飛ぶだけの蜥蜴と茶番劇
でけたけど、書きたい事はあまり書けなかったよ(いつものやーつ)
(うーむ、対空ならヴァイス辺りなんだが、明らかに食われて死ぬ未来が・・・)
対空戦闘は目下の課題でもあり、同時に、可能ならだが、大きめの
体を持つモンスターをテイムしておきたいと言う気持ちもある。さて、
現在のテイム確率はどれ位か、ちょっと試したいなぁ。
(ワイバーン種のテイム成功率は、聞いた話だと一万分の1以下
翼に張り付ける時間は多く見積もって2分間、その間に出来なけりゃ
今回は諦めて逃げよう。背中だろうがその気になれば攻撃も届くしな)
今の所、中心都市までの距離3㎞と少し、丘になってるから向こうからは
見えない。でもって、それが分かってるこいつは一定以上の高度には行かない。
成程、テイム日和だ。
「<特別魔法・全上昇>どこまで通用するか」
[一応説明を、スペシャルが付く魔法は一定以上のレベルになると覚え
られます。今回の場合、現状使用可能な全ての補助魔法を70%の
効果で自身に付与する。と言う物です(地味に消費MPが少ないのも特徴)]
どちらにせよ、手傷すら追わせられなきゃ追いつかれるのは
目に見えてるしな。
「<蜃気楼>・・保険掛け終了、<雑音>来い!!」
・・・・3分後
「グギギ・・・・ぐっ<上位使役>」
「キシェアァァァ!!!」
「んなろ!」
ググッッ!
「マズッ!?」
「シュルアアアアアアア!」
ブワアアアア!!!!!!!!
背中に張り付いた後、3回程使役を試みるも失敗、苛ついたのか
ワイバーンが丘を越え、今まさに急上昇している。
(し、死ぬ死ぬ、これはヤバイ!)
急上昇時の速度はともかく、上昇によって気温が一気に下がる。
空気が、呼吸が一気に浅くなって行く。
(ここから落下して30秒ちょい・・・無理、それより先に間違いなく死ぬ)
落下しただけでは死なない。だが、全く持って嫌な話だ。
ブラックアウトより目の前の阿呆蜥蜴の餌になる方が
心配になるなんてな。
「<上位使役>」
完全に足止め用に放つスキルだ。その効果は、一瞬肉体を硬直させる
だけだ。だが、一瞬の硬直によって翼の動きも停止した、それだけで
十分だった。
「弱点ってのはいつだって生物であれば変わらねえだろ<炎の槍>」
頭部、その中でも特にやわらかい部分である眼球に炎の槍を突き立てる。
「キュラアアアアア!!?」
思わぬ反撃、餌に目を潰された事で、竜はブチ切れた。
「落下速度は上るときよかでねえだろうが、致命傷だろ?
<見えぬ鎖><沈黙時間>・・・!?」
一瞬の隙だった、安心した訳では無い。それでも、一瞬だけ、後方の注意を
おろそかにした俺に待っていたのは、瞬く間に後頭部を打ちつけた尾が、
その軌道を変えて自分を突き刺そうと動く、その一部始終だけだった。
・・・・SideNPC
穏やかな日差しの中、畑と牧場を持つ男は、事後とが終わったので、
少し休憩を取っていた。そんな午後のお昼兼休憩時、
「ムグ、ゴクゴク・・・・客でも来ないかな~」
暇では無いが単調な日々の中で、客人を迎えるのは密かな楽しみだ。
時には子供が、時には家族で、見送る時に浮かべる表情が大好きなのだ。
「雨季に入りそうなこんな時期に来る人が居る訳も無い、か・・・ん?」
家からほど近い木陰に座る老人の目に、一つの影が映り込んできた。
「・・人ではない・・・・飛竜・・・まさかな」
高度数百mから高速落下する生物を見て、まずありえないとは
思いつつ、ポツリと言っていた。そして、予感はほぼ一瞬で確信を得る。
「危険な角度で向かってきてるな、さて、ロールは何処にしまっていたか」
しかしこの老人、かなり冷静であった。
・・・・・Side加害者兼被害者
「ほれ、治ったぞ」
「あ、ども」
いやー、死にかけた。バフ全掛けでも普通に即死コースだったわ。
100回やって1回生き残れるかどうか位の落下から助けてくれたのは、
目の前に居るおじさんだ。手順的には、風で方向制御→牧草が有る場所へ誘導
→ステータス鑑定用の水晶で見たら人間の反応が有ったので、片方に魔法を使用→
今に至る。って感じらしい。俺自身、最後に受けた攻撃で気絶していた。
鎖で自身も縛らなければ振り落とされ、そのまま食い殺されていただろう。
「空からの客人は初めてでな、飯でも食べてゆくか?」
「うーん、可能なら首都まで行ってすぐログアウトしたいんですが・・」
あ、一応、このゲームではログアウトの概念は伝わっている。
特に、急ぎたい人間は時間が無いタイプである事も。
「うぬ、そうか。では首都まで送ろう」
「ええ、よろしくお願いします」
こうして、軽い談笑をしつつ、ランニング位の速度で30分程進み、
首都である<トレード>へ到着し、ログアウトした。
・・・・・4日後
「あー、7月入ったら休みもらお・・・」
帰ってきて3秒でこの台詞である。仕事終わりで少々雨に濡れた衣類を洗わせ、
部屋着に着替える序でに風呂へ直行、出て一息つきながら、ソファーに座った。
「柑橘系の果実で割ったソーダを1杯」
トクトク・・・コト
「ふぅ、・・・さて、ジャスト7時か、時間はたっぷりある」
と言う事で、久々に手間がかかる料理を一品作り、先日残った挽肉を
ロールキャベツにして、ついでに野菜で駄目になりそうなのはサラダに、
なんか最近肉ばっかな気がするな・・・今度は魚系にしよう。
ま、まあ、そこは置いといて、食事を終え、ゲームへログインした。
・・・・
「うーん、どうすっかなぁ?」
この4日の内、2日間は知り合いに呼ばれてほぼ触れられず、1日は突如気分が
落ち込んで触れる気が起きなかった。実質1日でやったのは、適当に
モンスター狩り→ワイバーンの撃墜報酬を得た→農家の人に報酬の半分を
持って行く→軽く世間話をしてからちょっとだけ狩り。以上、なんか
やった事が少なすぎて笑える内容だ。で、今どこにいるかと言うと、
ギルドの中でギルドランク報酬を貰っていた。
全く通っていなかったので、一気に3つ特典を渡された。
その特典なんだが、1つ目、一定数討伐による自動報酬受け取り
の可能化及び、クエストの受付をギルドに行かなくても受注が
可能になる。これは、ギルドに一定期間行かないと受け取れるらしく、
スレッドにも上がっているらしい。見る事はあまりなさそうだが。
2つ目はクランのランク報酬だ。モンスター討伐によって
ランクを上げ、報酬を受け取る。単純ではあるが、毎月リセット
される為、奔走する連中が出そうだ。まあ、アホを燻り出すのには
ちょうど良いが。エリアを独占とか、話にならんしな。一定以上の
レベルになればやる奴絶対出て来るんだろうが・・・。それはともかく、
3つ目は道具を一時的に預かってくれるようになった事だ。分かり易く1
000×1000計100万までのアイテムを預かってくれる店がオープンし、
登録した袋から自分のスペースに道具が送れるシステムになっている。
ただ、戦闘中は送れない等、PK用には使えない。以上だ。
でもって現在、何をしようか悩み中・・・。
「どうせだし、ちょっとだけ街を見てみるか」
方針が決まれば、行動あるのみだ。と言う事で、街を
探索する事にした。なんか掘り出し物ないかなぁ・・・。
・・・・
「おいーっす」
「・・・・だれ?」
軽く見て回った結果、あまり見る物が無いのが分かった。と言うのも、
この国にあるのは、そのどれもが型落ち品、良く言えば平均、悪く言えば
粗悪ではないものの、メイガスやビガルと比べると見劣りするものばかり、
程度の品揃えだった。でもって、今いるのはスラム街、寄り付くものが
あまり居ないので、分かり易く辿り着き易い場所だ。まあ、面白そうな
事が有ったら良いなぁ・・・みたいなことを期待しつつ、来てみた。
「案内を頼めるか?」
「・・・死にたいの、自分?」
スラムと言っても、ここは俗に言うスラムよりは下町と言った方が良いか。
最低限の衣食住が整い、あまり小汚い服を着た人間が見える事が無い。
だが、ちょっとここで疑問を覚えた。なら何で近づかねえの?って事で、
調べるのが面倒になって現地の子供に案内させようと、交渉している訳だ。
「嫌なら構わない、別の人を探す」
素っ気無い態度が大事、利益が伴う事に人間は敏い。その利益がどの程度かを
確認する時点で、もうその人間は絡み取られている事が多い。通販みたいなもんだ。
「・・・まて、報酬は何で払う。それを聞いてきめる」
でもって、期待に満ちた目を一瞬だけ見せた少年?に、選択肢を
与えてみる。組するか奪うかの2択を、
「なんでもだ、T、少しなら貨幣、食料、水、他には・・・素材とかな」
「食料、水・・・・・かへいはいくらある?」
「・・・・(分かり易い、大丈夫な方か)」
取り敢えず、この場では金貨は言っちゃ駄目だ。状況にもよるんだが、
金貨は分かり易く高いのが分かる。なので、かなりの確率で提示した時点で
見限るだろう。金持ちの道楽家が不用意に入って来たのだと、事実、
普通にそのパターンだと漁られて終了だ。だが、ここでその事を確認する?
成程成程、何かは知らんが誰かorなにかを養ってるって所だな。多分、
「銀貨が数枚と大銅貨3枚に銅貨が10枚前後だな、なんだ、貨幣で良いのか?」
ちなみに、貨幣はあの時のクエスト報酬に含まれていた。付随品が
テキストに出ないのは結構不便だと思うんだがなあ。運営さんガンバ
[言うまでも無く作者の不備である。サーセン]
「・・・報酬は銀貨一枚「大銅貨1枚だ」・・大銅貨1枚と
銅貨10「7枚」・・・乗った」
ちなみに、大銅貨は銅貨50枚分だ。正直使わない筆頭貨幣だと思う。
高いのは銀貨普通に超えるし。
「じゃ、道案内が終わったら払う感じで、頼んだ」
大銅貨1枚と銅貨7枚、9千円前後でのツアーだが、かなり高めだと思う。
銅貨にはまだ下が有る、鉄貨と呼ばれる銅貨の更に10分の1位の価値しかない
貨幣だが、ここではそれが主要通貨だった。つまりはそういうことだ。
更に言えば、もう2つ下が有ると言うのも聞いた。宿屋のおばちゃんマジ有能。
「・・・・」
「?・・!・・・いや、まあ・・・半値払っておく、逃げるなよ」
訝しげに見て来る少年の意図は、恐らく払う気が無いのではないか、だ。
確かに、完全後払いで支払われない事が間々ある。なので、取り敢えずの
手付金だ。無論、逃げれば捕まえると言う意思表示である。まあ、要らない
保険だろうが。
「・・受けた、今までのルートは多分分かる。行ってないのは多分3か所、
ドブ穴、非情区、病人街、どれに行く?」
「ん?・・・・ああ、汚れの無さでか。非情区へ、ただ、離れるなよ。あと、
今回は普通に歩いて良い、人間なら問題無く殴殺出来る位には強いからな」
この国で唯一警告された場所、非情区、他はある程度人が入り
出て行くのに対して、その場所だけは誰も出てこないらしい。
「さて、鬼が出るか、それとも畜生か」
何か前回の所為でちょっと感覚が狂ってるし、激情に駆られる事は
ほぼほぼ無いだろう。教訓が生きるかは微妙なのが笑える。なんてことを
考えつつ、スラムの入り口から深部へと歩を進めた。
・・・・
「予想より酷かった」
目の前でまさに殺されようとしながら笑い続ける男、爆笑しながら
首を切断する女、分かり易く、非情区は相応しい名だと思った。
「スレイブより酷いな・・・」
表限定ならだが、実はスレイブと言う国はかなり奴隷に優しい国である。
契約のせいでと言うのが本音だろうが、古代エジプト時代の奴隷制度に近く、
劣悪な環境に行くのは殆どが重犯罪者なのだそうだ。聞いた話だと、が付くが。
「違う、重犯罪を犯した人はドブ穴に送られる。スレイブははけんもとで、
出られない人はここで使い潰される。病気になって死ぬまで」
でもって、ここがその重犯罪者が送られてくる劣悪な環境か・・・ガラの悪そうな
感じしかしないし、ドブ穴にはあまり行きたくないな。まさか・・・
「病人街は関係してるのか?」
今の感じで非情区も関係しているのが確定した気もするが、気にしない。
まだ確定していない病人街の話を出したのは、非情区に関して
切り出したくないのが本音だった。
「治らない病気になった人を送って、早く死ねるように痛みを和らげる
薬を打たれて、運が良いと衰弱死する。だから、病人街に行くと独特の
匂いが体に付く。死の臭いも」
つまり、あの親子は此処を一度以上みた事が有り、且つ間違いなく何か勘違い
していた。自分達が奴隷になると、この場所に行かされる。と、全く持って
酷い話だ。
「成程・・・流石にここは関係ないよな?」
これまで、3つの内2つがスレイブ関係なんだが、流石に最後位は・・・
「非情区は掃き溜め、時々どうやったのか出て来る奴隷が居る。そんな
凶悪な人達が寄り集まってできたのが非情区」
勘が当たる時とは、得てして嫌なものだ。特に、知り合いが関係している場合は、
だが、流石にあの状態だったスレイブがこんな事をやれるとは思わない。
嬉々としてやりそうなのはともかく、って事は、つまり・・・
「・・・なんか、腐ってそうな感じしかしないな」
政治的な意味で、
「?腐った臭いは何時もしてる」
「ああいや、そういう意味じゃない。でもって、他が下町なのか?」
「ううん、全然違う」
ありゃ?間違ってたか。
「あの場所は他の国に行く人達の溜まり場、住む必要がないから、
曲芸みたいな見世物をすると食べ物やお金を貰える。その分、
身なりを整えた人が多い。あの場所は安い食料も買えるのも大きい」
下町・・・スラムか、つまりスラムが有るのはもっと奥のドブ穴近辺か。
「なるほどなるほど、比較的金持ちは宿か冒険者を雇い、他はこの場所で
待つのか。死亡率・・・さっきの場所で殺される人はどれくらいの頻度で
居たか分かるか?」
待つって事は、それなりに大きな出費をしたって事だ。護衛を雇える人間なら
ある程度は問題ないだろうが、そうも行かない人間がどうなるか。聞きたいような
聞きたくないようなニュアンスで言ってみたが、少年は普通に、当然のように答えた。
「2日に1回、死ぬかは運しだい。大きく襲って大きく奪う、非情区の
人たちはみんなそう言う。けど、絶対に外には出ない」
ここで言う外は、表通りの事だ。なんだよ、そう言うシステムか。
(・・・まず、こっち側に来る人間を殺し、外から来た人に印象付ける。
か、商売人魂が迸ってますなあ・・・結局のところは体の良いヤクザだが)
搦め手で行けるかなぁ・・・ま、やるだけやってみるか。気に入らないのは
個人の自由だが、明らかなルール違反は見ててムカつくだけだ。どうやって潰すか?
・・・・リアル時間で3日後
「どうなっている?!」
失敗だ、貧民街に有力者は寄り付かせていない。手回しも完璧だった。
なのに、報告が全く来ない。何だと言うのだ!ふざけおって!
「また正義の味方気取りが暴れてるんじゃないっすか?」
応接室、少し広めでは有るがそう言って差し支えない程度の部屋の中で、
数人の護衛と思われる人間と細い体をした大仰な男、そして今話す傭兵らしき
微妙に拙い敬語を用いる青年の様な人間・・・いや、獣人しかいない。そして、
現在発言権を持つのは獣人の男だけだ。その獣人は、大仰な男へ可能性の一つを
連ねる。
「あり得ぬ!何度心を折ったと思っている。もう2度と、貧民街の連中
が協力しない事は無い。あの作戦に参加したお前であれば分かる事で
あろうが!!」
何の為に非人区を作ってやったと思っている。仕事も出来ん愚図共め!
「クハ、それなんですがね、貧民街の人間の数が減ってんですよね」
自嘲気味に告げる傭兵は、その表情を暗くさせている。だが、その言葉は
目の前の男にとって、そんな事と言って差し支えない程に重要なものだった。
「・・いや、あり得ん。道徳心なぞ、持ち合わせる・・・
そんな・・・まさか!?」
道徳心、正義、全て奪った物だ。外部からの干渉を受けてもソレが
揺らぐ事は無い。だが、たった1人、彼の国に居る女だけは、それを
可能とする可能性を持つ。だが。
「かの姫君の来訪は予想外だった筈でさあね?」
「そん、そんな事が!??・・・ッッ!?」
彼は動揺を抑えきれなかった。よろけた拍子に肘が本棚にぶつかってしまう程に、
だが、それも仕方が無い。あの似非平等主義者達にバレたとすれば、
国に贈られる多額の援助金が無くなってしまう。地獄の釜が目の前に在るのを
知ってしまった男は、頭をフル回転させてもなお、策を見つけ出せずにいた。
(いつだ・・・いつここまで悪化した!)
別に問題は無い。その一言で切り捨てられないのには、理由があった。
30余年間もの間続けられてきた所業が公になれば、失脚は必至、更に悪ければ
奴隷なんて事にもなりかねない。そんな情報を持つ人間がかなりの数残っている
状況は、男にとって都合が悪かった。特に今は、
「と、とにかく、お前の所から何人か送って様子を見るんだ!」
「あー・・・それがなんすけど、既に4人ほど送って帰って来てないんすよね」
「あ”あ”?・・・んん”、4人か・・・何故伝えなかった?」
思わず変な声が出た男だが、それも仕方が無い。自身が信じる傭兵団の
メンバーが、4人もの犠牲をだしながら自分に報告すらなかったのだから。
「いやまあ、死んでないんすよ。3人は意識が無いんで非情区で娼婦にでも
なってる可能性が高くて、1人はなんか変な感じなんすよね。まるで」
「死んだみたいに接続が切れてるのにちょくちょく定時報告が来る。かしらね?」
「!?」
女が立っていた。いつの間になぞどうでも良い。仕事もこなせない護衛に
憤りを感じる男だったが、女の表情によって、そんな感情は一瞬で吹き飛ぶ。
「・・・・なんだ、強い人も居んじゃないすか」
部屋の中で動揺しているのは1人だけ、突如現れた女に一瞬崩れた陣形を、
次の瞬間には元に戻した護衛達は女がどんな行動をしても確実に
殺せるように取り囲む。
「初めましてー、王族直属のメイド[デモリッション・シープ]所属のメイド、
クラリネさんの御登場よ、笑って素適に這いつくばりなさいな、傭兵さん?」
「殲滅狂・・・」
戦慄、もしもあの殲滅の闇羊だった場合、この場所は戦場になる。
護衛対象、周辺住民、恐らくはもう逃がしているだろうが、そんな事は関係ない。
一瞬で都市が崩れ去るイメージを幻視してしまう。その隙が命取りだった。
「ありゃりゃ、どうせだったら[マリオネット]さんが良かったんすけど、
よりによって無関係な人を巻き込むアンタみたいな人を送っちまうなんてね」
男は飄々としながらも、思考をフル稼働させている。どうすれば
最小限になるのか、どうすれば護衛対象を守れるか等々、だが、
1000通りを超えたあたりで予想がついてしまう。既に詰んでいると。
ならば話は早い。
「・・・やっぱ面倒だわ、アンタみたいなのと戦うの」
もし戦うなら仕方が無い。ただ、1回分位は受けてやろうじゃないすか。男の持つ
矜持だろうか、戦闘開始の合図を自分から切ろうとはしない。だからこそ、彼女が
呼ばれた。だからこそ、彼が呼ばれた。
「なんだ、一応やる気有ったんすね。こんなふざけた人持ってきといて」
一瞬の目配せ、困惑した部下たちの顔を見て分かった。件の人が来ていると。
ピシィ・・・
一瞬でその部屋の支配権が移り変わる。たった一人の人間が、糸によって全てを
支配していた。その男は[キングス・ガード]に所属し、姿無き全滅者と称される、
曰く、性別すら分からない未知の生物、曰く、血の通わない化物。曰く、英雄。
その全ての名を持ち、界隈に於いて人形師と呼ばれる男は、その瞬間、
戦いを終わらせた。
「戦力の無力化を確認、これより帰投する」
機械的な抑揚のない声を響かせた者は消え去り、その場にはどうにか
抜け出そうともがく男達が、破壊できないと悟って次々と力なく力を抜いた。
「じゃあ、後の処理は[糸]の連中にやらせとくわ」
「・・・・チッ(少し様子見が過ぎたっすね。ちょっとこの拘束は解き難い)」
誰より先に攻撃されたぎこちない敬語を話していた男は、自分が思っていたより
マヌケだった事に辟易としつつも、次の手を打つほど現状が甘くない事に至った。
「やめときなさい、その線を切るには派手に動かないと。分かるわよね?」
「はぁ・・・すんません旦那、1人しか逃がせませんで」
詰み、と言うのは、自分達が逃げ切れないと言う意味で使用した言葉に
過ぎなかった。100以上の可能性を模索し、対策し、模倣し、見破り、看破し、
それでも確実に逃がす方法を何時でも取れるようにする。彼等が重宝される
理由の一つとして、必ず、彼等が死んだとしても逃げ切れる絶対的な安心感
からと言う物がある程に。
「チイッ!?」
ザシュッ!
「仕事ご苦労、自由契約に戻って良いぞ。必要分は回収したと断じよう」
何の魔法か、何処の魔法か、全く不明の魔法陣が生み出された。
そして、その人間を殺害しようと動く数十の刃は、その場で停止した。
「誰だ!」
雰囲気が一瞬で変化し、今迄の短気以外の印象を持てない男から
力を持つ貴族の持つ力強い声へ。
「今回はここまでとしよう、今度はどの国に行くか・・・」
敵意を向けた者がすべからくと言わんばかりに急減速する中、その男の姿は
消え去り、本気の攻撃が止まらないままなのに憤りながら、全力で抑え込む
何とも滑稽な状況が繰り広げられ、10秒後に糸の人間が入って来たと同時に
ゆっくりになった時間が普通に戻るなどのハプニングが有りつつ、
何の成果も得られないまま、終了した。
・・・・Sideレン
「なーんか、思ったより大事?になったな」
目の前に広がる光景を一言で表すのであれば、阿鼻叫喚が当て嵌まるだろう。
焼かれる家々、命乞いする女子供を、守ろうと両手を広げる男を、赤子を殺す
胸糞悪い光景だけが、広がり続けていた。
「貴方が件の報告者様で宜しいでしょうか?」
「ああ、うん、合ってるよ」
さっきから後ろで威圧感をだしっぱなしだった女なんだが、急に話しかけられて
少しどもってしまった。なんか戦おう的な空気だしてたし、俺は悪くないと思う。
「デモリッション・シープ所属、呼称名[ダート]です。
今回の報告に感謝の旨を伝えるよう託りました」
「お疲れ様、帰って良いですよ。後は蛇足だけみたいなんで、じゃ、行きますね」
何だろう、リアルで3日かけたのに大して盛り上がらなかったせいだろうか、
とっとと忘れようと建物から飛び降りようと・・。
「あの、ごめんなさい。ちょっと待って・・・!?」
「今度そっちにお邪魔するから、その時に話してくれれば良い〈反動〉」
飛び降りた衝撃は崖の中間にある取っ掛りにぶつかった瞬間、衝撃は肉体では無く、
真横に向けられる。飛翔するように飛び去る俺を彼女が追う事はなく、そのまま
全速で次のエリアボスの待つ北へと向かった。
・・・・更に1日後
あれから、エリアを一つ開いた。デカいだけの的に遠距離で攻撃を当てる作業に
近く、近接ならともかく、射線の直線上にしか攻撃してこないエリアボスには
ちょっと笑えた。次のエリアへ到着した時、病人街の医療事情がかなり改善された
ことをきいた。重犯罪者なら救う必要も無いと思うんだがなぁ。程度にしか
感じなかったが、この先は約50㎞以上モンスターの群生地になっている事も
聞けたので、まあ収穫は有った。
(長居し過ぎたな・・・あん?運営からなんか来てる。なんだろ)
爆音が煩くて来てたのに気付かなかったが、運営からダンジョンイベント開催の
DMが送られてきた。何でダイレクト?と思ったら公式バナーにも乗ってた。
(なになに、夏も近く、例年通り空梅雨となりましたことに慣れ始めた頃と
お察しいたします。この度、メイガスの南5㎞地点でダンジョンを設置し、
難易度を決定する事で報酬が変動するイベントを開催する事になりました。
つきましては、開催期間と開催時期をDMに送り、公式で開催の旨を張ると
言う手段を取らせていただきます事、ご了承願い致します。って、別に
ダイレクトメールは要らないと思うんだが?・・・ああ、この所為か)
分かり易く言えば、ギルドにクランを設置していて、貢献度が一定以上で
有る者達には一定の情報が事前に贈られる。いや、正確には貢献度を
一定数消費する事でポイントとして溜め、その時々に違うダンジョンの構造を
ポイントを使う事で把握することが出来るようになると言う情報だな。
ワイバーンと各種モンスター(スレイブ時がほとんど)の討伐功績によってクラン
の立ち上げはしていないが、一定以上貢献度を持つ人であれば全員に
送られる様で、その旨も書かれていた。
「ダンジョンか、面白いと良いなぁ・・・ま、取り敢えず、ちょっと
急ぎ過ぎた感が強いし、観光ついでに新しい食文化でも探そう。
ムカムカしてしょうがない」
なんと言うか、自分で思っている程メンタルが強靭でない俺は、食う
食われる以外での人間同士の争いを見続けていると、自分でも気づけ
ない内にストレスが溜まり、モヤモヤ感が現実で付いて回った。気持ち
悪いとも言えるだろう。スレイブの時には、どちらかと言うと態と
残しておいた裏ルールを利用したあの連中は、自分達の恩を蔑にした
あの連中は、鬼畜生だ。畜生を殺す事に何かを感じられる程、正義の信者にも
善人にもなったつもりはない。・・・色々と人間の意見じゃ無くなってる
気がするが。今回の場合、イレギュラーはそこそこあったが、人間狩りを無為に
行っているようにしか見えなかった。それこそ、自分達がどれだけ圧倒的かを
見せつける様に・・・気に入らない。そんな事を腹の底に抱えていた俺だが、
走りながら考えるのも限界になってきたので、軽く頭を振り、足に力を込め、
思いを振り切る様に全力で走り出した。
(考えるだけ損だ損)
こうして、週に1度起きる程度の騒動は終わりを迎え、レベル上げどころか、
エリアすらほぼ進まないまま、イベント初日を迎えた。
うぬ、ちょいちょい補足、実質的には告げ口の一言で済むんですけど、
道のりが中々面白い事になってたのでちょっと書こうかと思います。
まず、スレイブで現状を把握しているかを裏口から侵入して聞きました。
その後、裏口を塞いだのは言うまでも無いか。逃げ道別個で普通にあるのに
王族の部屋に外部から普通に入れるとかね・・・。でもって、ここでかなり
面倒臭い問題が発生しました。スレイブと超仲が悪い聖国〈ユピテル〉
の関係者に許可を得なければ、国同士での交渉すら困難と言うものでして、
この結果ユピテルを目指す事になります。メイガスから直接大森林に入る
ルートを突っ切る事になった。んですけど、砂漠みたいに円を
描くようにぐるぐると回ってしまう現象が起きたからです。
その度に印や樹木を倒して進もうとするとか、かなりの手段を
講じました。結果、2日目に突入。ここで森の仕組みを理解する事に
なりました。と言うか、樹木や植物が普通に生きていると分かれば、
ある程度簡単にクリアできる程度のものです。三半規管や方向を示す
全ての要素を森が上書きすると言うのは中々無いタイプのギミックでしたが。
でもって、ここで面白い状況に遭遇しました。言ってしまうと、3人の馬鹿です。
護衛も付けずに良い身なりでモンスターには勝てるからと自信満々で来た類の
自信過剰タイプの集団だと思っといてください。まあ、死んでも目覚めが
悪いと言う事で、適当に助けました。で、ここからが面白い所で、
聖国の王族に位置し、且つ王位継承権をかなり下位では有るものの、
持っていた所です。あきれ果てたのは言うまでも無いんですけど、
そのお陰で仲の良い兄弟であるかの国の姫君と会う事に成功しました。
途中、かなり面倒臭い残りの2人の相手を延々させられたり、
聖国の〈姫様応援会〉の面々から喧嘩を売られ、何度か倒してたら
ウザいおっさんに仕事を頼まれる等、結構散々な目にあってます。
なんだろう、書いたら絶対面白そうなのに書くと3話以上書きそうで嫌な俺が
同居している・・・まあ、書かないんでここにあらすじとして置いてるんですけどね。
無駄な時間を浪費させられ、結果があんなのだったんで、結構イラッと
来てたのは確かです[ちなみに、非情区の人間は、全員殺害されました。まるで
汚い物を捨てる様に、何の躊躇も無く。スレイブと仲が悪い理由も分かるって
もんでしょう?あ、現場の方々はすごく真面目で、良い子たちです。そこに
間違いはありませんです]
なんだかんだ一番下の娘っ子とも合わかったからなぁ(彼女の場合、簡単に
終わらせてしまうのはもったいないという、別種の狂気なんですよね・・・)




