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第59話 騎士団長の乱心 2


 リグはガランに闇の魔力弾による弾幕、そこに闇の大鎌の追撃を織り交ぜた攻撃を仕掛ける。

 それに対しガランは身体強化による魔力を剣に集中・放出することで斬撃を飛ばし、魔力弾と大鎌を一撃で切り裂いた。


「何だとっ!?」

「舐めるなよ。貴様が精霊術師であることは驚いたが、対抗策がないとでも思ったか!」

「チッ……ならば―――!」


 リグは闇の魔力を圧縮した無数の糸でガランを攻撃する。


(いくら斬撃が強力とはいえ、魔力を高密度に圧縮したこの糸は切れないはず……仮に切れてもこの量は捌けないはずだ。一本でも通れば―――)

「こんなもの……ふん!」

「……なにっ!?」


 ガランは手に魔力を集中させ、糸を丸ごと掴み取り、力任せに引っ張った。絡めとろうとしたリグは逆に糸に引っ張られて無防備となり、ガランは引き寄せられてくるリグに向けて渾身の力を込めた一撃を放とうとしていた。


「くっ……!」


 リグは途中で糸を自ら切断し、何とか難を逃れる。しかし、それも想定済みとばかりにガランは身体強化で一気に距離を詰めて剣を振るう。

 リグは蜘蛛の巣状の魔力の盾で直撃こそ防いだものの、力に差があるせいで後方に大きく吹き飛ばされた。


「ほう、あれを防ぐか。……貴様なかなかやるな」

「この……化け物め!」

「り、リグ……」

「……一度引くぞ!」


 リグは闇の霧を発生させ、目くらましを仕掛ける。ガランは一瞬怯んだが、魔力を込めて平の部分で剣を振るい、霧を吹き飛ばす。この判断が早かったおかげでリグとサミュエルを見失うことなく追跡することができた。


「リグ、なにをやっている」

「ここまでとは思わなかった……さすがはガランと言ったところか」

「感心している場合ではない。このままでは―――」

「安心しろ。策はある」


 リグたちは馬術の訓練場に逃げ込み、ガランはリグたちを追い詰める。


「もう観念しろ!貴様では俺に勝てん!」

「まだまだこれからだ」


 リグは護身用の剣を抜く。精霊術を警戒していたガランは一瞬呆気にとられたが、警戒は緩めなかった。


「ほう……剣術の心得があるのか。おもしろい……」

「勘違いするな。これは、こう使うんだ」

「……は?」


 リグはサミュエルに剣を手渡した。何かの罠かとガランは身構えるが、サミュエルは何も聞かされていないようだった。


「り、リグ!貴様……わたしに戦えと言うのか!?」

「その通りだ」

「お前でも勝てない相手に勝てるわけがないだろう!」

「大丈夫だ。あなたなら勝てるさ」

「なにを言って―――……な、なんだ?身体が勝手に……」


 リグがサミュエルの背中を軽く叩くと、サミュエルの意思に反して剣を構え、ガランに対峙する。サミュエルの身体からは魔力の糸が伸びており、その糸はリグの手に繋がっていた。


「……貴様、まさか!?」

「想像通りだ……さぁ、行け!」


 サミュエルは操り人形のようにガランに斬りかかる。普通にやれば鍛錬を積んでいるガランとサミュエルでは力に差がありすぎて勝負にならない。しかし、その差のせいでサミュエルはガランと打ち合っただけでも激痛が走り、時に無茶な挙動に振り回されて身体が悲鳴を上げていた。しかし、リグはサミュエルのことなど気にも掛けず酷使を続ける。

 苦痛で歪むサミュエルを見て、ガランもまた圧倒的な弱者に対して剣を振るうことに抵抗が生まれ、剣にも迷いが生じる。


「り、リグ、やめろ!やめてくれ!もう、腕が……」

「なら、早く倒さないとな」

「いくら裏切り者とはいえ……卑怯者め!正々堂々と戦えないのか!」

「こちらの方が本業でね。……現に、いい勝負だろう?」

「が、ガラン、た、助けてくれ……」

(……幸い、操っている間は他の精霊術は使えないようだな。ならば―――!)


 ガランはサミュエルの剣は弾いた一瞬の隙を付き、リグに急接近して剣を振るった。


(もらった―――!)


 しかし、ガランの思惑は外れる。リグはサミュエルをまるでヨーヨーのように引き寄せて無理矢理防御させた。無理な体勢で攻撃を受けたサミュエルの腕は折れ、あまりの激痛にサミュエルは泣き叫んだ。


「なにっ!?」

「ひぎゃぁあああーーーっ!!痛い、痛い、痛ぃいいいーーーッ!!」

「危ない危ない……それにしても、酷いことするな。か弱い宰相様にこのような……」

「貴様が言えた義理か!」


 泣き叫ぶサミュエルを見ても、リグはまるで動じず戦闘を続行する。サミュエルごと叩き切ることは可能だが、ガランの騎士道はそれを許さなかった。


(やはり、糸を切断してから倒すしかないか)

「さて、続けようか騎士団長様?」

「い、いやだ!もう!もう、やめてくれーーーっ!!」


 それからも剣の打ち合いが続く。サミュエルは激痛で泣き叫ぶが、馬術の訓練場は広大で、ちょっと騒いだくらいでは誰にも気づかれない。巡回はあるが、その時間までにサミュエルが持つかわからない以上、ガランが何とかするしかなかった。


(あの糸は魔力で保護しなければ指が切断されかねないほど頑丈だ。それを複数本一気にとなると……いや、やるしかない!)

「ひ、ひ、ひぎぃっ!」

(……ここだ!)


 一瞬の隙を見つけ、ガランは跳ぶ。サミュエルの頭を通過し、魔力を剣に集中し、全力と全体重を乗せた一撃を糸に向かって振り下ろす。身体が糸に引っ張られて仰け反り、サミュエルが再び悲鳴を上げたものの、全て糸が切断された。


「なんだとっ!?」

「よし、後は……!」


 リグに接近し、ガランは剣を振るう。初撃は躱されたものの、リグは体勢を崩し、ガランは容赦なく剣を振り下ろそうとした。


「こっ、このままでは……!」

「覚悟ッ! ―――!!?」


 親しい者との酒席ということもあり、軽装だったのが裏目になった。勝利を確信したガランの背中を、サミュエルの剣が貫いた。


お疲れ様でした。


 少し短くなってしまいましたが、キリがいいのでここまでにしました。

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