化けの皮が剥がれた妻
外は小雨。ひんやりと秋本番の訪れを感じさせる朝、俺は桂子に付き添って病院へやって来た。
桂子は「今度こそ主治医の先生にお願いして薬を元に戻してもらうから、あなたも協力して」と、家を出る前から俺に何度も念を押していた。
朝一番で診察室に呼ばれた俺たちは、今の薬に変わってからというもの、俺や周囲がどれほど迷惑を被っているかを切々と訴えた。そして、どうか以前の処方に戻してほしいと頭を下げた。
主治医は静かに耳を傾けたあと、「ご主人から見て、最近の桂子さんのご様子はいかがですか?」と俺に問いかけた。
待ってましたとばかりに、俺は日頃の鬱憤をぶちまける。
「とにかく怒りっぽさが酷いんです。かける言葉も苛烈で……思いつく限り一番酷い言葉で罵倒してくる。仕事の愚痴なら『すぐに辞める!』だし、家庭のことなら『離婚だ!』と騒ぎ立てる。いやぁ先生、正直たまったもんじゃないですよ」
先生は相変わらず冷静な顔つきで答えた。
「診察室での桂子さんからは、見えてこなかった一面ですね。ご主人、これからもできる限り付き添っていただいて、桂子さんの経過を教えていただけますか」
主治医に「裏の顔」を知られた桂子は、幾分気まずそうにバツの悪い顔をしていた。だが、すぐに気を取り直すと、すがるような目で再度先生に頭を下げた。
「今の薬は、やっぱり私には合っていないと思うんです。元の薬に段階的に戻していただけませんか? どうか、お願いします」
「わかりました。そういうことなら、様子を見ながら少しずつ元の処方に戻していきましょう」
ようやく願いが叶い、桂子の表情に安堵の色が広がった。
一方の俺もまた、密かに胸を撫で下ろしていた。これからもこの場所で、桂子の愚痴をいくらでも吐き出すことができる——そんな小さな悦びに、心がわずかに躍っていた。




