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妻の罵声が無い恐怖

翌日、俺がいつものようにヘッドホンを付け、パソコンに向かい、自分の世界に浸っているところへ、またもや桂子から邪魔が入る。


「昭夫さん、昨日ね、病院のお庭で桜が綺麗に咲いていたのよ。病院でお花見してきちゃったわ。」


桂子は、楽しそうに俺にスマホの写メを見せる。


「そうか、桂子。それはよかったなぁ。」


不意を突かれたので後の言葉は何も思い付かない。


桂子は、その後も続けて言った。


「ちょっと昭夫さんに相談したい事があるの。

ホットヨガの無料体験レッスンを予約したのよ。

できれば続けて行きたいんだけど、昭夫さんはきっと反対よね。」


「ホットヨガ?何だ、それは。」


「いやだ、昭夫さん。ホットヨガよ。知らないの?そういう事は知らないのね。AIに聞いてみたらどうかしら。高温多湿の部屋の中でヨガのポーズを取るのよ。発汗で痩せるし、身体にいいのよ。」


俺は、桂子の説明が合っているか、一応、AIに聞いてみた。


桂子が尚も続ける。


「それで、できたら無料体験の後も続けたいんだけど、費用はだいたいこのくらいでね。」


と、俺にまたスマホの画面を見せる。


「え〜!?こんなにかかるのか!まぁ、だいたいそういうものだろうとは思っていたが、冗談じゃないよ。俺は反対だ。」


「やっぱりね。そう言うだろうと思ったわよ。いつもそうだもの。仕方がないわね。」


「仕方がないって、そういう言い方はないだろう。」


桂子の言い方は、俺のせいで桂子の楽しみが奪われるのは仕方がないと聞こえる。


「だからね、昭夫さん。あなたはいつも、反対した事を私が強行すると、酷く落ち込んで寝込んじゃうでしょう?だから、私は諦めざるを得ないのよ。」


「何でも俺が悪いのか?お前はいつも言い合いになると離婚を持ち出して俺を脅迫するよな?もう少し言い方に気を付けろよ。」


「昭夫さん、今、私が、一言でも“離婚”て言ったかしら?」


「今は言ってないが、いつも言うだろうが。お前は卑怯なんだよ。」



桂子は、そこで黙った。ダイニングキッチンの椅子に座り、何やらスマホをいじっている。


しばらくして、また俺の邪魔をしにきた桂子は言った。


「昭夫さん、無料体験もキャンセルしといたわよ。私の1番は昭夫さん。昭夫さんに従えば間違いないわね。」


何だ、どうしたんだ?桂子が素直に俺に従った。俺は嫌な予感がした。喜んでいいのか、そうではないのか、嵐の前の静けさというやつだろうか……


どちらにしろ共依存の檻の問題はいまだに解決していないのだ。

昨日の転院が功を奏して解決の糸口に向かってくれるのを祈るのみだ。




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