第48話 訓練場 5
二人の間に割って入る形でシルトが介入する。
「ふ、二人で何やってるんだ」
「し、シルト……」
「おや、どこへ行っていたんですか?」
「そんなことはどうでもいい。何をやっていたのか聞いてるんだ」
「そんなに詰め寄らないでください。……先日のことをお互いに謝罪していただけですよ」
「……本当か?」
「嘘をついてどうするんです?」
「……そうか。……ノーマ、ちょっとこっちに来てくれ」
「えっ……う、うん……」
「?」
「殿下、どうか二人にしていただきたい」
「……わかりました」
アーノルドがカルロスを説得し、シルトはノーマと二人で建物の裏に回った。
「……あのさ」
「ごめん、シルト」
「!?」
「嫌がってたのは知ってたのに、アーノルドさんの厚意に甘えちゃって……ちゃんと断ればよかった」
「……違う、悪いのはオレなんだ」
「えっ……?」
「その……~~~―――」
「……?」
「……お前に負けないくらい強くなるとか言っておいて、目の前で負けたのが何だか恥ずかしくて、かっこ悪くて……情けなくなったんだ……」
このときのシルトは、本音ではあるものの本当にこれが正しいのか不安だった。ノーマはそんなシルトを見上げ、微笑みながら応える。
「……かっこ悪くなんかないよ」
「!?」
「シルト、前よりずっと強くなってた。剣のことなんかわからないわたしでも、カルロス殿下がまともに打ち合うことを避けていたのがわかるくらい……負けちゃったのは残念だけど、かっこ悪いなんて思わないよ」
「そ、そうか……」
「うん」
「そうか……そうか……はぁ~~~……」
「でも、最後の方は動きが変だったけど、何かあったの?」
「……」
「ふぇっ? ……いひゃいいひゃい!ほっへふへははいへ!」(痛い痛い!ほっぺつねらないで!)
厳密に言えばノーマが悪いわけではないが、原因である本人に言われると腹立たしい。しかし、本人に直接言える内容でもないため、シルトなりの無言の抗議だった。
その後は二人でアーノルドたちの元へ戻ると、ちょうど休憩の時間になっていたようで、広場にいる人も疎らだった。ノーマは本来の目的を果たすべく、荷物の中から料理を取り出す。
「はい、頼まれてた物」
「おお、サンキュー」
「ノーマちゃん。これは?」
「えっと……メンチカツっていう料理です」
「じゃあ、早速―――」
「おいおい、独り占めか?」
「……わかったよ」
「珍しく素直だな」
「……さっきは、助かったから……」
「……身体は大きくなっても、いい子に育ってくれて兄ちゃん嬉しいぞ」
「うるさいな!」
「それじゃあ僕も……」
「なんでだよ!」
「いいじゃないですか。僕に負けたペナルティってことで」
「~~~……次は負けないからな」
「あっ、食べるならソースとレモンの果汁をかけてね」
三人がメンチカツに齧りつき、頬を緩ませた。
「おおっ、これは美味い!外はサクサク、中には肉がぎっしり詰まっているのに柔らかいぞ。それに、時折シャキシャキとした食感が……これは?」
「お肉をいっぱい叩いて、ミンチにしたんです。お肉ばっかりだと重たくなりそうだったので、キャベツを入れてみました」
「お肉と濃厚なソース、これだけだとくどくなりそうですが、後口がスッキリしていますね。レモンの果汁のおかげでしょうか?」
「はい、これならさっぱりと食べられるかと……」
「なんだ、肉だけでよかったのに……」
「ちゃんと野菜も食べなきゃダメだよ?」
「わかってるけど、どうも苦手なんだよな……」
「野菜には栄養がたっぷり入ってるし、強い身体を作るなら食べた方がいいよ。……それに、これなら食べられるでしょ?」
「まぁな……でも、野菜食べるときって大体サラダだから、酢とか油をかけても食欲が湧かないんだよ」
「そっか……じゃあ、今度は野菜を美味しく食べられるソースを考えてみるね」
「ああ、頼む」
親しげに話すシルトとノーマを見て、カルロスはある違和感を覚え、問いかける。
「……お二人はどういう関係なんですか?」
「どういうって……」
「友達ですよ?」
「……恋人同士ではないんですね?」
「はっ!?ちょ、おま―――」
「ええ、違いますね」
「……」
(シルト、凹むな。そこでガッと行け、ガッと!)
「そ、そうですか……。……?」
あっさり否定するノーマと、露骨にがっかりするシルト、その光景にヤキモキするアーノルド。三者三様のリアクションにカルロスはたじろぐのと同時に、不思議な感覚を味わっていた。
(……どうして僕はホッとしたんだ?二人が話しているときも、なんだかモヤモヤして…… ? ???)
カルロスが考え込んでいると、後ろから声を掛けられた。
お疲れ様でした。
作中、メンチカツにソースとレモン果汁をかけて食べるというのは、わたしが好きな食べ方です。異論は認めます。




