老老介護の準備だと!?
季節はもうすぐ秋へと移ろい始めていた。まだまだ暑いが、時折涼しい風が吹き、台風の影響で天気も崩れがちだ。
そんな中、桂子がまた仕事を辞めると言い出した。
「昭夫さん、私、今度こそ社会の役に立つ仕事をしたいの。介護補助のアルバイトにチャレンジしてみようと思うんだけど」
「桂子、介護は言うまでもなく大変だぞ。普通の人だって次々と辞めていくのに、ヘタレのお前にできるわけないだろう。意欲は認めるが、そんな甘いもんじゃない。また音を上げて辞めたら、それこそ周りに迷惑がかかる。お前のことだ、一日持つかどうか……」
「確かにリスクは高いわよ。だけど、今は老老介護の時代じゃない? 昭夫さんがこの先もっと歳を取ったら、否応なしに私が面倒を見ることになるでしょ。その時の準備も兼ねて、今から経験しておいたほうがいいと思わない?」
老老介護の準備だと!?
「桂子、お前に介護してもらおうなんて考えてないよ。お前には無理だ」
「じゃあ、誰に介護してもらうつもりなの?」
「……い、いやぁ、……それは、まだ考えてないけど……」
俺は言葉に窮した。
そうだよな。将来、俺が動けなくなったら、桂子に面倒を見てもらうことになるのか……。
でも、やっぱりこいつには無理だ。途中で放り出されるのが目に目に見えている。
あぁ、恐ろしい……。
「昭夫さん、まずはやるだけやってみたいのよ。私だって自信があるわけじゃないわ。ダメだったら、倉庫の軽作業とか別の仕事を探せばいいと思ってるし」
「なんだって? 倉庫? それはまた簡単に言うが、甘くないぞ。お前なんかに勤まるか……」
「昭夫さん、お願い。チャレンジさせて」
「まあ、お前がどうしてもと言うなら、俺に止める権利もないがな……」
それにしても、どうして女房は急にそんな無茶なことを思いつくのか。さっぱりわけがわからない。
桂子、お前のその気分屋な頭で、今度は一体全体何を企んでいるのやら。
まったく、先が思いやられる。俺の頭痛の種は、当分尽きそうにない。




