051●一瞬は永遠
ジン君と二人で歩く。白い街並みが続く’ホワイティ’。
ママは「昨晩の料理が美味しすぎて食べ過ぎた」とかで、
ホテルでダウン中。きっと、二人きりにしてくれようとした気遣いね。
小高い丘に登ると、視界が一気に開けた。
眼下には、陽光を弾いてきらめく白い屋根と壁。
まるで精巧なミニチュア細工みたい。
その向こうに広がる海は銀色に輝き、空はどこまでも青く高い。
吹き抜ける風が髪をなびかせ、微かな潮の香りを運んでくる。
ああ、なんて気持ちいいんだろう。
ランチは海沿いのオープンカフェで。
ここの名物は’ドラゴンリザードのテールシチュー’。
濃厚なソースと深い香りが食欲をそそる。
一口食べると、ほろりと肉が解けた。
ん~、美味しい!
ねえジン君、君の料理の腕にも感動したけど、
まさか美味しいものが食べられるから留学したんじゃないよね?
笑いながら冗談めかして言うと、君は困ったように肩をすくめた。
その笑顔に、胸の奥がキュンとなる。
食後は浜辺へ降りた。ザザア・・・ザザア・・・。
寄せては返す波音。そのリズムを聴いていると、不思議と心が凪いでいく。
どこかで、同じ音を聴いた気がする。記憶の底で、何かが揺れたような。
やがて、夕陽が海を茜色に染め始めた。
君と手をつなぎ、その光景を見つめる。
掌から伝わる温かさ。心は穏やかなのに、胸の鼓動だけがトクトクと速い。
君がわたしをそっと引き寄せる。
わたしも、ためらいながらその背に腕を回した。
世界中で、わたしたちだけの時間。
きっと一生忘れない。この瞬間、この景色、この温もりを。
この一瞬は、きっと永遠。




