ・・・」


いや、普通にある。ただ、そこに罠が多くて俺がふさいでいる状態ってだけだ。


「クク、では、少々本気で行くぞ」

「フン!」


繰り出された右拳が、衣類に触れてズレる。そこから一歩前に出たおじさんの

指が、引いた俺の指に、


「かけさせてやらねえよ」


ガッ!


触れる瞬間、近づいていた。重心による移動法によって、一瞬隙が・・・


「ああ、重心移動による残心か。上手いな」


出来なかった。


「マジか!!?」


ドギャッ!!


「この・・・!」


全てを見通したような突きが飛んで来たが、ギリギリの所で避ける。だが、

それは間違いだった。瞬時に硬直した体に足を掛け、同時に当身。コレは

避けられない。受け流そうとした腕が瞬時に弾き飛ばされる。


「終いか?」

「・・・・誰か忘れてますよね?」


あるいは一人なら、この時点で終了だ。だが、おじさんが危惧した可能性で、

もっとも低いそれを実行できる事を、克己は知っていた。


「てい!」


ドガッ!!


「なん!?」


うーたんから繰り出された思わぬ一撃に、おじさんは必要以上に距離をとる。

そう、うーたんは強い。筋力だけならこの場に居る誰より、下手して影満よりも

強いほどだった。加減しすぎて非力なイメージしかない人が多かったが。


「どこにそんな・・・グッ!?」


攻撃を受けた腕の痺れが酷いのだろう、左腕が動いていない。


「うーたんはちょっとした異常体質なんだ、だから技って奴が苦手でな。

 殺しちまうかもしれないから加減しすぎてへにょへにょになっちまう」

「そこまで言わなくたって良いじゃないか!」

「事実だろ、それに、まだ終わってない」


そう、腕が使えなくなったことによる戦力の半減は存在しない。むしろ、

腕が使えなくなったお陰で加減の必要がなくなった程度にしか思っていないだろう。

だから、


「じゃ、タッグで戦うとしますか」 

「即席のコンビネーションで勝てるほど甘い訳ではないぞ?」

「知ってます、だから」


ゆっくりと、ただし確実に、断言する。


「勝って証明しますよ」


宣言と同時におじさんの気配が膨れ上がる、ああ、虎の尾を踏んだ。


「うーたん、手え出して!!」

「え、わかったけど・・・なんでー!?」


ぶん投げられたうーたんの顔が驚愕に染まるが、一瞬の躊躇いもなく繰り出された

おじさんの一撃に防御しようと腕を交差さ・・・


「信じて殴れ!」

「!!」


する直前の言葉に、条件反射的に手を伸ばす。そして、


「おりゃっ!」


スカッ!・・・ドキャッ!


「即席の割りに、・・・様になっている」

「そりゃどうも、ナイスうーたん」

「う、うん・・・ちょっと怖かったよ?」


おじさんの攻撃が命中する直前、足を引き、同時に軸足に力を加えて、蹴らせる

ことで不意打ち気味に拳が命中した。こう言うのは高校時代の杵柄ってやつだ。

踏み込もうとした所為で中途半端に受け流した結果、肩に掠った一撃で微妙に

動きが鈍くなる。ここだ。


「じゃ、締めと行こう。手、片方で良いから握ったままでよろしく」

「はいはいー、攻め攻めだー!!」

「淡いな、腕が無ければ」

「足使わせてやるほどお人よしに見えますかね」


トン


「人を踏み台にするなー!」


うーたんがぼやくが、コレくらいしか手が無いんだ。許してな。


「フン!」

「ハッ!!」


バチッ!!


放った蹴りがぶつかり合い、初めておじさんの顔に焦りが灯る。


「なんと言う・・・、反射能力が向上しているのか!」


大正解、秘密は教えないけどな!!


「うーたん!」

「させん!」


バチィ!


蹴り主体での攻撃へ上からの攻撃によって足を合わせ、動きを封じようと

したが、ほんの少し緩くなった瞬間にはじき返され、同時にうーたんの拳が

おじさんの足に絡めとられる。その瞬間、


「そのための片腕!」

「ぬ!」


ドカッ!


弾かれたトルクをそのままうーたんの脱出に使用して、入れ替る瞬間、

斜めに蹴りを入れる。自分の力も乗った一撃だ。重いだろ。だが、


「こんなもんじゃねえだろ!」

「左腕の痺れが無ければ殺している!!」

「言い訳こいてんじゃじゃねえぞ爺!!!」


この時点でうーたんの手を離し、受け流された蹴りの威力を

そのまま裏拳に変更、寸でで受けた足が衝撃を吸収しきれず、

1m先まで滑る。


「片腕の不利があろうと」

「お仕舞い」

「「!!?」」


後ろにうーたんが立っている事がそんなに不思議かおじさん。あと、葛城君まで

驚く事は無いだろう。ただジャンプしただけだぞ?


「せい!」

「バカ、本気でやれ!!」


テレフォンパンチではおじさんの速度についていける訳が無い。案の定、

下顎に手刀が・・・手刀じゃない、ヤバイ!


「まいった!」


ピタッッ!


「「なんで!?」」

「へ?」


決着した瞬間、葛城君と夏目ちゃんから驚きの声が出る。張本人の

うーたんすら困惑しているようだった。ただ、夏目ちゃんは

直ぐに気づいたようだ。あー、と言う顔をしていた。


「・・・・すまない、熱くなった」

「お前、下見ろ」

「え・・・!」


咽頭に突き刺さりかけた拳がうーたんに触れる直前で止まっていた。

当たれば確実に呼吸困難になる危ない場所への迷い無い一撃だ。

本気で危なかった。


「良いです、今回はうーたんが悪い」


それを踏まえて、そもそも、あの数瞬が無ければ起きなかった事だ。


「私?」

「気遣う暇があるなら確実に無力化するべきタイミングでのテレフォン

 パンチって、もし手心加えるにしてもアレはなかったよ。うーたん」

「そう言われてもなあ・・・」


拳を引きすぎる一撃ってのが別に悪いとは言わない。ただ、あの時、

確実に一発入れられるタイミングだったあの時なら、迷わず蹴るべきだ。

だが、彼女の相手を気遣うおせっかいの所為で、そこに終着する事はない。

もしそれ(蹴り)を踏まえても、おじさんは防御していたし、俺もそこを責める気

満々だったのだから。


「半端に気遣って自分が傷ついてちゃあ意味無いでしょうが!」


ポン


軽く落ち込むうーたんの頭に軽くチョップして、隅に行くよう促す。

別に悪いとは言わないんだが、おじさんとの勝負だと致命的だよなぁ。


「じゃ、次葛城君と夏目ちゃんの番ね。おじさん、連戦よろしく!」

「・・・かまわん、痺れも取れてきた。支障は無い」

「じゃあ」

「遠慮なく」


ここぞとばかりにやる気満々な二人には悪いが、多分本当だぞ。最後の拳、

攻撃側に目が行きがちだが、受け手である左もちゃんと動いていた。


[結果:惨敗]


・・・・



「終わりだ、10分間休んでから学校に行け。カタギリ、今度坊を呼んで

 くれないか、早急に必要な用件がある。数日前の件で連絡が取れなくてな」

「うへー・・・勝てないなぁ・・・・・」

「・・・・・」

「分かりましたー、ひー君に伝えておきます」


思い思いの反応の中、克己の思考は少々他とはベクトルの違う方に傾いていた。


(夏目ちゃんのスタイル、見た事があるような気がするんだが、何処だったか・・)


空手主体で突きが早い、ただ、虚実があんまり無くて足元もお留守に

なりやすい。はて、どこかで・・・。おっと、その前に。


「葛城君葛城君、渡すの忘れてたんだけど、これ持ってね。護身用には

 丁度良いものだからさ」

「え、あ、はい。ありがとうございます」

「あと、無闇に捨身はやめた方が良い。自分が軽すぎて攻撃されても

 怖くない。だから、君はまず、防御を覚えなさい」


何が有ったかは知らないが、葛城君の焦り方からして、何かあったのは分かる。

ただ、その所為で自分を壊してしまいそうな彼は見たくない。だから、

手段を与える。とても危険だが、有効な手段を。


「・・・はい!」

「私にもなにかアドバイスを!」

「足元がお留守、虚実がないから読みやすい。以上!」

「最近同じ事言われましたよー・・・」


と言う事で、夕方にもう一度同じような事があったが、まあ何事も無く、

その日が終わった。後は寝てるだけと言う・・・どうしようもねえなこれ。

あいあい、ちょっとだけ出しました夏目さんですが、まあ

関わるかどうかで言うと別にーと言う人です(現実編で関わる人あんま

居ないし、そう言うもんだと思ってください)


見るもんがねえ(定期)

邪神ちゃんと働く細胞とオーバーロード以外微妙なの多いよー!

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