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「そろそろか」
やっとという気持ちを抑え込み、もうじきに迫った教典があるフロアに、一旦休憩に入る白。
回復薬などの消耗品の確認を行い、減っていたSPをSP回復薬で補充する。
「いよいよ『ドラコーン』か・・・」
ドラコーンとはこのヴゥルカーンで教典を護っているモンスターであり、第一位に属するモンスターなのだった。
「第一位の中では最下層だが、いよいよか」
此処まで白の戦ってきたモンスターは第三位が最高であり、そこから2ランクも上のモンスターとの初戦闘に、灼熱地獄でありながら身震いを感じた白。
その戦闘を前に設定していたドラコーンの攻撃方法を確認する。
「確か一番強力な攻撃は噛み砕きで、一番厄介なのは火炎ブレスか」
その他には巨大を生かした体当たりや、攻撃範囲はそう広くないが、鋭い鉤爪による引っ掻きもあった。
「まずはプリチジェーニイで動きを遅くして、ガリャツィナーツィヤも通用すれば良いが」
デバフ系魔法に対しては、第二位以上のモンスターには抗体を持つ者も多く、ドラコーンに関しては行動制御のプリチジェーニイは通用するが、幻惑系のガリャツィナーツィヤに対しては強い抗体を持っていたのだった。
「一応双魔で行くか」
記憶の書庫の鍵を持つ者のスキルでは、使用した魔法の成功率には記述などは無く、取り敢えずは両方とも開幕に使用する事にした白。
「ウプイーリも万全だな」
黒刃に刃こぼれなど無い事を確認し、腰の回復薬を一撫でし、最終確認を終える。
「よし、行くか・・・」
覚悟を決めドラコーンの待つフロアの扉に手を掛けた白。
重いその扉を開くと直ぐに悠然と地面に横たわるドラコーンが目に飛び込んで来て・・・。
「グアオォォォン‼︎」
直ぐに白の存在に気付き、邂逅の咆哮を上げたのだった。
「っ!」
咆哮の勢いそのままに、上体を起こしたドラコーン。
その高さは10メートル程あり、白にはその頭が巨大に見えていた。
「これだけ距離があってこの馬鹿デカさかよ」
相手との体躯の差に悪態をついた白。
詠唱を結びながらも、ドラコーンの初手に注意を払う。
「ガッッッ!」
するとその口元に炎を溜め始めたドラコーン。
溜まった炎を直ぐに白へと放って来たのだった。
「喰らうか!」
薙ぎ払われた火炎のブレスをバックステップで躱した白。
「暑ぅ」
地面に炎の海が出来、フロアの温度が一気に上がると、白は頬を伝う熱風を一撫で、やがて結ばれた詠唱と共に・・・。
「プリチジェーニイ!ガリャツィナーツィヤだ!」
双魔をドラコーンへと放った白。
プリチジェーニイは効いた様だったが、ガリャツィナーツィヤはというと・・・。
「ガオーーーン!」
「っ!」
その巨体には似合わぬ俊敏な動きで鋭い牙による噛み砕きを放って来たドラコーンに、白はサイドステップで其れを躱す。
「避けきれない事はないな」
プリチジェーニイの効果に自信を覗かせたのも一瞬。
自身の横に来ていたドラコーンの頭に、ウプイーリによる一撃を加え、そのスキル効果を発動させる。
「今度はこっちから行くぞ!」
再び上体を起こしたドラコーンとの距離を、スコーラスチの力で一瞬で詰めた白。
「数撃っていかなきゃ話にならないからな」
連続で妖しげに赤黒く輝く刃の斬撃をその巨体に放つ。
「グアオォォォン!」
そんな白の攻撃もどこ吹く風といった様相で、間合いの詰まった白に、その巨体を活かした体当たりを放ったドラコーン。
「そんな大ぶり喰らうか!」
其れを疾風の速さで躱した白は、刹那の間でドラコーンの頭へと跳び掛かり、その眉間に斬撃を喰らわす。
「ガッッッ!」
「ちっ!」
そんな白にドラコーンは、その口元に再び火炎のブレスを溜め・・・。
「オオオォォォン‼︎」
放つが、スコーラスチの力により、寸前で其れを躱した白。
「あぶねー」
一瞬でも遅れれば黒炭になっていたであろう未来を見て、安堵の一息を吐いた白。
「それじゃあ、次はこっちだ!」
吐いた息もそのままに、即座にドラコーンのその巨体に新たな斬り傷を入れる。
「なかなか倒れないな」
無尽蔵にも思われたドラコーンの体力だったが、白の攻撃は確かに効いており、終わりの刻は突如としてやってきた。
「ガッッッ!」
再び白に向かいドラコーンが火炎のブレスを放とうと口元に炎を溜めた・・・、刹那だった。
「今だ‼︎」
自身へと向いたドラコーンの頭に、首元目掛けて渾身の一撃を放った白。
「ギャアァァァオオオォォォン‼︎」
口元に溜めた炎を放つ事叶わず、ウプイーリによる斬撃で頭を斬り落とされたドラコーン。
フロア中を揺らす様な絶命の咆哮を上げ、その巨大は倒れたのだった。
「終わったか・・・」
フロアに斬り落とされたドラコーンの頭を見ながら一息吐いた白。
「はぁはぁはぁ・・・」
緊張感から解放され激しく肩で息をすると・・・。
「消えていく・・・」
フロアに倒れていたドラコーンの巨体はやがて光の中へ消えていき、その後には一冊の本が残る。
「これがズヴェーリ教の教典か」
炎の海の中からその教典を手に取り軽く捲ってみた白。
「間違いなさそうだな」
その中には軽く読むには難しい内容が記されており、其れが目当ての品である事を確信した白。
「やっと戻れるな・・・」
炎の海の中へ沈まぬ様に、足早にその場を後にしたのだった。




