第57話 結界 2
※お詫び※
誠に勝手ながら前話のタイトルを変えさせていただきました。
表裏一体→結界
内容は変わりませんが書きたい話ができてしまい、それが間に挟まると歯抜けになってしまうので変更したく思います。混乱させてしまったなら申し訳ございませんでした。
その頃、カルロスやリリアン、使用人や料理人たちは馬車に乗り、アレクの命令である場所に向かっていた。
「~♪ ~~♪」
「姫様、ちょっと静かにできません?わたし眠いんですけど」
「だって、久々の旅行なのよ?すっごく楽しみ♪……姉様も一緒ならよかったのにな……」
「今からそんなに興奮してたら着く頃にはくたびれますよ」
「何よ、ずっといなかったくせに久しぶりに会ったら説教?!」
「だーから、ヒゲのせいで寝不足なんですってば……」
「ふん……!」
リリアンとハーティスが言い合っている最中、城を見渡せる丘の上に出る。しかし、いつもならば城のある場所は闇のドームに覆われていた。その光景に、リリアンは絶句する。
「……なに、あれ……」
「……始まったようですね」
「ハーティス、あんた何か知ってるの?」
「……いいでしょう、ここまで来たらどのみち同じですしね。とはいえ、細かく話しても長くなるので簡単に説明しますね」
「うん」
「姫様は旅行とはしゃいでいますが、あれはヒゲが言った嘘です。ヒゲは裏切り者との決着をつけるために姫様たちを避難させたんですよ」
「……えっ?」
「あれが何かは知りませんが、十中八九戦いが行われているでしょう」
「なに、なに……それ……」
「……この際濁さず言いますが、ヒゲが負ければあなたは王女ではなくなります。まぁ、ヒゲも準備はしているようですから当分は大丈夫でしょうけど、今後は身の振り方も考えなければなりませんね」
ハーティスの言葉の一つ一つがリリアンに衝撃を与える。リリアンはショックが大きすぎてハーティスの言葉をうまく処理できなかった。
「待って、待ってよ……わたし、そんなこと知らない……」
「知ってどうするんです?」
「それは……」
「戦力にもならないくせに人質としての価値は一級品。そんな人間がいたところで迷惑でしかありませんよ」
「そんな、そんな言い方しなくてもいいじゃない!!」
「事実でしょう?それに、あなたたちが生き残れば王家の血筋は途絶えません。ご自身がどれだけ重要な立場かをご理解ください」
「~~~……お父様は、どうなるの?」
「良くて投獄、悪ければ命はないでしょう」
「!? なんとか……なんとかならないの!?」
「わたしたちにできることは避難だけです。今戻ったところで間に合いません」
(……姉様)
気持ちに余裕がなくなり、リリアンは無意識にノーマを求めた。そのとき、ふとある考えがよぎる。
「! 姉様は……姉様は、あそこにいるの?!」
「さぁ?」
「知ってるんでしょ?!」
「知りませんよ。暗殺者を倒せるほどの実力があるのは聞いてますが、あのロリコンがそんな危険な場所に連れて行くとは考えづらいです」
「……本当に、本当にどうすればいいの?どうすれば変えられるの?」
「わたしたちにできることは勝利を信じることだけです」
「……うっ……うっ……お父様……みんな……うわぁーーーんっ!!!」
父親を失うかもしれない恐怖、当たり前の日常が崩れていくことへの恐怖、突きつけられた現実を自覚し、リリアンは泣き叫ぶ。そんなリリアンをハーティスは抱き寄せ、ただただ寄り添っていた。
一方、城内では魔法陣の影響で身体に凄まじい重圧と倦怠感が襲う。近衛騎士と騎士の面々はまともに立つことができず、エメスはアレクを光の精霊術で守ったが、不意を突かれた精霊術師たちは反応が遅れ、自身を守るので精一杯だった。その混乱に乗じ、人形劇団の面々が襲い掛かる。
リグはある疑問を持つものの、一度その考えを隅に置きエメスの元へ向かった。
(……?どういうことだ?)
「くっ……こ、これは……まさか」
「……結界魔法だ。特定精霊の力を大幅に強化し、それ以外を大幅に弱体化させる。……もっとも、貴様のように対抗できる力を持った者だと抵抗されてしまうが、精霊術でない者や対抗手段を持たぬ者はご覧通りだ」
「……っ!光の精霊術を使える者は騎士たちに闇の耐性を!少しはまともに動けるはずだ!」
「おっと、他人を気にしている場合か?」
指示を出している隙を付かれ、複数人の闇の精霊術師たちがエメスを取り囲み、闇の波動を浴びせる。いくらエメスといえど、弱体化され、アレクを守りながらではまともに反撃ができなかった。
「ぐっ……!」
「さすがは天才宮廷精霊術師。弱体化させてもそこまで防げるとは……だが、いつまで持つかな?」
「―――ハァッ!!」
「! ……騎士団長、ウォルター・ナボマか」
騎士団長のウォルターは身体強化を応用し魔力で体を覆い、ラミーの光の精霊術を重ね掛けることで結界魔法の中でも動けるようになっていた。
しかし―――
「この結界の中で、ここまで動けるとは感心感心。だが、所詮は元右腕が繰り上がっただけの騎士団長。貴様程度ではわたしは倒せない」
「ほざけっ!!」
果敢に剣を振るうウォルター。しかし、結界のせいで本来の実力を発揮することができず、強化された闇の精霊術はウォルターの行く手を阻み苦戦を強いられる。
ラミーもまた、エメスを救おうと隙を見てはエメスを攻撃している闇の精霊術師に攻撃を仕掛けるが、弱体化が響き、片手間で処理されるほど威力しか出せないでいた。
(結界魔法……ここまで影響が出るなんて……)
「どうした?やはりその程度か?」
「おのれ……っ!」
「……貴様の相手はもう飽きた。終わらせるとしよう」
「なにっ……!?」
リグはウォルターの影を媒介に形成した闇の槍による不意打ちを行う。ウォルターは間一髪のところで剣で弾くことに成功するものの態勢を崩された。その隙を逃さず闇の魔力を高密度に圧縮させた闇の糸が光の精霊術と身体強化で守られたウォルターの身体を貫き、まるで蜘蛛の巣を形成するように広がってウォルターを磔にした。糸を通して、流し込まれた闇の魔力はウォルターを蝕んだ。
「ぐぁあああーーーーっ!!」
「ウォルター様!」
「貴様も目障りだ」
リグは闇の大鎌を形成し、ラミーを襲う。ラミーは魔力を集中させた光弾で相殺を試みるが、切り裂かれてラミーに直撃し、弾き飛ばされた。幸い、命は助かったが、ラミーのダメージは深刻だった。それに伴いウォルターに掛けられていた光の精霊術が途絶え、ウォルターは闇の精霊術の影響をモロに受けてしまい、戦闘不能になってしまった。
「ラミー!ウォルター殿!」
「こんなものか。一応警戒はしていたんだが……どうやら過大評価していたようだ」
動けないウォルターの顔面を踏みつけながらリグは嘲笑う。許しがたい行いだが、人形劇団が光の精霊術師に攻撃を集中するように立ち回るため、近衛騎士たちは防戦一方となり助けに入ることができない。
ウォルターは怒りに身を震わせるも動けず、リグを睨みつけることしかできなかった。
「お、おのれ……」
「強がるな。我ら精霊術師と違い、騎士の魔力量などたかが知れている。現にもうただの身体強化すらできていないだろう」
「ぐっ……」
「やはりただの繰り上がりだったな」
「……貴様、騎士団長に……何をした」
「?」
「貴様は騎士団長に嗅ぎ付けられたと言った。つまり、貴様は騎士団長に何かしたと言うことだろう……」
「それを話して何になる。冥途の土産でも欲しいのか?」
「……」
「……いいだろう。情けをかけてやる」
勝利を確信したリグは余裕を見せて語り始めた。
お疲れ様でした。
主人公が不在の話ってもしかしたら初めてかもしれません……




