妻、再びの挫折
桂子は障害者枠の仕事を1ヶ月程続けたが、ある日のこと、またもや意気消沈した様子で帰宅した。
「昭夫さん、ごめんなさい。
私、やっぱり今度の仕事も続きそうにないわ。周りが気になって仕方がないの。仕事中にブツブツ独り言を言ってるのが自分でもわかるの。わかっていても止められないのよ。独り言の内容は支離滅裂だし、自分が怖くて仕方がないのよ。」
「桂子、気持ちは解るが、それほど気にする事はないんじゃないか?障害者枠なんだし、独り言くらい、大目に見てもらえるんじゃないか?
それに、桂子が気にしている程、周りは気に留めていないかもしれない。声が小さくて聞こえないんじゃないか?」
「大きな声が出ちゃうのよ。私、恥ずかしい。
転院したあの病院に、2、3日入院して、病気について徹底的に調べてもらいたいわ。」
「入院ね。…そうだなぁ。2、3日位なら、入院してみるか?それで、桂子の気持ちがもしも晴れたら、また仕事に行けるね?」
「…そうだわね。とりあえず次の受診日に、検査入院させてもらえるかどうか聞いてみるわ。」
桂子の病気の正体については、俺も関心がある。
急に怒り出したかと思えば、次の瞬間にコロっと様子が変わるのには俺も振り回されっぱなしだ。
「昭夫さん、お願いがあるの。
仕事先に説明して、しばらくお休みするって伝えてくれない?」
ほらきた。俺は伝書鳩じゃないぞ!
「あぁ、わかったよ!」
俺は言い合うのが面倒になり、受話器を取り、お休みの件を桂子の仕事先に告げた。
桂子は、一旦ほっとしたようだったが、その後ジーっと考え込んでいた。
触らぬ神に祟りなし。俺はほっておいた。
すると、桂子は急に立ち上がり今度は自分で受話器を取った。
どこかへ電話しているようだ。
受話器を置くと、オズオズと俺のところへ来た。
「昭夫さん、今、自分で仕事先に電話してみたわ。入院するかもしれないと言ったら、センター長さんが、また進捗を教えてくださいと言ってくださったわ。嬉しかったの。入院するかしないかは別として、次の受診の後、落ち着いたら、また仕事に行きたいわ。」
今のところ、桂子は元気を取り戻したようだ。
「そうか。桂子、よかったな。何事も上手くいくといいな。」
俺は、それだけ言うのが精いっぱいだった。




