12/81
011●正直な侍
庭の緑が陽光にきらめき、障子越しに柔らかな光が差し込む部屋に通された。
待つ間もなく、男が姿を現す。
「お待たせいたした。無幻斎でござる。武者修行中とのこと、いや、勇ましいかぎりですね。」
その言葉に、胸が痛む。
背後には検分役殿。
偽りを述べるのは、武士の一分に反する。
新三郎は深く息を吸い、言葉を選んだ。
「大神 新三郎でござる。お目にかかれて、光栄に存じます。が、あえて偽りは申しませぬ。身ども、修行でお手合わせをお願いに来たのではございません。藩命により、そなた様のお命を頂戴に参りました。」
背後で検分役殿が息を呑む気配。
だが、正々堂々、まっすぐに告げる。
それが武士の道だ。
「なるほど。新三郎殿は、わたしを討ちに来られたのですね。」
「左様でござる。尋常に勝負をお願いしたい。」
無幻斎は微笑んだ。
「ご貴殿は、まことに正直ですね。そのことを隠されたまま立ち合えば、有利なこともあったでしょうに。」
「以前、城内でそのようなことをしでかした輩がおった、と聞いております。その節のご無礼、お詫びいたします。ご不快であったでしょうが、何とぞ、今回、身どもと立ち合いをお願いしたい。」
「ご貴殿の流派を受けたまわっても、よろしいか。」
「剛刃流でござる。」




