016⚫️なんとか兄弟の功績
「ながめがいいね、お父さん!」
「そうだろ。ここからは、飛行機もよく見えるんだ。」
丘の上、草の匂いが風に乗る。小さな空港が近い。
ジェット機や宇宙艇が行き交う空を、幼い娘と並んで見上げる。
「ほら、寝そべってごらん。体と空の間を、みんな通っていくから。」
ふたりで草に横たわる。
「うわあ、すごい!どんどん来る!あれっ?ちっちゃいのが来たよ。」
「あれはレシプロ機っていうんだ。プロペラで浮かぶんだよ。近くを行ったり来たりするには、あれで十分。」
「へえ・・・おもちゃみたい!」
「そうだね。でも、あれこそが空を飛ぶ夢を初めて叶えた形なんだ。造ったのは、なんとか兄弟って人たちだったかな。」
「昔からあるんだね。」
「そうだよ。昔のことは大切にしないと。キャンプで火起こしをやっただろ?」
「あれは大変だったね。なかなか火って点かないもん。」
「でも知っていれば、どこに行っても火を起こせる。道具を作ることもね。」
「うん。ピンチの時に役立つんだね。」
「そうさ。知っているかどうかで、生き延びれるかが決まる。」
娘は空を見つめたまま、ぽつりと言った。
「わたし、宇宙艇の運転手さんになるつもりなんだけど・・・あのちっちゃいのも運転できないとダメなの?」
「小さい方が難しいかもしれないよ。大きいのは機械が助けてくれる。でも、あれを乗りこなせたら、どんな大きな船だって同じことだね。」
「じゃあ、わたし、あれに乗る!」
「そうだな。今度、おじさんの家に行くとき、あのちっちゃいのに乗っていこうか。」
「うわぁ〜い!約束だよ、お父さん!」
この約束が、未来での仲間の救出に繋がるのだった。
「とうりゃあっ!」
マリカは小型宇宙艇を、方舟の船体ぎりぎりに着陸させた。
衝撃はない。ふわりと接地。視界の端で、
クドーとルドルフがマンホールのようなハッチを開け、地面から飛び出す。
「副長、’その他’!聞こえる?!通信状況、回復しろ~!」
雑音の中、ふたりの声が割り込む。
「マリカさん!グッドタイミング!」
「相変わらず、いい腕ですな!」
ハッチを開け、ふたりを回収。マリカはシートベルトの確認もせず、艇を跳ね上げた。
「痛っ!頭ぶつけましたよ!」
「泣き言言ってんじゃないの!それに、勤務中は‘操舵手’でしょ!」
「それを言うなら、艦長に‘シートベルトは命のベルト’って叱られますぞ。」
副長の一言に、三人の笑い声が弾けた。




