第55話 正体 2
※注意※
前回に引き続き、少し気分の悪くなる描写が続きます。お食事中には見ることはお勧めしません。
そういった描写が苦手な方はスクロールしていただき
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上記の線の部分まで飛ばしていただいても構いません。話の大筋にはあまり変化はない……はずです。
前回の段階で注意喚起するべきでした。申し訳ございませんでした。
「イアープで殿下の身体を保護して、ティルの電撃で気絶させるのはどうでしょう?上手くいけば寄生虫をそのまま倒せるかもしれません」
「うーん……」
「ダメ……ですか?」
「いや、良いとは思うんだが問題があるな」
「問題?」
「死骸からのアレルギー反応が怖いな。光の精霊術ではどうにもならない」
「水の精霊術で死骸を排出できませんか?」
「できるとは思うが、殿下の身体が持つかどうか……」
「そんな……」
『ヴェノムワームが自分から出て行ってくれれば良いのだが……』
「……それ、いいかも」
「?」
「師匠、こういうのはどうでしょうか?」
ノーマが一通りの説明が終わると、エメスは感心するのと同時に苦笑いを浮かべた。
「なるほど……しかし、よくそんなこと思い付くな」
「……やはり、無茶でしょうか?」
「いや、これなら何とかできるかもしれない」
『我の出番だな!』
「でも、本当に上手くいくかどうか……」
「それなら安心しろ」
「?」
エメスたちはカルロスの元へ—――向かわず、カルロスの毒見役の元へ向かった。カルロスよりも症状が進行しており、治療こそ受けているものの打つ手がない状態だった。
カルロスの治療を行っていたはずのエメスが突然部屋を訪ねてきたことに、治癒術や使用人たちは驚きを隠せなかった
「え、エメス様!?なぜ、このような場所に……殿下は、殿下はご無事なのですか?」
「いや、先にこっちを治療しようと思ってな」
「!!??」
「ノーマ、処置を始めるぞ。準備を―――」
「え、エメス……様……」
「?」
準備に取り掛かろうとするエメスの前に、毒見役が口を開いた。
「わたくし、など、よりも……殿下を、殿下をお救いください……」
「無論だ。だが、お前が先だ」
「わたくしの、代わりなど……いくら、でも……います。わたくしの命など……殿下に比べれば……う゛ぅっ!」
「馬鹿を言うな、どちらも助ける。……だが、一応聞いておくぞ。自分の命よりも殿下の命が大事……この言葉に偽りはないな?」
「……はい、当然、です」
「では、その忠誠を利用させてもらおう」
「……へっ?」
「わたしたちがここに来たのは、ある治療法を試すためだ。理屈の上ではこの方法で治せるはずなんだが、如何せん実際にやったことはなくてな」
「え、えっ……?」
「下手したら何かしら後遺症が出るかもしれないが……殿下のためだから……な?」
「えぇっ!?」
(師匠……もう少し言い方があるのでは?)
「さて、治療を始める前に……すまないが、麻酔を打ったらお前たちは部屋を出て行ってくれ」
「な、なぜです!?」
「少し大掛かりな治療になる。他の人間がいると気が散って集中できない」
「し、しかし……」
「治療が遅れれば、殿下の命も危うくなるのだぞ?!」
「わ、わかり……ました……」
医師たちは納得のいっていなかったが、部屋を出て行った。
「始めるぞ」
「はい!」
しばらくして、エメスたちがカルロスの元へ戻ってきた。あれから時間が経っていたこともあり、アレクの表情は険しかった。
「遅かったな。何をしていた?」
「……やったことのない治療法を試していました。少しでも成功率を上げるために、毒見役に実験体になってもらいました」
「いろいろと言いたいことはあるが……それで?」
「成功しました。直ちに取り掛かります」
「……頼んだ」
話を進める傍ら、ノーマは苦しんでいるカルロスに声を掛ける
「殿下、すぐにお助けします」
「君が……、ですか……?」
「不安は当然かと……ですが、全力を尽くします」
「……そうでは……いえ、お願いします」
苦笑したような表情を浮かべるカルロスだったが、苦悶の表情が少し和らいだように見えて、ノーマは少し安心した。
麻酔を使い、アレクを含めた医師たちを退出させるとヴェノムワームの駆除を開始する。
ヴェノムワームの駆除、それは特にヴェノムワームが集中している場所を切り、イアープがヴェノムワームを補足し、その情報をアクリアに伝えて常にヴェノムワームを補足。グイッタでカルロスの身体に闇の精霊術に対する耐性を付与、食べ進めようとした血管や筋肉などの器官に闇の精霊術で「ここを食べるのは危険」という暗示をかけ、傷口に誘導するように仕向けた。
一匹、また一匹と傷口から次々這い出たヴェノムワームをピンセットで引っ張り、または払い落として、ルビィとトロバの炎で焼き殺した。毒見役にも行ったとはいえ、その様相は気分の良いものではなかった。
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ヴェノムワームを除去した後は、アレルギー反応の原因になっている糞や卵の摘出など、治療は日を跨いだものの、何とか治療を終えることができた。
手術の傷口の治療を行っていたとき、エメスはアレクに報告に行くためグイッタを残して部屋を出ていった。
「……すぅ……すぅ……」
(……よかった、呼吸も安定してる。)
「ん、んん……?」
「!?」
意識を取り戻したカルロスの目に映ったのは、朝の日差しに照らされた人影だった。
(天……使……?)
「殿下、お身体の具合はいかがでしょうか?」
「! ……君、でしたか」
「はい、治療は終わりました。今は細かい傷の治療中です」
「そうですか……」
「助かって本当に良かった……」
「!!」
ノーマの安堵の表情に、カルロスの胸が高鳴った。
カルロスは、これまで何人もの婚約者候補とお茶会を重ねていくうちに女性と接することなど慣れていた。しかし、肩書や容姿を褒められるばかりで、カルロス自身を見ていないことを知った瞬間、すべてが馬鹿馬鹿しくなり、いつしか当たり障りのない対応ばかりするようになった。それでも何とか篭絡しようとした者もいたが、嫌悪感が増すばかりだった。最有力候補であるトモイテ王国のフェアリスに対してでさえ、こんな感情になったことはなかった。
ずっと違和感はあった。アレクの噂の真相を聞き出す目的で近づいたにも関わらず、黙ってノーマの話を聞いていたのか、なぜお茶会に誘おうと思ったのか、なぜリリアンと遊ぶ姿を目で追っていたのか、訓練場でシルトと仲睦まじく話す姿をみるとモヤモヤした感情が起こったのか……
思えばバルコニーで出会ったときからすでに感じていたのかもしれない。カルロスは初めて自身の想いを自覚した。その想いの正体は……一目惚れ、そして、明確な恋愛感情だった。
「あっ、毒見役の方も元気になりましたよ。お二人とも、もうすぐ動けるようになりますからね」
「……」
「……殿下?」
「い、いえ……」
「……? なんだか脈が速いような……?」
「気のせいです」
「そ、そうなんですか?病み上がりですから、違和感のあるところがあったら教えてくださいね」
カルロスとそんな話をしていると、エメスが部屋に入ってきた。
「ノーマ、治療はどうなっている」
「はい、もう少しで治ると思います」
「そうか……話しておきたいことがある。悪いが治療はグイッタとアクリアに任せてこっちに来てくれ」
「えっ?わ、わかりました……!?」
エメスの元へ向かおうとしたノーマの腕をカルロスが掴む。ほとんど反射的に行った行為であるため、ノーマのみならずカルロスも驚いていた。
「で、殿下?」
「……失礼しました」
「すぐ戻ります」
カルロスから解放され、エメスの元に向かう。別室に通されたことで他の人に聞かれたくない会話であることを察した。
「話って何ですか師匠?」
「ノーマ、すでに他の関係者にも話してあるが、お前にも改めて話しておく」
「何でしょう?」
「それは――――」
「……えっ?!」
エメスの話を聞き、ノーマは驚愕する。その内容は「カルロスと毒見役の治療が完了したことを伏せておくこと」だった。
当然、なぜそんなことをするのか理解できなかったが、王命であることでノーマが口を挟むことはできなかった。
お疲れ様でした。
配慮に欠けたこと、申し訳ございませんでした。
ツッコミどころも多いでしょうが、これからもよろしくお願いします。




