第46話 訓練場 3
「カルロス殿下、お待ちしておりました」
「みなさん、本日もどうかよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「カルロス殿下、今日も見目麗しいわ」
「そこにいるだけで美しいもの、当然よ」
「わたしはこの前、手を振ってもらえたのよ」
「わたしも落とし物を拾ってくれたの」
「身分に関係なく、お優しいお方ですもの。素敵だわ」
女性たちが黄色い声を挙げる中―――
「……? ノーマちゃん、何で隠れてるんだ?」
「いや……その、なんと言いますか……」
ノーマは迷惑を掛けてしまった手前、ばつが悪く、柱の陰に隠れてしまった。
ノーマには気付いていないカルロスはシルトに声掛ける。
「シルト、お手合わせ願えますか?」
「光栄です殿下」
「カルロスとシルトか……二人の実力は五分五分だから見応えがある」
「やだ~、どっちを応援しよう~?」
「……普段通りにしたらどうです?」
「……こっちにも体裁があるんだよ」
「僕はそっちの君も好きですけど?」
「気持ち悪いこと言うな」
カルロスとシルトは年齢が近いこともあり、よく手合わせをする。身分こそ違うが、いつしか二人には友情のようなものが芽生えおり、軽口すら言える関係になっていた。
「両者構え!……始め!!」
和やかな雰囲気も一転、立ち合いになった瞬間にその場に緊張が走る。
剣の激しい打ち合いが響き、周囲がそれを見守っていた。
(一撃一撃が重い……まともに受けたら僕では押し切られてしまいますね)
(当たってるのに受け流されてるな……油断すると思わぬ方向から剣が来るからイヤなんだよな……)
(すごい……シルト、あのときより強くなってる)
「以前より速くなっているが力みすぎだな。筋力はあるんだから、もう少し力を抜いて速さを意識してもいいだろうに……」
二人の剣は激しさを増す中、シルトは賭けに出た。
(こうなったら……)
(! 大振り……ここだ!)
薙ぎ払いを行おうとしたシルトの隙をカルロスは見逃さず、素早い一撃を振るう。しかし、シルトは剣を振るうのを止め、カルロスの剣を躱して空振りさせた。その隙を逃さずシルトはカルロスに向けて剣を振り下ろそうとする。
勝負はあったかのように見えたが―――
「っ!?」
大振りになってガラ空きになった懐をカルロスが蹴り飛ばし、シルトが怯んだ隙に体勢を立て直した。
(隙の作り方が自然になってきましたね。まんまと騙されてしまいました……)
(まさか蹴ってくるとはな……足を叩き折られるリスクもあるのによくやるよ)
(ですが……)
(だけど……)
((おもしろい!!))
お互いの気分が高揚し、魔力が高まっていく。身体強化を使用して、お互いに全力で打ち合おうとした。しかし―――
「二人とも、身体強化は使用しないように。実戦を想定した訓練とはいえ、危険すぎます」
「……わかりました」
「……チッ」
これが騎士同士なら何も言われなかっただろうが、王子が相手では審判も止めざるを得なかった。勝負に水を差されたが、一瞬の油断が命取りになる状況が続く。
だが、カルロスの一言で戦局が変わった。
「……? ノーマさん?」
「……はっ!?」
「あっ、隙あり」
「っ! しまっ―――!」
二人の打ち合いに惹かれ、隠れることを忘れたノーマをカルロスが見つけてしまった。
つい口走ってしまったそれは、カルロス自身の油断ではあったのだが、シルトはそれ以上に動揺してしまい隙だらけになってしまった。
カルロスはシルトの剣を弾き飛ばし、喉元に剣を突き付けた。
「そこまで!」
こうして模擬戦は決着した。
お疲れ様でした。
時間帯の変更は事前に告知してあったとはいえ、ご迷惑をお掛けしました。




