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カフチェーク  作者: 月夜調
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「やあ、こうやって会うのは久しぶりだな」

「えぇ。お世話になってます」


 言葉通り久しぶりの再会となった和義と白。

 今回は急用があるという事で和義による呼び出しがあり、白が一人で会いに来るという形になっていた。


「結さんは良かったんですか?」

「ああ。今回の件はアイツも一緒だと面倒な話になるからな」

「そうですか」


 面倒と言った時、本当に其れを表情に込めた事から、和義の呼び出しが面倒な内容であると理解した白。

 静かに和義の言葉を待ったのだった。


「どうだ、ゲームクリアに進んでいるか?」

「え?え〜と、どうなんでしょう」


 そんな白の気持ちを知ってか知らずか、本題を先延ばしにしてすかしてきた和義に、白は少しズッコケそうになる。


「結からの報告では、また腕を上げたと聞いたが」

「まぁ、ぼちぼちです」

「ふっ、そうか」


 そんな世間話にもならない様な事を話しながらも、和義の双眸はしっかりと白を捉えていた。


(どうにもやり難いな・・・)


 警察という意味では結も同じだったが、この和義には結には無い経験があり、その一挙一動には隙が無く、発言一つとってもその思慮が白には計れなかった。


「まあ、ぼちぼちでも進んでくれれば良い」

「はい」

「さてと・・・、今日の本題だが・・・」


 僅かな時間の会話にも拘らず、若干の汗をその肌に感じていた白は、やっとかと安堵の息を漏らしたが、和義はそれには気付かず、言葉を続けた。


「実は非常にまずい報告が上がっていてな」

「はぁ」

「プレイヤー・・・、つまりこのカフチェークの参加者とNPCの間に子供が出来たという報告なんだ」

「え⁈そんな事って・・・」

「うむ。部下からの報告で、間違いはないらしい」

「・・・」


 プレイヤーキャラとNPCの間での妊娠。

 元のカフチェークには無かった機能だが、このカフチェークにはどうなのだろうかと、白は直ぐに雪の顔が思い当たった。


(追加してそうかな?)


 雪は色恋沙汰に興味があるタイプではなかったが、このカフチェークの開発スタッフがそれらの機能を追加してもおかしくはない話だった。


「しかし、これは・・・」

「まずいだろう?」

「はい」


 和義の言葉通り、現在このカフチェークでは一部のプレイヤー達がNPCを物の様に扱っており、警察は現在それ等の行為を不問としていた。

 しかし、プレイヤーとNPCの間に子供が出来たとなると、一部の悪質なプレイヤー達を良く思わない人間との間に軋轢を生じる可能性が出てくる。


(そうじゃなくてもそれ等のプレイヤー達の事を良く思わないプレイヤーは多いしな・・・)


 現在、このカフチェークでは一部に現実世界への帰還を諦め、このカフチェークの世界で生きていく決意を固める者も多く存在していて、そういうプレイヤー達の中には、NPC達にも自らと同じ人権を認め、警察の保護対象とすべきという意見があった。

 その為、和義を中心とした警視庁の職員達は、NPCとの協議を重ね、新たな立法を検討していたのだった。


「それで、自分にどうしろと?」

「ああ。プリマートゥイを知っているか?」

「確かこのカフチェークで獣人達の国でしたね」

「そうだ。彼処は今、プレイヤーの入国が禁じられていてな」

「えぇ」

「本来なら総本山と交渉した方が良いのだが、会談を断られてしまったんだ」

「そうですか」


 プリマートゥイはグレイスの生まれ故郷で、獣人三大貴族を中心に成り立っている国家であり、一部のプレイヤー達による獣人のNPC達に対する行為を問題視し、全プレイヤーの入国禁止という措置をとっていたのだった。


「『ズヴェーリ教』は知っているか?」

「獣人族が信仰している宗教でしたね」

「ああ。流石に詳しいな」


 ズヴェーリ教とはこの世界のNPCの獣人族の9割が信仰している宗教であり、獣人族達の世界的ネットワークとなっていた。


「今回はその教会と接点を持ちたいと考えているんだ」

「なるほど・・・」

「だが、それにはどうやら必要なアイテムがあるらしくてな」

「必要なアイテムですか?」

「ああ。そのズヴェーリ教の教典なんだ」


 和義の言葉に記憶の鍵を開いてみる白。

 確かに、イベントアイテムとしてズヴェーリ教の教典を作った記憶はあり、その場所も記憶していた。


「そいつを手に入れて来て欲しいんだ」

「なるほど・・・」

「どうだ、お願い出来るか?」


 そのイベントは決して楽なものではなかったが、現在の白の実力をもってすれば不可能なものでもなかった。

 しかし、白にはその前に確認しておく必要がある事があった。


「ズヴェーリ教との交渉が上手くいったとして、奴等との関係はどうするつもりですか?」


 奴等。

 白がそういった者達は、リメースリニクで猛威を振るっている一部のプレイヤー達の事であり、その被害の多くを獣人のNPC達が受けていた。

 しかし、警視庁は彼等とも一定の関係を持っており、其れは彼等が行っている様な行為の被害をプレイヤー達に出さない為のものだった。


「これは俺の一存だが、新たに作る法ではNPC達に対する犯罪行為も処罰の対象にするつもりだ」

「そんな事をして大丈夫なのですか?」

「大丈夫じゃないさ。しかし、このままでいても行く道は地獄だ」

「なるほど・・・」


 和義の言う通りこのまま法も作らずにいれば、結局はプレイヤー間での諍いを起こし、結果最悪の事態を招く事になるだろう。


「どうだ、やってくれるか?」

「そういう事なら、分かりました」

「そうか、やってくれるか」


 掛けていた椅子を立ち上がり、白の肩を叩いた和義。

 その険しい表情には、一瞬の笑顔がのぞいたのだった。

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