ミーアの強さ
・・・
「うん、結構上がったね」
「ああ」
戦闘によるレベル上げとスキル経験値稼ぎを目的とした狩り、
相応に戦い続けているが、そろそろ上がりが悪くなってきた。
狩場変えるかー。
「広大とは言ってモ、もっと奥みたいだネ。β版の村」
「虫系のモンスターが出て来るって話だったけど、今のところ
獣系ばかりだし、話よりちょっと北側に向ってるからね。行きたいの、虫天国?」
「クモとか良いネ!」
「昆虫苦手だからあんま行きたくないですます」
かれこれゲーム時間で2時間程西に向かい続けているが、あまりにも
何もない。
「つまりは、マキ達の居た場所がそんだけ遠いって話だな」
1月無駄にしたと言っていたが、逆に言えばそれだけレベルを上げても
1月は掛かる程の距離が有る訳だ。遠くて当然とも言えるだろう。
「うーん、此処から北に行くとまた別の国が有るみたいだけどどうする?」
「リューネスの協定都市ですよね。今レべル18になったので、行ってみますか?」
ピクッ
「良いネー、今度は山菜と獣肉を堪能しまショ」
お、アンネが反応した。レベルギリギリだが、まあどうにかなるかね。
「って事でレッツゴー」
こうして推奨攻略レベル17〈自治国クェリア〉のエリアボス討伐へと向かった。
なお、リューネスと大森林に挟まれている立地上、エリアボス以外
何もないちょっと不遇な場所でもあるとかなんとか。
・・・・
「レッグ・リザードだったか?見た目がキモいが」
完全に下半身が上半身の2、3倍はあるリザードマン、別名沼地のはぐれ者
レッグ・リザードが平野部に陣取っていた。
「うん、でも見た目通りの特徴位しか特筆してないみたいだし、
エリアボス相手の戦闘ならこれ位シンプルな方が良くない?」
「完全に同意、まぢ沼とか山むリ」
うーむ・・・どう見ても鈍重そうな見た目なんだが、
ネーミングでキックが危険と分かる何とも言えないこの感じ。
「ま、まあ、戦ってみよう!」
どの程度の強さなのかの確認も兼ねて、取り敢えず戦闘を始めた。
・・・・
「ククッ!」
「ググルァァァ!」
「おうおう、こっちからも攻撃できねえとか・・・タンクの意味が無いな」
結論から言おう、全然確認できない。ヘイト管理がクジの攻撃で出来ない上に、
補助呪文での底上げは出来るが、それ以外の攻撃魔法の使用も至近距離に
仲間がいる時点で難しいと来た。アンネなんかはチクチク攻撃を繰り返すが
クジとリザードの所為で全く引きつけが出来ていない。結論として言える事は
1つ、クジ邪魔!!
「・・・そろそろ危ないか、ミツル君弓頼んだ」
「はい、分かりました<1撃2射><肉体強化>」
「ギィィィィィィ!?」
「な!?・・・っと、だったよねー」
ミツル君の放った弓は、ぶれる事無くリザードの首元に命中し
飛び散る鮮血がクジを冷静にさせる。バトルマニアめ。
「とっとと下がれ、3割切ってる」
紙一重で避けるクジと範囲攻撃を主とするコイツとではかなり
相性が悪い。ソロなら気付かず死んでたかもな。
「あ、本当だごめん!」
眼に見えて削れてはいるが、にしたって突っ走り過ぎてさっきまで多対一の
利点が一切活かせていなかった。ちーと見学しとけ。
「やーっと俺らの仕事だ<解放・温厚、ヴィル、黒>ミーアは見学だ。良く見てな」
「グゥ・・・」
「さ、パーティープレイを始めよう」
・・・・
「アンネ、今度はちゃんとタンクだ。回復すっから突っ込め」
「はいはイ、やりますヨー」
単純な話、クジが削られる理由は単純明快、アタッカーが突っ込めば
タンクが居ない分ダメージを受ける。そしてアタッカーは
攻撃力に特化している為、削られる速度も速いと言うだけだ。なので、
「一応見るだけ見てから攻撃しろよ<速度上昇>」
「良いネ、役に立ってる感じがちゃんとするって言うのハ♪」
「ガァ!!」
ヴィルが削り、アンネが守る。これだけでダメージソースと
パターンが生まれる。生物であろうとタンク職を無視するのは難しく
ミツル君の援護で動きが鈍り、攻撃自体はまあまあ入る。が───
「削れねぇ・・」
効いてる気がしない。硬さのレベルが違う。首元はともかく、他が
ガッチリしすぎだ。クジの攻撃は武器の性能で通っていたが、
こっちはそうも行かない。ノワール攻撃役に回そうかな。
「上半身駄目です!」
「下半身もかったいネー、首か傷口位かナ」
硬い生物も通常は関節部が弱いのだが、関節まで鱗で覆われている。
さて、今のところ炎と風も効果が薄い。さてと──
「ミツル君、酸の矢頼める?」
「はい<アッシド・アロー>」
バシッ!!
「ふぅん、じゃあ当たりだ。もう一回、次は連射で」
攻撃を受けながら大雑把に地面を砕きながら戦うレッグ・リザードの
緩慢さが嘘のような反射速度により、放たれた一矢が粉々に砕ける。初めて
防御らしい防御してくれたなぁこのやろー。
「ノワール合わせろ、ヴィル、崩せ〈岩柱〉〈追い風〉
〈炎の針〉」
タタン
「アンネ〈脚力強化〉」
「はいはーイ〈バンプ〉!!」
足元に出現した複数の岩柱を飛び交うヴィルを捉えようと薙いだ足の
支点、軸足に攻撃を受けながら突っ込み、ノワールとアンネが弾かれた
衝撃により、よろけた体を打ち終えた足を殴って更に崩す──
「〈水の針〉名付けて、複合魔法〈水蒸気〉ってな」
ジュッ・・!
数本づつ放たれた針を防ごうと反射的に上げた腕に
合わせて送られた水が蒸発して視界を瞬きいくつかの間塞ぐ。
「〈曲射〉〈豪弓〉!!」
ギチッッ・・!ピシュン!!!
ヒュン!
「当てずっぽうで避けるかよ、流石ボス、でもな?」
ドス・・ドドドスッ・・!!
「動かすための動きはこっちのが上手だったみたいだ。当たり、
腐食矢と腐食毒持ってる奴エンチャント、クジィ!いい加減
休んだろ、さっさと前出ろ!」
「おっけー、・・合わせるね」
「はい!〈デュアル・ストック〉〈アッシド・アロー〉〈クイック〉!」
「グラアアア!!」
移動しながらレッグ・リザードを打ち据えるミツル君に合わせて
クジとアンネがスイッチする。数回の打ち合い後、鱗と皮膚の表面がグズグズに
腐食しながら苦悶の声を上げる蜥蜴が怯む様に体を丸めて地に片手を着く。
クイックって撃ちながら回避できるスキルなのか、便利だなー。
「攻め時<劣化筋力上昇>」
「グラアアアアアアアア!!!」
「グオオオオオオオオオオ!!<ネイル・スラッシュ>」
「貫け、クジ」
「だよねー〈突き〉」
グチッッ!!!
低くなった眼窩を貫き、引いた槍が胸を貫く。吹き出す脳漿を
浴びながら鱗を剥ぐ様に繰り出される攻撃が耳を打つ。
「脳天抜かれても動くもんでm───」
ドンッ!
瞬間、はじけ飛ぶ肉が破裂した。
「〈ステップ〉・・マジ──!!?」
ガン!!
「ッヴィル!」
筋肉を膨張させながら突き進む巨体の速度は先の比にならず、
間を置く事なくステップの移動先に到達した巨体の蹴りが
レンを庇ったヴィルに炸裂する。
「マズッッ!?」
「<シールド・プレス>」
「<エア・ショット>」
弾いたヴィルへの追い打ちを防ごうと放たれた攻撃により
トカゲの動きを抑制───出来ない。
「<メタル・ラッシュ>」
槍ごと吹き飛ばされたクジが戻る数秒、その間にヴィルのHPが蒸発する。
「悪い、油断した<相棒せって>おい!?」
「グルアアアアアアアアア!!!!<チャージ・カット>」
ピッッッ・・・
ただの偶然、一発受けたらお終いのレベル差、一瞬の逡巡を置いて、
ソレの腐食部にミーアの一撃が抵抗なく入って行く。
ザシュッ!!
「いぃ!?」
クジの攻撃を防ぎ、酸により腐食し、それでもなおヴィルの体を
繋ぎとめた腕が皮膚一枚で垂れ下がる。
「今!!!!」
「〈戻れヴィル、ミーア〉!」
再び構える蜥蜴の足をノワールが払い、崩した足場を
クジが叩く。死力を賭し、隠し玉を使い果たした蜥蜴は、
一切の抵抗すら許されず地に伏した。
・・・・
『レベル上昇を確認、一部スキルを開放しました。ミーアのレベルが
上がりましたLV.1→3』
戦闘終了、くーそ辛い。あとローテで作戦立てるの止めよ。
後半グダグダ過ぎて回復アイテム使い切っちった。
「MPポーションが殆ど消えた・・・」
30個近く有ったMP回復薬が生贄になったが、まあ一応
勝ったので問題ないな。もう一度やるなら逃げ出すが。出費多くて笑えん。
「勝てたー!」
支援魔法の使い過ぎで軽くMPが半分を切っている、後は無視して
向こうに行くのがベストだろう。幸い、エリアボス討伐ボーナスで
運営から報酬も出たしアイテムを買うのには困らない。
「うーん・・・・・」
「どうした?」
「いやね?ミーアちゃんが出したスキルが気になって」
「ああ、黒塗りになってたスキルの事か?」
「へえ、そんな風になってたんだ」
ミーアのスキルは、本来のベアーから見ても少なく、戦闘に使える物は
体当り程度の弱スキルで、巨体を生かすものはあまり多く無かった。
その理由の大半が黒塗りだ。
「スキルの半分が黒塗りで染められてるミーアのステータスを見て
スキル重視の戦い方を出来ない分、経験則を養う事でそれが強みに
なるんじゃないかと思って見せてたが・・・コレは予想外だったな」
腐食による皮膚の軟化を含めてもレベル差ありきであの威力、代わりに
ミーアも瀕死だが、使い方次第で切り札にも出来るだろう。まだまだ
先の話にはなりそうだが。
「自己犠牲系のスキルとかかな?いや・・・」
「まっ」
「ぐああ・・がぁ?」
「ぐが、わふん・・・わん!」
軽傷のヴィルを瀕死のミーアが気遣ってヴィルが困惑している。
一旦休んで回復終わってから移動だなー。
「ヴィルがオドオドしてらぁ。はっはっは!」
「たのしそうだネー」
色々あって数十分後、リューネスの近郊、酪農自治国クェリアへと
足を踏み入れた。
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