第45話 訓練場 2
訓練場の様相は様々、剣や槍の素振り、身体強化の応用訓練、クロスボウによる射的訓練、鎧などの武具の補修やメンテナンス等、少し覗くだけでも様相は様々だった。
(やっぱり鉄製の物が多いせいか金属臭がすごい……あっ、女の人もいるんだ)
「珍しいかい?」
「ええ、精霊術に頼りっぱなしで、武器とかあまり使いませんから……」
「使えない方からすると、そっちの方が楽に見えるが?」
「そんなことないですよ。精霊たちと息を合わせないと威力も命中率も落ちますし、攻撃を防ぐときだって魔力の練り込みが甘いと突破されてしまいます。それに、どうしても軽装なので防げなかったら軽傷じゃ済みません」
「ふーん……いっそのこと盾とか防具で防御をガチガチに固めたらどうだ?」
「わたしは防具があってもどうにもならないような目に遭ってきたので……それよりだったら、機動力を確保して回避に専念した方が安全かと……」
「……ノーマちゃん。見かけによらず場数を踏んでるんだな」
「ええ、まぁ……はい……」
「……ノーマちゃん?大丈夫?遠い目をしてるけど……」
「大丈夫です。……ちょっと、いろいろ思い出しちゃって……」
「目から光がなくなってる!?」
ノーマの反応から見て、修業中に何度も命を落としかけるほどに過酷であったことが窺える。それは一種のトラウマであり、意図していなかったとはいえアーノルドはそこに触れてしまった。
「ごめん、ノーマちゃん。嫌なことを思い出させて」
「あっ、気にしないでください。本当に……」
(いかん、完全にやらかした。エメス様は一体どんな修業を……いや、エメス様だからな~~~……)
実のところ、ノーマは魔獣との戦いでのトラウマを引きずっているだけなのだが、エメスは性格上、あらゆる局面に対応できるように敢えて厳しくする側面があり、付いていけず去る者が多い。唯一の弟子であり溺愛しているからこそ、なおさらその傾向が強くなることが想像できたアーノルドは勝手に同情し、誤解していた。
そうこうしているうちに、広場に着いた。そこでは、騎士・騎士見習いたちが模擬戦を行っていた。
「あれって……鉄の剣ですか?」
「ああ、刃は潰してあるから切れたりはしない。まぁ、当たったら痛いし、下手すれば骨が折れるけど……」
「うわぁ……」
「でもそれは不覚を取ったという証明でもある。痛い思いをしなきゃ真剣さも出ない。何より、戦闘中に不覚を取れば怪我では済まない。命を落としたり、腕が切り落とされたら精霊術でも治すのは難しいだろう?」
「そうですね……」
精霊術による治療は人間の自然治癒能力が大きく関わってくる。病気や多少の怪我なら、免疫力を強化したり、自然治癒能力を促進させれば回復するが、切り落とされた腕を生やすようなことはできない。切り落とされた腕をくっ付けることは可能ではあるが、精霊術の中ではかなり高度なものとなっており、治療費も高額になる。死者の蘇生については諸説あり、高位精霊ならば可能とされているらしいが、ほとんど夢物語とされている。
「おっ、あそこにいるのシルトじゃないか?」
「あっ、いました……シルトはこれからでしょうか?」
シルトが模擬戦の準備をしている中、女性たちがシルトに駆け寄っていく。
「シルト様、頑張ってください」
「ありがとう」
「シルト様、また剣術を見てください」
「この前よりも動きが良くなっていたよ。その調子で頑張って」
「シルト様、今夜一緒にお食事でも……」
「申し訳ない。自主練があるんだ……」
黄色い声を浴びながら、シルトは声援に応えていく。その様相は爽やかな好青年といった感じで周囲の評判も良い……のだが―――
「……あれ誰ですか?」
シルトの普段の姿を知っているノーマにとっては同一人物だと思えなかった。
「気持ちはわかる……んで?どうよ?あのシルトを見てどう思う?」
「はい?どうって言われても……なんだかシルトじゃないみたいです」
「んー……、そういうことじゃないんだけどな……」
「? まぁ、無理してないといいなとは思いますけど……」
(あれを見て嫉妬しないのか……結構手強いかもしれない)
アーノルドが勝手にヤキモキしている中、突如歓声が上がる。
お疲れ様でした。
少し試したいことがあるので、次回の投稿はお昼頃にしてみたいと思っています。よろしくお願いします。




