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カフチェーク  作者: 月夜調
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「ありがとうございます」

「いえいえ、どういたしまして」


 ヴォルクとの戦闘で負った傷を結の回復魔法で治してもらった白。

 引いていく痛みに命を感じ、戦闘の流れを一人反省する。


(ちょっと突っ込み過ぎたか・・・)


6頭のヴォルクと遭遇し、結だけではその侵攻を抑えるのは無理と感じ、盾役に加わったまでは良かったが、1頭のヴォルクに背中をとられ、鋭利な爪による引っ掻きを受けてしまったのだった。


(直接攻撃には有効な防御方法を持ってないからな)


 魔法による攻撃には完全に防御を堅めている白。

 しかし、直接攻撃というとそこまで高い防御力は持っておらず、職業特性でみても十分とはいえなかった。


(やっぱり安全マージンを十分にとって、躱していくしかないな)


 その為にもスコーラスチの入手は命題であり、その為の今となっていた。


「でも、かなり稼げたんではないですか?」

「えぇ。そうですね」


 結の言葉通りヴォルクのドロップアイテムである『毛皮』と『牙』、そしてリョートの『氷の結晶』と『氷の魔石』はかなり貯まっており、換金すればかなりのものとなっていた。


「SPは大丈夫ですか?」


 ドロップアイテムが貯まっているという事は、それだけ戦闘をこなしたという事。

 白は結に消耗の確認をした。


「そうですね・・・、回復アイテムもまだ余裕はあります」

「私はちょっと疲れた」


 そういって地面に足を投げ出したグレイス。

 その様子は子供そのもので、その妖艶な容姿には似つかわしくないものだった。


「ちょっと休憩しますか?」

「う〜ん、でも頑張る」

「そうですか。偉いですね〜、グレイス」

「うん。お姉様」


 結に手を引かれて直ぐに立ち上がったグレイス。

 結はそんなグレイスのお尻と尻尾を叩いてやったのだった。


「目的地まではあと少しだからな」

「うん」

「どうだ?モンスターの気配は感じるか?」

「う〜ん・・・、居なそうかな?」


 洞窟も奥深くまで潜ると、風通しも良くなく、モンスターの匂いが風に乗って運ばれる事も少ないらしく、グレイスの気配を探る能力も発揮されなくなっていた。


「あとどの位でしょう?」

「一階層降りた先ですね」

「あの方がそういっていたのですか?」

「えぇ」


 白は結に記憶の書庫の鍵を持つ者のスキルを説明するのを避け、此処には雪の情報を頼りにやって来た事にしていたのだった。


「とにかく、先を急ぎましょう」


 そういって先陣を切った白。

 このフロアの階段へと向かい、足を進めたのだった。



「ここだな」

「何もありませんね」


 目的地へと辿り着いた白達3人。

 しかし、結の言葉通り其処は巨大な氷壁に行く手を阻まれていた。


「確かこの辺りに・・・」


 その氷壁を撫でながら、何かを探す白。

 やがてその指先に氷塊の突起物が触れた。


「有った」

「どうしたんですか?」

「えぇ・・・、少し待って下さい」


 そういって突起物を力一杯押さえた白。

 すると、巨大な氷壁はまるで伝承の海割りの様に二つに別れ、その奥にかなりの広さの部屋が現れたのだった。


「わ〜、すご〜い!」

「凄いですね」

「えぇ。凝ってますよね」


 用意されていた演出に三者三様の感嘆を示した白達3人。

 そんな反応を示しながらも、部屋へと進む。


「あれですか?」

「えぇ。そうですね」


 部屋の中央には一つの宝箱があり、それに手をかけた白。

 逸る気持ちを抑える様に、落ち着いた様子で宝箱を開けた白。

 その目に飛び込んできたのは、禍々しいデザインの一足のブーツであり、それを見た結は・・・。


「特徴的なデザインですね」


 随分と遠慮した言い方だったが、その口調には自身の趣味には合わないと明確にその意思がこもっていた。


「まぁ、そう言わずに・・・」


 結とは違い、その昔デザイナーに発注した通りのデザインに、忘れかけていた厨二心がくすぐられる白。

 自らの履いていた靴を脱ぎ、宝箱からスコーラスチを取り出し履いたのだった。


「これで良し」


 一人小さく頷いた白。

 その力を試したいと思った・・・、刹那だった。


「何か来るの!」


 部屋の中に響き渡るグレイスの叫び声。

 白が自らの進んで来た道へと視線を送ると、そこには3匹のヴォルクと1匹のリョートがいたのだった。


「行きま・・・」


 そう口にし、結が駆け出そうとした刹那だった。


「グレイス詠唱を!」

「え⁈」


 既に背中だけでグレイスに指示を送り、ヴォルクとの距離を詰めていた白に、結は驚きの表情を浮かべる。

 

「⁈」


 感情など有ろう筈もないヴォルクの相貌にも浮かぶ驚きの色。

 そんなヴォルクの驚きには構わず、ウプイーリを抜いた白は、先頭のヴォルクに先制の一撃をくわえる。


「ヴォォォン」


 仲間の叫びに応える様に2匹のヴォルクは白へと跳びかかり、リョートは詠唱を始める。


(行けるな・・・)


 静かに自身へと迫るヴォルク達を見ながら心だけで呟いた白。

 その眼は冷静にヴォルク達の攻撃を捉え、神速をもってその攻撃を寸前で躱しきった。


「凄い・・・」


 ヴォルクへと駆け出す事も忘れ、白の動きに釘付けになる結。

 その動きは疾風迅雷と呼べるもので、ヴォルク達の攻撃を避ける勢いそのままで反撃に転じ、あっという間に3匹のヴォルク達を倒していた。


「これで終わりだ」

「ッ⁈」


 リョートが詠唱を結ぶのと同時の事だった。

 白の刃はリョートを捉え、その胴体を斬り刻んだのだった。


「終わったな」

「詠唱必要なかったの」


 白がリョートを仕留めると同時に詠唱を終えていたグレイス。

 結んだ詠唱を解除し、若干つまらなそうに告げたグレイス。

 そんなグレイスにすまないと短く告げながら結へと視線を送った白。


「・・・」


 結は無言で何かを考えている様子だった。


(やり過ぎたかな)


 スコーラスチの力に興奮し、少し先走り過ぎた事を若干悔やんだ白。

 余りにもなスコーラスチの力に、結が何か疑いを持つかと心配した白。


「・・・」


 然し、結は白の心配とは全く関係のない事を考えていたのだった。

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