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二人の将来への展望

日増しに気温が上がり、窓の外は眩いほどの春一色となった。

だが、この家の空気だけは冬の終わりのような湿った冷たさが淀んでいる。


桂子は、新しい仕事が始まってまだ2週目だというのに、水曜日にはもう欠勤の電話を入れていた。



昨日、帰って来るなり、

「昭夫さん、私やっぱりまた仕事辞める。もうやってられないの。

また、私に難癖をつけてくる人がいるのよ。


いいでしょう?暮らせるだけのお金はあるわよね。私に仕事はやっぱり無理よ。」


「お前、暮らせるだけのお金って。やっとこさギリギリだよ。これから大病にかかったりしたら、どれだけお金が要るかわかるか?」


「そう?だから、私は働かなきゃいけないわけね。少なくとも私についてだけは、大病になってもお金はかけなくていいわよ。ただ静かに死を待つわ。」



「そんなことを容易く言うけれど、実際、その時になってみたら、そうはいかないんだぞ。

どうして分からないんだ?」


俺は苛立ちを隠せなかった。



「だいたい、最近は大抵、職場の人間関係のトラブルが原因で辞めているけど、どうしていつもそうなるんだ?


また、根拠のない妄想に取り憑かれたのか?」



「妄想じゃないわよ。私は、辞めた方がいいのよ。皆んな、そうして欲しがっているのよ!」


「誰かにそう言われたのか?」


「……言われたわけじゃないけど、みんな、そんな顔をしてたわよ」


「まただ。また、その『顔してた』か。それはお前の思い込みなんだよ。誰も辞めてほしいなんて思ってない。何度言えばわかってくれるんだ」


俺の声が、誰もいない隣の部屋まで虚しく響く。早く転院の日が来てほしい。桂子の歪んだフィルターを通した世界ではなく、客観的な診断という救いが欲しかった。



「とにかく、明日は休んでいいから。明後日からはまた行きなさい。」


「……わかったわよ。とりあえず、そうするわ」


俺は、震える手で膝をさすり、ようやく息を吐いた。ギリギリの均衡が崩れる音へのカウントダウンを、数日分だけ先延ばしにできた。ただそれだけのことなのに。



俺は、これからも二人できるだけ仲良く元気でいたいと思っていた。桂子は同じ思いではないのか。

そうなのかと思うと哀しさが込み上げる。


西日がよく差し込むマンションのリビングでしばし呆然と立ちすくんでいた。




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