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13.強者と弱者

Side???


「・・あれか、対象発見、連中に流せ」

《はいー、・・別に狩っても良いんだけど、負けるのは無しでね》

「分かってる、公平(フェア)な交渉だ、間違っても特に問題ない」

《どうだかー、PK(るーるいはん)に公平とか拘るの良くないと思うよ?》


 男は平野を駆ける一つのグループを見つめ、呟く。


「どうなるにせよ連中次第だろ」


 ・・・Sideミーナ一行



「そろそろかな」

「結構遠いもんですねー」


 かれこれ40分、少し大きな丘を越え、景色が木々もまばらな平原に

 変わって来た頃、ヴィルが反応する。


 スンスン


「グルル・・」

「とうちゃーく!」

「だろうな」


 ヴィルが警戒の声を出した瞬間、草原がざわめいた。

 一薙の風が肌を撫で、同時に悪臭が鼻を突く。霞む景色の向こう側、

 かすかに見える土気色の肌、大きな物を背負った巨躯、

 近付く度に少しづつ強くなる威圧感と鮮明になるほどに醜悪な面相、

 次の国、水の国リューネスへの関門、エリアボス〈グリーブ〉は

 獲物を狩る為二足の歩行を四足に変える。


「今回はおおきめかな?」


 グオオオオオオオオオオオオオ!!!!


「これは・・・」

「!?」


 常時発動(パッシブ)スキル・威圧:同格以下の相手に対して5%の

 ステータス低下を引き起こす。文字で見るのと体験するのは全く別物であり、

 対面するだけで恐怖に体が硬直し、ステータス以上の状態異常を

 認識させられてしまう。

 

「ちょっとようすを見るから、まってて」

「いや、こっち───」


 ヒュッ・・ドゴオォン!!!


 叩き付けられた前足の衝撃に砂煙が立ち上がり、ミーナ達の姿が

 掻き消える。次の瞬間、拳の打撃音が周囲に響く。


「あぶっっ──!」

「シィッ!!」


 グガアアアアアア!?


 拳を戻すのと同時、立ち上がったグリーブの側面に入り込んだ

 少女へグリーブの肘が飛ぶ。


 ヒュン!!


「・・避けた!?」


 砂煙を打ち払う様に、グリーブの腕に鈍い打撃音が数回、

 横薙ぎの一撃が少女の頭一つ上をすり抜ける。


「ふぅ、ゆっだんっっし、ちゃった。でも、」


 ギギアアアアアアア!!


 薙いだ腕の衝撃に吹き飛ばされたミーナの肢体は宙を回りながら

 接地面から跳躍し下がり続けることで衝撃を緩和する。

 それに合わせるように、グリーブが追撃に走る。


「シッ!」


 シュ・・


 放たれた拳の内側に入り、数舜遅れて到達するナイフの一撃を

 入った懐から拳を打ち逸らす。たったそれだけの動作が

 速過ぎて認識しきれない。


 グ、ガアアアア!!


「甘いよ!!」


 ズン!


 ガアッッ!?


「まだおわってない」


 ドドドドドドス!!


 逸らされた腕をそのまま捕まえる為に絡めようとしたグリーブの頭部を

 ミ-ナの蹴りが捉える。予想外の攻撃に怪物は止───


 グルルア!!!


 まる訳が無い。


「ッ!」


 脳を揺らされながら、掴もうとしていた腕振り抜き、宙に放られたナイフが

 もう片方の手に渡り、振り抜かれた凶器がミーナの頬を掠める。


「・・良いね、楽しい!!」


 ゾクッ!!


 食事では無い戦いへの喜色、初めて知る恐怖だった。しかし、

 それで止まる程怪物は臆病でもかった。


 ガアアアアアア!!!


 ・・・・



「つよ・・ばっかつよ・・・」

「〈戻れヴィル〉〈ノワール〉見物しな、役立つだろ」

「が」


 レベル的には俺たちの少し上程度(高くとも16前後)、クリーブは12なので、

 圧倒出来るのは不思議でもない。が、今回の戦いはレベル差による

 ごり押しではない。純粋な技術による蹂躙である。


「凄いね、命の賭け方に躊躇が無い。真似事すら難しいな・・」


 称賛の声が漏れるクジを後目に、数名は、若干10歳の女の子を

 こんな風にした少女の師がどんな連中なのだろうかと思い、うすら寒い感覚を

 背筋に抱いていた。英才教育極まり過ぎだろ。


「フッ!」


 一部の隙すら見せないミーナと戦い続け、プライドを粉々にされた

 グリーブは、観念した様に背中に背負った武器(棍棒)を取り出した。

 此処からは攻撃にリーチが加わり、パターンが変わる。現在

 攻略中のプレイヤー達を苦しめている戦鬼モードである。


 ガアアア〈タップ〉、〈クラッシュ〉


「エヘッ!」


 ガッシャアアア!!!


「嘘だろ!?」


 棍棒と見せかけての拳、と見せかけての棍棒、シンプルだが

 引っ掛かる初見殺しの筈、実際、ミーナは受け流す事も出来ず

 ただ攻撃を受けただけの様に見えた。その光景を見るまでは──


 グオアアアアアア!?


「ふう、うまくいったー♪」

「なんちゅう離れ業ヲ、すごいねー最近の子ハ」

「昔の漫画で見たやつ!」

「バケモンだバケモン」


 衝撃はグリーブの腕を完全に破壊し、技を放った側が苦悶の表情で悶える。


「一歩間違えれば死ぬってのに、事も無げだなぁおい、どれだけ──」


 接触の瞬間、振り下ろす攻撃を利用して飛び上がりながら衝撃を受け流し、

 地面と接触する瞬間、残った力に加えて、頭上へ吹き飛んだ

 ミーナの一撃がグリーブの片腕を完全に破壊した。


「まだだよね、お父さんが言ってた。一つだけきをつけるひつようの

 ある技があるって、出して?」

「・・ググァ(・・良い判断です)」


 グルァァァッァ!!


「またただの突進?こりな・・・・そっか、だからきをつけるんだ」


 もう後が無い、そう感じたグリーブと、ミーナから漏れ出した一瞬の

 殺気、二つが混ざり合う事によって、期せずしてグリーブはミーナの

 挑発に乗る形で奥の手を使用した。


 〈アース・ブラスト〉


 爪を地面に立て、直進しながら引っ搔いた土くれが持ち上がり、複数の

 塊を形成する。正面からでは見えないソレを前に、うんうんと数度頷き、

 笑顔で少女は構えを解いた。


「きいてなかったらあぶなかった〈マイン:マグネット〉」


 グア!?ギイイイイッッッッ!!!


 マイン:マグネット 効果:踏んだ対象を拘束する。使った場所が

 ハイライトされ見えやすいので、猪突猛進するタイプ以外だと

 まず当たらない。 効果時間:3秒


「容赦ねえ・・」


 うんうんと頷きながらスクロールを広げ、発動した魔法の

 設置場所は、ミーナの意思を通さず、グリーブの正面、しかも

 壊れた腕により死角となる場所に設置された。


「グアグ・・(スクロール一つで完封した・・)」


 突き刺さる岩片、倒れ込む巨体、その姿を前に、

 少女は首を傾げ、問いかける。


「もうおわり?」


 グッギギギギガグ・・・・・


「・・グ(素晴らしい)」

「良いね、じゃあほんきだすよ〈ステップ〉」


 スッ


 苛烈な攻撃を受け続け、全てを出し切ってなお、少女の

 顔色を変える事すら出来ない。その中で、それは確かな意思を持ち、

 壊れた腕を振る──


「〈やまびこ突き〉」


 ズガガガガガ!!!


「攻撃的なスキル使うとこうなるのか・・・」


 肉片へと転じたそのモンスターの肢体を前に、少女は満足げに

 鼻を鳴らした。


「俺ら何もしてねぇ!!?」


 ・・・ややあって



《エリア解放を確認、リューネスへ初期状態での転送が可能に

 なりました。限定条件解放:称号・〈頼り切りの者〉を獲得しました。

 討伐報酬の分配・・・参加者不明の為、報酬は未分配となります》


 戦闘終了の合図として流れたメッセージに、何もやってないにしても

 称号酷いなと思う一行だったが、全くその通りなので何も言えない事に

 ちょっとしょんぼりしていた。すると──


「ふぅ、今回はそこそこつよかったね。じゃあ、かえるねばいばーい!」


 言うが先か、声のする方を見た時にはすでにシルエットしか見えない。


「ばいばーい・・・・」

「またねー!・・どうだったよ?」

「ががうが(良いものが見れました。感謝します)」

「それなら何より」


 ま、実入りは有ったと考えるか。さて、うん、ここまでの準備よ・・・。


「あー、結局相棒(バディー)設定あの時のゴブリンにしたんですか。勿体ないーー」

「俺より強いから当たり前、あ、そうだクジー!反射神経

 勝負しようぜコイツと!!」

「良いけど、僕強いよ?」


 はてさて、それはどうかなと。


「反射神経ならワタシにも一枚噛ませてもらおうかナ!!」

「勝った奴には指定したアイテムか、持ってなかったら

 リューネスで発生する食費消費アイテムその他雑費を全額補填、

 敗者が負担でどうだ?」

「よっぽどの自信だねぇ、・・・良いよ。負ける気無いし」


 賞品有った方がやる気出るよなー、ま、クジなら武器の購入なんかは

 絶対ないし、アンネはそも新調したばっかりと言うとってもお得な

 料金プランなんだけどな。例外は指定アイテム位か。


「やるぞー」


 スッ・・


「その話ぃ、俺にも一枚噛ませてもらって良いか?」


 ゾクッッ!!


「なんだい、かたまっちまってよぉ」

「ガ!!」


 パシィッ


 急な来訪者に反応したノワールが、その場から動く事すら出来ず

 相手に無力化された。少なくとも格上、勝てない可能性が高いか。


「あぁ、こっちのがお望みだったのかい。そいつぁ悪かった。

 俺が間違ってたよ謝る。ごめんな?」

「クハッ!!」


 ゴキャッッ!!


《個体名:ノワールの死亡を確認しました》

「なんっ・・だコイツ!?」


 無理に動こうとしたノワールの首を躊躇なくへし折り、

 男は薄ら笑いを浮かべ、両手を広げる。


「手を出さないで下さい!!」

「あー・・鍵っ子(シャーロット)んとこのガキ大将閣下じゃねーの。

 お久、鍵っ子は元気か?」

「貴方に言われたくはありませんね、本当に・・ミツル君!!?」


 マキリスからあふれる怒気に少し困り顔の男に、ミツルが割って入る。


「お名前を聞いても良い・・ですか?」

「構わねぇよ、ギルド〈簒奪者(バンデッド)の宴会(ハンテッド)〉ギルマスって事になってる。

 好きに呼べ、名前は一応ローグだが、まともに呼ばれた試しはねぇなぁ」

「ふぅーーーーローグ(悪党)ねぇ・・・、で、賭けに参加したいってのは?」


 ミツル君のおかげでかなり落ち着けた。お礼は今度するとして、

 それはそれ、相手の目的は何だ?


「まんまだ、手に入れてーもんがある。奪う為に何度か殺しに

 行ってるんだが、旗色が悪くてね。こっちも指定されればアイテムの

 準備は有る」


 普通に言うよね殺しに来てるの。クジとマキがメインみたいだが。


「ギャンブル好きなのかナ?」

公平(フェア)なら50%で手に入る。担保があるならやる価値は十分だろ?」

「ナルホドネー、どうするノ?」


 指定アイテムの簒奪不能システムを賭けを使って自分から

 渡させるつもりか、なるほどなー。・・・───


「いや絶対やらないし参加もさせないが?」


 舐めてんだろコイツ


「そう、かぁ、先に襲われたのは俺だったと思うんだがなぁ」

「一撃で殺せる位戦力差のある相手からの攻撃一発程度で、意気揚々と

 戦い始めるアンタの浅慮が招いた結果だろうが」

「それもそうかぁ、仕方ない。見たいもの(・・・・・)は見れた。じゃあ───」


 ドクン!


()る?」


 ズサァ!


「お望みならやってやろーじゃねーですか!!」

「お前は少し落ち着け、・・・不毛だし無意味な戦いになると思うが、

 それでも良いなら、まあ、付き合ってやるよ」

「・・なるほど、なら───」


 ・・・・・Sideミーナ



「あーあ、放っておいて良かったのかい?」


 向かった先は森林の奥、視線に気づいた少女が向かった先には、

 獣の血に濡れた老人が立っていた。


「あなたの方がゆーせん」

「そうかい、ならそう言う事にしよう。用は?」


 ケタケタと手元の鈴を弄び、老人は問う。相応の落胆を滲ませながら。


「倒す」

「遊ぶの間違いだろう、君じゃあ勝てないよ。〈獣召喚(サモン・ビースト)Ⅲ〉」


 10を超える大型の獣、唸る怪物達の力はグリーブとは比較にならず、

 相対する少女をニヤニヤと見つめる老人の嘲笑が耳を劈く。


「もし、1対1なら勝てると思っていたら謝罪しないとだね。さあ、どうする?」

「〈招集(サモン)〉」


 迷い無く、よどみなく、紡がれた言葉に応えるように、その老婆は

 悠然と戦場へ降り立った。


わえ(・・)に御用かね、みぃ」

「みんなの敵!」

「っ───、なるほど、賢い。これはこれはご高齢、既に引退したものかと

 心配していましたよ」


 襲うと言う選択肢すら、現れた時点で無かった。その老婆が

 現れる事自体が、既に想定外も想定外。

 たじろぎ、動揺を隠しきれずに後ずさる老人に、老婆は笑う。


「じいじがばあやに心配とは、世も末かねえ。それに──」


 ヒュン


「ヒッ!?」

「形ばかりの心配なぞ、気遣われる甲斐もない」


 斬


「はゃ・・」

「・・今回も土塊かね、戦い甲斐も無いとは恐れ入る。・・ありがとうねぇ、

 みぃ、頼ってくれてわえは嬉しいよぉ~」


 なでなで


(・・・引退老人が出て来たか)


 ()で見ただけだろうに、良くもまあ見つけたものだと老婆の手で

 髪をくしゃくしゃにされ喜ぶ少女を見て、老人は顔をしかめる。


「えへへ~」


 少女の笑顔を、老婆の微笑みを、知りながら(・・・・・)救えない男の苦悩を、

 その老人は知っていた。故に──


(あと何度すれ(・・)ば終わるのかな♣)


 老人は自嘲気味に笑った。

エリアボスに関して;

プレイヤーだけが掛かる縛りの様な物で、この世界の住人には

関係ありませんなので、ちょっと強い野良居るよねー位の認知をされてます。

あと、エリアボス討伐報酬もプレイヤー側だけの

特権なので特に狩るとかそう言うのも無いです。

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