067●‘厄介モン’
坑道跡の入り口。乾いた風が土埃を運び、古い小屋が軋んだ。
「じいさん、元気か?」
「長老と呼べ、長老と!なんだ、ボブ?食い物か?」
「しょうがねえなあ。ほらよ、’長老’。ミートジャーキーだ。」
「年寄りにこんな堅ぇもん食わせてどうすんだ!もっと柔らかいもん持ってこんか!」
「じゃあ、いらねえよな?」
「ま、待て待て。置いてけ、この馬鹿たれが!」
長老はジャーキーを口に放り込み、ボブが差し出した金属片を手に取った。
「ああ・・・こりゃあ‘厄介モン’だな。」
「‘厄介モン’?聞いたことねえな。」
「お前らが生まれた頃には、もう出てこなくなってたからな。わしらがスクラップ漁りしてた時代には、たまに掘り当てたもんだ。」
「へえ・・・だがよ、綺麗なもんじゃねえか。なんで厄介なんだよ?」
「ちっこいクセに重い。アクセサリーにもならん。加工しようにも刃物が負けるし、溶かそうとしても形が変わらん。どうにもならんのだ。」
「ふーん。じゃあ、出てきちまったらポイ、か?」
「問題はそこよ。ほっとくと勝手に埋まっちまう。また、いずれ掘り当てる。といって、ペーパーウェイトなんてのに洒落込むと、ブーツの先に落ちて骨折する。足の指を砕いた奴もいたな。だから、掘り出して一か所にまとめて捨ててたのさ。まあ、重労働だったわいな。」
「どこに捨てたか、覚えてるか?」
長老はしばし記憶を探り、油染みだらけの古い地図を引っ張り出した。
ボブは地図を覗き込み、場所を特定した。
だが、そこにまだ’厄介モン’が眠っているとは限らない。
いや、むしろ、もっと深く潜り込んでいてもおかしくない。
砂漠の底で、いまだ沈み続けているのかもしれなかった。




