もうちょっと優しけりゃあいいのに
台風が来ては去りを繰り返し、大雨の合間に心地よい秋風が吹き抜けるようになった。外へ買い物に出ると、かすかに金木犀の香りが漂う。
帰宅すると、桂子がスマホにかじりついていた。目をギョロギョロさせ、ブツブツと独り言を呟いている。
このサインに、俺はまたしてもハッとする。桂子のオンラインショッピングが始まったのだ。
(またか……)
桂子の財布の紐は緩みっぱなしだ。特に身内や友達へのプレゼントを選び始めると、周囲が見えなくなる。
「け、桂子……もしかして、また誰かに何か贈るつもりなのか?」
「う〜ん……昭夫さん、ちょっと待って。もう決まりそうなのよ」
「あのなぁ、相手だって毎回そんなに期待してないぞ。困らせるだけだろ。第一、こんなにポンポン買い込んでたら家が破産する。俺が毎回どれだけ冷や冷やしてるか、少しは分かってくれよ……」
「昭夫さん、お願い! 本当にこれっきりにするから」
「何度目の『これっきり』だ? 桂子……お前、もしかして買い物依存症なんじゃないのか?」
「心配させてごめんなさい。でも大丈夫よ、そんな大金使ってないんだから」
「いいや、買い物をしている時のそのギラギラした顔を見たらわかる。一度、精神科の先生に相談してみろ」
「……そうかしら。でも私、これ以上お薬が増えるのは嫌だわ」
そうやって悲しそうな顔を見せれば許されると思っているのだろうか。『嫌だわ』で済まされては、我が家の存亡に関わるのだ。
どうしてこうも、我が妻は問題ばかり起こすのか。
もう、本当に誰か助けてくれ。夫である俺の精神だって限界なのに、お構いなしにやらかしてくれる。
その上、たしなめれば適当な言い訳でスッと心を閉ざし、俺を突き放す。
なぁ、桂子。せめてもう少し、俺に優しく接してくれよ。




