嫌な予感というものは、大体当たる
バンッ!!と、王太后は机を激しく叩いた。
「どうして、魔国から抗議文書など届いておる!?」
部屋中へ怒声が響く。
侍女たちは肩を震わせ、誰も口を開けない。
その静寂を破ったのは、女官長だった。
「恐れながら、王太后陛下。」
一歩前へ進み、深く頭を下げる。
「我が国では当然とされていることでも、他国から見れば犯罪や人権侵害と受け止められる場合がございます。」
「何を馬鹿な!」
王太后は即座に言い返した。
「陛下を惑わした卑しい平民の女を処分しただけではないか!
たかがそれだけの事で、ここまで言われる筋合いなどない!」
女官長は目を閉じる。
(……この方。本気でそう思っていらっしゃる。)
胸の奥がずしりと重くなった。
(この職場……私の胃、持つかしら?)
コンコン、と扉が叩かれる。
「失礼いたします。」
入室したのはウィリアムだった。
「母上。」
王太后は振り返る。
「ちょうど良いところへ来ました!
各国が我が国へ牙を剥いております!」
ウィリアムは静かに一礼すると、側近から書類を受け取った。
「ご報告がございます。」
部屋の空気が張り詰める。
「貧民街の職人たちが、各国へ移住しております。
商人たちも時期をずらしながら国外へ亡命。
更に、各国使節団は来訪を相次いで中止。
隊商は獣人国を避けるようになりました。」
ウィリアムは淡々と続ける。
「ドワーフ領より取引停止。
人間国からの輸入量は激減、魔国は輸出制限を開始。」
一拍置いて続ける。
「さらに、ベアトリスをはじめ、公爵家とその一門は現在行方不明。所在は掴めておりません。」
一枚、また一枚と書類が机へ置かれ、王太后の顔色が変わった。
「……宣戦布告です!」
立ち上がり、叫ぶ。
「これは我が神聖なる獣人国への宣戦布告ではありませんか!!」
(いや……。初手でやらかしたの、うちなんですけど。)
女官長は表情を崩さず、心の中だけで呟いた。
ウィリアムは静かに首を横へ振る。
「母上。まずは各国へ使者を送りましょう。
彼方の言い分と、此方の言い分を擦り合わせねばなりません。
武力では解決できません。」
「何を言うのです!」
王太后は憤然と叫ぶ。
「我が神聖なる獣人国へ無礼を働いた者たちと、話し合う必要などありません!」
「それでもです。」
ウィリアムは一歩前へ出た。
「今ここで武力を用いれば、本当に世界を敵へ回すことになります。」
「……。」
王太后は唇を噛む。
しばらく沈黙が続き――
「……好きになさい。」
苦々しく吐き捨てる。
「ありがとうございます。」
ウィリアムは深く一礼した。
◇◇◇
部屋を出ると、側近たちは顔を見合わせた。
「陛下……。」
「魔王陛下の外交講座、ちゃんと聞いておられたのですね。」
「成長なさいましたな……。」
皆、どこか嬉しそうだった。
だが、女官長だけは、小さく眉をひそめる。
(……何かしら?嫌な予感しかしない。)
◇◇◇
廊下を歩きながら、ウィリアムは側近のランバードを呼び止めた。
「ランバード。」
「はっ。」
「ドワーフの村へ使者を送れ。」
ランバードは頷く。
「取引停止撤回の交渉でしょうか。」
「それもある。」
ウィリアムは静かに空を見上げた。
「だが、まずは……。」
少しだけ表情を和らげる。
「アリスと、どうにかして会えないだろうか。」
「……え?」
ランバードは固まる。
「今度こそ。」
ウィリアムは拳を握り締めた。
「私は、アリスを守りたい。」
ランバードは何も言えなかった。
廊下の反対側で、その会話を偶然耳にしてしまった女官長は、そっと天井を見上げる。
(やっぱり。嫌な予感、当たったわ……。)
思わず胃の辺りを押さえた。
「胃薬……追加しておこうかしら。」
作者「んなら、佐和山に胃薬追加発注しよ。」
石田三成「なんで最近、胃薬ばっか注文来るんや?」
福島正則「お前の胃薬、評判ええからちゃうか?」
加藤清正「佐吉の胃薬、時空超えて異世界まで流通しとるらしいぞ。」
石田三成「販路広げた覚えないんやけど!?」
大谷吉継「おい佐吉。いつになったら大和来るんや。」
石田三成「悪い。異世界から追加発注や。」
大谷吉継「……よう分からんけど、ええことちゃうか?」
石田三成「しらん。」
作者「なお、代金は異世界通貨ではなく米で支払われます。」
※分かる人だけ笑ってください。
分からない人は『また作者が変なこと言ってる』くらいで流してください(笑)




