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「お姉様、早く早く」
「グレイス、待ちなさい」
ワープクリスタルでシェーヴィル大陸へと降り立った直後、関所の役人を無視して進もうとするグレイスに、それを止めた結。
しかし、役人はそんなグレイスの態度にも笑みなどを浮かべ、好意的に受け取っている様だった。
「それではこちらへ」
「はい」
グレイスの腕を引き、役人に示された通り動く結。
それに白も続き、手短なチェックはあっという間に終わったのだった。
「流石に寒いですね?」
「えぇ」
此処に来る前に、旅支度として防寒具を着込んで来た白達3人。
しかし、それでも一面が白銀の世界に包まれたシェーヴィル大陸の寒さは厳しく、結と白はその体を震わせていた。
「お姉様、雪だらけ〜」
地面に手を伸ばし、雪を掬い上げたグレイス。
彼女はどうやら寒さに強いらしく、元気いっぱいに辺りを駆け回っていた。
「あの娘、キタキツネなのかしら?」
「どうでしょう?」
「お姉様ー!」
「はいはい、待ちなさい!」
「・・・」
先を行くグレイスを駆けながら追う結。
白はそんな二人を見ながら、辺りを行く人を見渡した。
(そんなに多くはないが、少しはプレイヤーも来てるみたいだな)
このシェーヴィル大陸はスィニエーク大地以外はそんなに見るべき場所も少なく、僅かながら小さな街があるだけの大陸なのだった。
その為、スィニエーク大地の探索以外に見るべき場のないこの大陸に、現時点でプレイヤーの来る事は少なく、すれ違う人の9割はNPCなのだった。
(これなら、スコーラスチは心配ないかな?)
目当ての品がまだ他の人の手に渡っていない事を想像しながら、結とグレイスを追う白。
その吐く息は白く、然し、其れは一面の雪景色へと溶けていったのだった。
「お姉様」
「グレイス、詠唱を進めなさい!」
「はい!」
自身と同じくらいの体躯を持つ狼を抑えながら、グレイスへと檄を飛ばす結。
「ガルルル」
結の抑える狼は、その名を『ヴォルク』と呼び、このカフチェークで第四位に位置するモンスターなのだった。
「数が多いです」
「分かってます。ガリャツィナーツィヤ」
結に応える声と同時に、魔法の詠唱をヴォルクの群れへと行った白。
魔法は効いたらしく、7匹いた内の3匹が有らぬ方へと駆け出した。
「行きます、お姉様!」
詠唱を結んだらしく、伸ばした両腕から火炎の弾を結が抑えていたヴォルクへと放ったグレイス。
火炎の弾は先頭のヴォルクをとらえ、その身は炎に包まれ一瞬で絶命した。
「続けて行きます!」
「ええ!」
「こっちは、俺が抑えます」
連続で炎の魔法の詠唱へと入ったグレイス。
そんなグレイスに結は応え、白は2匹のヴォルクと対峙した。
「グルルル・・・」
「来るか?」
白と一定の距離をとり、その身を大地へと寄せるヴォルク。
いつでも跳びかかれる体勢を維持し、白へと牽制をする。
(跳びかかりの一撃にカウンターを入れて、ウプイーリのスキルを発動させる)
黒刃を構えながら、ヴォルクの動きを待つ白。
永遠に続くかと思われた間は、然し、直ぐに終わりを告げ、獲物をとらえる事を我慢出来なくなったヴォルクの1匹が白へと跳びかかった。
「ガルルルゥゥゥ‼︎」
「先ずは一撃!」
白の首元へと牙を剥き跳びかかったヴォルク。
そんなヴォルクの一撃を冷静に躱しながら、その腹へと軽めの一撃を入れた白。
浅い一撃の為、ダメージはそう負わなかったヴォルクだったが、赤黒く輝いた刃に応える様に着地したヴォルクへと追撃の一撃を放つ白。
「ギャルルルゥゥゥ‼︎」
力を込めた一撃は、其れだけでヴォルクの身を真っ二つに斬り裂き、絶命の絶叫をあげたヴォルク。
「続けて行くぞ!」
しかし、白はそんな絶叫にも反応を見せず、もう1匹のヴォルクへと駆け出し、呼応する様に跳びかかって来たヴォルクへと、血に飢えた刃の突き一閃を繰り出し、再びヴォルクを地獄の底へと叩き落とした。
「こっちも片付きました」
消し炭になったヴォルクの遺体を指し示す結。
「じゃあ、彼奴等ですね」
「ええ。魔法が解ける前にやってしまいましょう」
「お姉様」
「行きますよ、グレイス?」
「はい!」
三人で頷き合う白達。
その眼は有らぬ方へと牙を剥くヴォルク達へと向かったのだった。




