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98/102

098⚫️まぼろしのむこうに

大晦日の夜。

寒さの中で、ひとりマッチを売る貧しい少女がいた。

このまま戻れば父に叱られ、家には入れてもらえない。

少女は凍える手でマッチを擦り、わずかな暖を求めた。

火が灯るたび、目には温かな幻が浮かぶ。

暖炉の炎。

ごちそうの並ぶ食卓。

美しいクリスマスツリー。

そして・・・亡くなった優しい祖母の姿。

その微笑みに満ちた顔をもう一度見るために

少女はマッチを擦り続けた。

すべてのマッチを使い切ったとき

少女は静かに息を引き取り、祖母とともに天へ昇っていった。

翌朝、人々は凍えた少女を見つけた。

だが、彼女が見ていた温かな幻を知る者はいない。

ましてや

その小さな灯が、

世界線をこえて’別の幸福な光景’を映していたことを 

誰も知る由がなかった。


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