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「ここが洞窟の入り口ですかね?」
「えぇ。そうみたいですね」
シェーヴィル大陸のワープクリスタルから僅かに北上し、スィニエーク大地の関所を通り、そこから再びしばらく北上した所までやって来た白達3人。
そこには氷で出来た扉を持つ洞窟があり、ここがゲームの中である事が如実に現れていた。
「重そうな扉ですけど」
「まぁ、大丈夫でしょう」
自分達の背を遥かに超える重そうな扉を見て、其れを人力で開けれるのかと不安を示した結だったが、白はそれに軽く応えた。
そして、白の言葉通り、扉は白が手で押すと素直に開いた。
「ね?」
「やっぱりゲームの中なんですね」
「そうですよ」
「・・・」
当然の様に振る舞う白に、少し複雑そうな表情を浮かべた結。
もうしばらくの長い時間をゲームの中で過ごし、この世界に現実を感じ始めていた結。
改めてこの世界が人工物であると思い知らされたのだった。
「お姉様、行くの?」
「ええ、グレイス。アキラさんも良いですね?」
「はい」
確認する様に頷き合う3人。
「ここからは魔法を使う敵もいるので注意して行きましょう」
「そうなんですね」
「魔法?ヴォルクばかりじゃないの?」
「あぁ。『リョート』っていう雪の精霊がいる」
「リョートですか」
「えぇ。出会したら、自分が牽制しますので」
「分かりました」
打ち合わせをしながら洞窟へと足を踏み入れた白達3人。
洞窟の中は氷に包まれており、中は陽の光も入らないのに、足元もしっかり見えた。
「ここら辺が助かるところですかね」
「確かに。松明で手が塞がる事がないですしね」
ゲームならではの世界観に頷き合う白と結。
これで松明を持ち運ぶ必要があれば、片手を其れで塞がれ、戦闘における選択肢もかなり減る事になるのだ。
「中は意外と広いですね」
「えぇ。複数のモンスターと戦闘になりやすくする為にこうなっているんでしょう」
「これもゲームならではって事なんですね」
結の言葉通り洞窟の中は3人が並んで歩ける位の通路の幅があり、入り口から真っ直ぐ進むと直ぐに地下への階段が目に入った。
そうして階段を降りて行くと目に入ってきたのは3つに別れた道で、白達はそこで立ち止まる。
「どこに行きましょう?」
「右ですね」
「迷わないんですね」
「えぇ。まぁ・・・」
通常なら優柔不断という訳ではないが、慎重に道を選びそうな白の、ハッキリとした口調に、結は少しだけ驚いた様な表情を浮かべる。
白も目当ての品への道が分からなければ迷うところだったが、記憶の書庫の鍵を持つ者のスキルを使い、スコーラスチへの一本道はしっかり分かっていた為、迷いなく発言をしたのだった。
「お姉様、何か居るの」
「なんですか、グレイス?」
結と白の前に立ち、その行手を塞いだグレイス。
その狐の尻尾が立ち、毛も逆立っているのを確認し、結はグレイスの顔を覗き込んだ。
「多分ヴォルクと・・・、何か別の」
「匂いで分かるって事ですか?」
「うん。ここは臭いがこもってるの」
「どうしますか、アキラさん?」
「数は分かるか、グレイス?」
「ヴォルクが3、何か分からないのが1だと思う」
「分かった。ここで迎え撃ちましょう」
「分かりました」
「もう直ぐ来るの」
「グレイス、詠唱を」
「分かったの」
グレイスに詠唱の指示をしながら、自身も双魔の詠唱に入る白。
やがて牙を剥いたヴォルクを先頭に、3頭のヴォルクと1匹のリョートが現れた。
「リョートは頼みます!」
白にそう告げヴォルクへと駆け出した結。
「突っ込み過ぎない様に、結さん」
詠唱を結びながら、結の後ろ姿に声を飛ばす白。
ヴォルクは自身へと駆けて来た結に狙いを定め、その爪で引っ掻きの一撃を放つ。
「くっ!」
その一撃をトンファーで防ぎながら、足に力を入れた結だったが、体躯ではヴォルクが上回っており、軽く一撃を加えられてしまう。
「『プリチジェーニイ』!『トスカ』!」
そんな結を尻目に双魔で詠唱を完成させた白。
先ずは一つ目のプリチジェーニイを先頭に立っていたヴォルクにかけると、ヴォルクの動きは足を地面に引かれた様に遅くなり、その動きはスローモーションの映像の様になってしまった。
「ピィィィ」
そして二つ目のトスカはヴォルクの奥に控えていたリョートに対して放ったもので、リョートは詠唱を結んでいたが、其れを受けるとその詠唱の進行の速度が落ちたのだった。
「グレイス、リョートから行け」
「うん」
白の言葉に詠唱をリョートより先に結び終えたグレイスは、火炎の弾をリョートへと放ち、見事に命中させた。
「ガルルル」
「行くぞ!」
白へと牙を剥いたヴォルク達だったが、その足は遅く、駆け出した白の連撃を喰らい絶命したのだった。
「大丈夫ですか?」
「ええ。回復魔法をかけましたから」
ヴォルクから負った傷を回復魔法で治した結。
傷は浅かったらしく、直ぐに治ったのだった。
「ちょっと突っ込み過ぎですね」
「でも、仕方ないでしょう。アキラさんもグレイスも詠唱があるのですから」
「確かに」
結の言葉通りこの3人のパーティでは、圧倒的に壁役が不足しており、本来なら回復も出来る前衛という、中間距離に位置取るべき結が前衛の壁役になっており、しかし、白がその役目を負うと詠唱を結べなくなるというジレンマを抱えていた。
「とにかく、無理は禁物ですよ」
「ええ。分かっています」
白の言葉に無い胸を叩いた結。
しかし、その表情にはどこか喜びの色が見えたのだった。




