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カフチェーク  作者: 月夜調
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「言っても無駄なんだろうが、本当に暑いなぁ・・・」


 ヴゥルカーンの灼熱地獄に当てられながら、ダンジョン奥へと向かう白。

 その頬には無数の汗が伝い、しかし、直ぐに蒸発していた。


「でも、グレイスがいない分進みは早いか」


 グレイスは寒さには強かったが、暑さには弱く、直ぐにへばってしまう為、今回の旅には不向きといえた。

 しかし、グレイスが居ない事での不都合もあった。


「モンスターの気配が分からないのは不便だよなぁ」


 グレイスが居ない事により、此処に来るまでの道のりで、モンスターとの戦闘回数はいつもより多く、暑さもあって白はかなり疲弊していたのだった。


「ガルルル!」

「またか・・・」


 獣の唸り声に白が視線を向けると、その先には3頭の蜥蜴が居た。


「『ヤーシリツァ』か」


 ヤーシリツァとはこのカフチェークで第三位に位置し、その皮膚は硬く強固なものであり、強力な顎の力による噛み砕きと、鋭い爪による引っ掻きを攻撃方法とするモンスターなのだった。


「グルルル」


 鈍い動作で白との距離を詰めるヤーシリツァ。

 そんなヤーシリツァの動きに呼応する様に、白はウプイーリの刃を先頭のヤーシリツァに向ける。


「来るか?」


 徐々に両者の間合いが詰まり、張り詰めた緊張が場を支配する。


「ガルルルゥゥゥ!」

「っ!」


 上体を起こし白へと跳び掛かって来たヤーシリツァをサイドステップで躱し、その横腹にウプイーリを一閃喰らわした白。


「グル⁈」

「まだまだ行くぞ!」


 言葉通り横腹を突いた刃をそのまま首へと滑らしていく白に、ヤーシリツァは僅かに距離を取ろうとするが・・・。


「遅い!」


 鈍足のヤーシリツァを神速で追い、その首を一刀両断斬り裂いてみせた白。


「どんどん行くぞ!」

「ッッッ⁈」


 その勢いのまま、後方に控えていたヤーシリツァとの距離を詰めた白に、ヤーシリツァは牙を覗かせたが・・・。


「遅いと言ったろ」


 開いたヤーシリツァの口にウプイーリの刃が襲い掛かり、ヤーシリツァは口角から裂かれてしまう。


「あと1匹‼︎」


 残されたもう1匹のヤーシリツァの眉間に電光石火の一閃を放つ白。


「ギャアァァァ!」

「これで終わりだ‼︎」


 得物を持つ手を力一杯振り上げ、渾身の一撃を振り下ろした白に、ヤーシリツァは・・・。


「ギャアァァァーーー‼︎」


 絶命の絶叫を辺りに響かせたのだった。


「ふぅ〜、終わったか・・・」


 汗を拭いながら一息つき、辺りを見回した白。

 周辺に新たな敵影は無く、地面に残ったヤーシリツァ達のドロップアイテムに目をやった。


「皮だけか」


 大した稼ぎにもならないからなと続ける白。

 ウプイーリの手入れを頼んでいるケンには、迷惑料も含めてかなり色を付けて謝礼を払っていた白。

 こんな事では今回は黒字は厳しいかなと考えたのだった。


「面倒な依頼を受けてしまったな」


 そんな風に呟きながらも、今回の依頼をそんなに嫌なものだとは思わなかった白。

 それは、彼もいつかはNPCとプレイヤー間の問題を解決する必要があると考えており、今回の和義の決定に心の奥では賛同していたからなのだった。


「それにしても、暑いな・・・」


 水筒に入った水を飲みながら、自身の行く先に目を向けた白。

 その目に飛び込んできたのは、ドス黒い色の溶岩に周りを囲まれた一本道であり、行く先も灼熱地獄である事を物語っていた。


「この環境はモンスター達に優位なものだからな」


 激しい戦闘もあり、沸騰していた脳に水分の冷気が入った事で、冷静な思考を取り戻した白。

 その言葉通り、モンスター達はこの灼熱地獄でも体力を消耗せずに、激しい攻撃を仕掛けてきた。


「まぁ、何にしてもとっとと教典を取って帰るに限るなぁ・・・」


 冷静さは取り戻したが、この暑さの中で色々考えたくないと首を振った白。

 記憶の書庫の鍵を持つ者のスキルを使い、間違える事の無い教典への一本道を進むのだった。

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