079⚫️’賢者’の’ナイフ’
「ジュークさん、できましたよ。・・・自分でも、どう言えばいいのか分からない代物になりましたがね。」
エイブが差し出したのは、
肘から中指の先ほどの長さを持つ一本のナイフだった。
そのブレードは、金属特有の光沢ではなく、
深淵を覗き込むような淡い透明感を宿している。
ブリッツは手に取り、慎重に重さを確かめた。
「赤子の肌みたいに滑らかでしょう?冷たいようで、どこか温かい。陶器みたいに掌に吸い付いてくる。鍛え上げた瞬間、正直ゾクッとしましたよ。」
ブリッツは、外で拾ったばかりの礫を台に置いた。
ブレードを当てる。
力を込めるまでもなく刃は吸い込まれ、礫は音もなく二つに分かれた。
パンケーキを切るような、手応えの不在。
通常のナイフより重みがある。
だが、グリップの芯に’厄介モン’の僅かな塊が仕込まれているため、
重心は手元に寄り扱いやすい。
鋼鉄を鍛える過程で、微細な’厄介モン’を練り込み、
さらに幾層もの粉末を纏わせたブレード。
それはもはや、単なる切断具というレベルではない。
「礼金だ。」
ブリッツの声に、エイブは少しだけ緊張を解いた。
「粉末の残りはどうします?こいつは見た目以上に重いし、放っておくと勝手に’動く’気がしてならないんですが。」
「同じ方法で鉄に含ませ、性質を固定してくれ。持ち運べる重さに分割してもらおう。詳細は任せる。」
「わかりました。扱いやすい地金の形にしておきますよ。」
使い方次第では、
世界の理を容易く引き裂く最強の凶器。
それを手にしたのは、
他ならぬブリッツである。




