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「それじゃあ、龍狩りに向かうのかい?」
「あぁ、そうなったよ」
「ふふふ。戻ったらドラゴンバスターとでも呼ぼうかね」
「軽く言ってくれるよ」
面白そうな表情の雪に対して、苦虫を噛み潰した様に応える白。
此処はジャードノチス外れの林で、二人は久しぶりに会っていた。
「でも、ソロで行くならかなりキツイクエストだね」
「あぁ・・・」
今回の件を結に話した時、暫く考える様にし、珍しく同行を断られてしまった白。
普段なら考えられない結の態度だったが、レベル帯で考えるとソロでは無理なクエストだったが、スコーラスチの力を得た今ならクリアする事は可能であり、回復役不足の為、グレイスの同行もやめさせる事にしたのだった。
(だが、本当に変だったよなぁ・・・)
断られた事より結の様子が気になっていた白。
あまり思い悩む性格に思えない結の、何かを考える様子に、悪い事が起こらない様に願うのだった。
「流石に教典は持ってなかったんだな」
「残念ながらね」
「そうか」
肩をすくめた雪に、対して期待もしてなかった様子の白。
「でも、今の君ならあの暴れ龍も抑えられるだろう?」
「多分な」
「ふふふ、珍しく強気だね」
自信満々といった様子でもなかったが、落ち着いた中にも確かな自信をのぞかせた白。
その自信はスコーラスチによるもので、いかに強力な攻撃であれ、当たらなければ如何という事もないといった話で、言葉通り神速を手に入れた今の白には、強力な龍種も恐るるに足らない存在なのだった。
「でも、元々はこんな機能入れていたのか?」
「ううん。AIにはこだわったけど、NPCの妊娠なんて予定していなかったよ」
「じゃあ、この機能はこの状況でアップデートしたって事か?」
「多分ね。どういう方法かは分からないけど、この状況を作った人間が行ったんだろうね」
「そうか・・・」
NPCとプレイヤーによる受胎というイベント。
ゲームの中に最初から機能として存在していたなら驚く事ではなかったが、雪はそんなシステムをゲーム製作時には搭載しておらず、この状況が起きた後、何者かの手によって追加されたシステムだった。
「お前からは何とも出来ないのか?」
「そうだね、何とかならなくもないだろうけど、危険を冒してまで何とかする気にはならないかな」
「・・・」
何でもない風にそう答えた雪に、白は僅かに苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべた。
しかし、雪が本気にならないと決めている以上、ここで白がどんな説得をしようとも、それに応える事はしないのは確定しており、無駄な努力をする気にもなれないのだった。
「でも、警視庁が本気だすとは思わなかったよ」
「あぁ、そうだな」
雪の言葉通り、白も警視庁がNPC達の事にまで本気になるとは思っていなかった。
しかし、今回の件で和義の本気の度合いを知り、正直驚きを感じていたのだった。
「生命を持たないNPCの人権か・・・」
「おかしいと思うか?」
「ううん。でも、考えた人間は相当なロマンチストだね」
「そうか?」
和義と対面すれば、決して出ないであろうロマンチストといった単語に、僅かに違和感を感じた白。
しかし、雪が言う事に特別反論する事はなく受け入れたのだった。
「『ヴゥルカーン』には警視庁のワープクリスタルで行くのかい?」
「あぁ。そこは抜かりなくな」
ヴゥルカーンとはズヴェーリ教の教典のある場所で、このカフチェークで東方に位置する大陸にある火山型のダンジョンなのだった。
「灼熱地獄を行く覚悟は出来てるみたいだね」
「まぁな」
「彼処は教典以外に見るべきものはないからね」
雪の言葉通り、ヴゥルカーンは出て来るモンスターもそのレベル帯にしては経験値は低く、落とすアイテムも価値の低いものばかりだった。
「さっさと行って、直ぐに戻って来るさ」
「ああ。それが良さそうだね」
「そういえば・・・」
世間話をする二人だったが、白はふと思い出した様に雪の顔を見ると、顎に手を当てて続けた。
「イスカーチェリの他のメンバーから連絡はあったのか?」
この前は結を待たせていた為、時間も無く聞けなかった内容を問い掛けた白。
そんな白に雪は特段悪い顔もせずに・・・。
「あったよ。無視してるけどね」
そう短く応えた。
「佐藤は?」
「彼は僕の正体を教えてないし、それに彼にカフチェークを送る時は僕の名前は使わなかったんだ」
「そういえば、天人さんの名前を叫んでいたな」
「ああ。彼が今、佐藤君の会社と取引があるみたいで、彼の名前を使わせて貰ったんだ」
「なんでそんな事したんだ?」
「僕の名前じゃ忘れられている可能性もあるし、このカフチェークに来ないんじゃないかと思ってね」
「なるほど・・・、な」
「せっかく同窓会でも出来るんじゃないかと思っていたんだけどね」
「・・・」
「ふふふ、似合わないかな?」
白にはどういう心境の変化かは分からなかったが、当時なら絶対にそんな事言わないと思っていた雪の発言に、白は静かな間だけで応えると、雪は小首を傾げながら微笑を浮かべたのだった。




