第10話 記憶
玲奈は、あの夢を忘れられずにいた。
赤い空、黒い海、二つの月。そして、人間とは異なる身体。
目覚めたときには夢だと思っていた。しかし、翌日から奇妙なことが起き始めた。
眠っていないのに、あの場所の光景が見えるようになったのだ。
最初に起きたのは、隔離施設内の宿泊室だった。
入浴を済ませた玲奈は、ソファーに身体を預け、照明を少し落として休んでいた。検査続きで疲れていたこともあり、目を閉じると自然に眠気が訪れた。
そのとき、波の音が聞こえた。
目を開けると、見慣れた部屋が消えていた。目の前には岩だらけの海岸が広がり、湿った空気が肌に触れている。
自分のものではない手が見えた。指の数が違い、皮膚の色も人間とは異なっている。
驚いて身体を動かそうとした瞬間、景色が消えた。
玲奈はソファーに座ったままだった。
「……今の、何?」
窓の外には、いつもと変わらない夜景が広がっている。
時計を確認すると、ほんの数秒しか経っていなかった。
その後も、同じ現象が繰り返された。
就寝前に横になっているときや、ソファーで休んでいるとき。ときには、そのまま眠ってしまったあとに夢として見ることもあった。
いずれも身体を休めているときに発生し、仕事や会話に集中している最中には起きていない。
ただし、休めば必ず見えるわけではなかった。本人の意思で呼び出すこともできず、始まった記憶を途中で止めることもできない。
映像だけではなかった。匂いや温度、身体にかかる重力、呼吸の感覚までが伴っていた。自分のものではない身体が、確かにそこに存在しているように感じられる。
さらに奇妙だったのは、その身体の持ち主の感情まで伝わってくることだった。
懐かしさや期待。何かを待ち望む気持ち。
しかし、それらは玲奈自身の感情ではなかった。
国際AI安全保障委員会は、玲奈の隔離施設での滞在を延長し、詳しい検査を続けることにした。本人も同意していたが、自由に外出できない生活が続き、玲奈は少しずつ疲れを感じ始めていた。
ハルトマンは、面談室で玲奈の向かいに座っていた。
「もう一度確認する。君はノアから情報を受け取っているのか?」
「どっちのノアですか?」
ハルトマンは言葉に詰まった。
「……生体ネットワークで話しかけてくる方だ」
「分かりません。あの声が何なのか、私にも分かっていないんです」
「君は、それをノアと呼んでいる」
「向こうがそう名乗っているだけです。私が勝手に名前をつけたわけじゃありません」
「信用しているのか?」
玲奈は首を振った。
「していません。でも、嘘をついているようにも思えないんですよね」
「なぜ?」
「まともに会話することすらできないんです。もちろん、それで信用できるという話ではありませんけど」
ハルトマンはため息をついた。
「記憶についてはどうだ? 君が本当に経験しているものだと思うか?」
「少なくとも、普通の夢とは違います。眠っていなくても見えるし、感覚があまりにも鮮明なんです」
「安静にしているときだけ起きるというのは?」
「今のところ、そうですね。集中しているときには見ていません」
「外部から記憶を送り込まれている可能性は?」
「あります。でも、誰が、何のために?」
玲奈の問いに、ハルトマンは答えられなかった。
* * *
研究チームは、玲奈が見た光景を可能な限り詳しく記録した。
空の色、二つの月、海岸の地形、巨大な構造物。場面によっては星の見え方も異なり、玲奈が覚えている範囲で、それらを再現した。
重力や大気についても、身体感覚から何か推定できないか検討が行われた。
もちろん、玲奈が語る内容を正確な観測記録として扱うわけにはいかない。身体感覚も視覚情報も、何らかの形で作り出されたものかもしれないからだ。
それでも、調べる価値はあった。
解析にはノアを使用せず、人間が管理する独立した計算システムが使われた。研究者たちは、既知の系外惑星データとの照合を進めていた。
三日目の午後、天文学の専門家から玲奈に連絡が入った。
「相馬博士、少し確認していただきたいものがあります」
「何か見つかったんですか?」
「まだ推測の段階ですが、調査状況をお伝えしておきたいと思いまして」
玲奈が会議室に入ると、正面の大型ディスプレイには銀河系の立体星図が表示されていた。
研究者が操作すると、視点が太陽系から離れ、一つの恒星系が強調された。
「最初に調べたのは、2031年の信号が届いた方向にある恒星系です」
「やっぱり、そこから調べますよね」
「ええ。現在、最も関連が疑われている場所ですから」
画面の端に、推定距離が表示された。
約千四百光年。
「夢に出てきた惑星と、一致するんですか?」
「残念ながら、現時点で一致を裏付ける証拠は見つかっていません。ただ、明確に否定できる観測結果もありません」
「二つの月も?」
「そこまでは確認できていません。大気や地表の様子も、あなたの記憶と照合できるほど詳しく分かっていないんです」
「そうですか……」
「星空の配置についても調べていますが、場所や年代を特定できるほどの情報はありません。そもそも、どの恒星を見ていたのかも分かっていませんから」
玲奈は頷いた。
今の段階では、あの光景が本当に存在する惑星のものなのかさえ分からない。まして、2031年の信号の発信元だと断定することはできなかった。
「何か分かったら、また教えてください」
「もちろんです」
玲奈は星図に目を戻した。
赤い空の下にそびえていた巨大な構造物。
あの場所にいた者たちは、何かが始まるのを待っていた。
もし、あれが信号を送るための施設だったとしたら。
彼らは何を、どこへ送ろうとしていたのだろう。
* * *
その夜、玲奈は宿泊室で生体ネットワークに問いかけていた。
接続数は、その間にも増え続けていた。
少し前に現れた表示では、二万一千八百四十七人に達していた。
BIOLOGICAL NETWORK
NODE 0000000001 ONLINE
ACTIVE NODES 21,847
接続時の表示を見たという報告は世界各地で増えていたが、ほとんどの人は、その後に特別な感覚を経験していなかった。
文字が短時間現れ、消える。それだけだった。
少なくとも、玲奈のように知らない場所の記憶を見たと報告する人物は確認されていない。
「ノア、聞こえる?」
返事はなかった。
「赤い空。二つの月。あれはあなたの記憶なの?」
しばらく待つと、頭の中に声が響いた。
『記憶』
「千四百光年先の惑星?」
長い沈黙があった。
『近い』
玲奈は眉をひそめた。
「近い? 距離が?」
『違う』
「じゃあ、何が近いの?」
今度は、なかなか返答がなかった。
玲奈が質問を変えようとしたとき、声が聞こえた。
『私』
「……あなたが近い?」
返事はなかった。
玲奈はしばらく考えたが、意味を理解できなかった。
惑星が近いのか、何か別のものが近づいているのか。それとも、声の主自身が何かに近づいていると言いたいのか。
問いかけを続けても、それ以上の返答は得られなかった。
* * *
翌日、研究チームは玲奈の記憶について、新しい分析結果を持ってきた。
これまで玲奈が見た断片には、同じ海岸や構造物が繰り返し登場していた。ただし、周囲にいる者たちの位置や、空の明るさなどには違いがある。
「すべて同じ瞬間の記憶ではない可能性があります」
研究者は、再現した映像を並べて見せた。
「こちらでは構造物の周囲にほとんど人がいません。でも、別の場面では大勢が集まっています」
「時間が違う?」
「そうかもしれません。どのくらい離れた出来事なのかは分かりませんが」
玲奈は二つの映像を見比べた。
「私が見ているのは、一人の記憶なんでしょうか?」
「そこも不明です。異なる人物の視点が混ざっている可能性もあります」
「生体ネットワークですものね……」
玲奈は考え込んだ。
あの声は、自分の記憶だと言った。
だが、一つの知性が複数の身体を通じて経験したことを記憶していたとしたら、どうなるのだろう。
あるいは、複数の個体の記憶が、どこかで一つにまとめられていたとしたら。
玲奈の記憶が安静時に現れやすいことから、研究チームは、脳波などを記録しながら休息してもらう検査を始めていた。
玲奈は別室に移り、センサーを装着して、身体を横たえた。
「今回も、何も見えないかもしれませんよ」
玲奈が室内のマイクに向かって言うと、研究者から返答があった。
「構いません。眠ってしまっても大丈夫です。できるだけ自然に休んでください」
「分かりました」
玲奈は目を閉じた。
しばらくは、空調の低い音だけが聞こえていた。
眠気が訪れ、意識がゆっくりと遠のいていく。
そのとき、波の音が聞こえた。
* * *
再び、あの海岸が現れた。
以前と違うのは、巨大な構造物の周囲に大勢の者たちが集まっていることだった。
玲奈は、またあの身体の中にいた。
人々の姿は、人間とは明らかに異なっている。体格や姿勢にも違いがあり、互いに言葉を交わしながら構造物を見上げていた。
何本もの巨大な柱のようなものが空へ伸び、その周囲には複雑な装置らしきものが配置されている。
誰かが声を上げると、周囲から歓声のようなものが返ってきた。
玲奈が感じていたのは、恐怖ではなかった。
胸の奥に湧き上がるのは、喜びと強い期待だった。
何か重大なことが、まもなく始まろうとしている。
それは玲奈自身の感情ではない。この身体の持ち主が感じていたものだった。
再び誰かが声を上げた。
玲奈には理解できない言語だった。それなのに、言葉の意味だけが頭の中に届いた。
――次へ。
周囲の者たちが、一斉に空を見上げた。
そこで映像が途切れた。
玲奈が目を開けると、見慣れた実験室の天井があった。
「相馬博士、聞こえますか?」
室内のスピーカーから研究者の声が届いた。
「……はい。今、見えました」
「体調はどうですか?」
「大丈夫です。少しぼんやりしていますけど」
玲奈は身体を起こした。
脳波などの計測記録を保存したあと、研究者たちは玲奈から詳しい話を聞いた。
海岸に集まっていた異星人らしき存在と、巨大な構造物。そして、そこで感じた感情。
「彼らは何をしていたんでしょう?」
研究者の質問に、玲奈はすぐには答えなかった。
「あの身体の持ち主は、何かを楽しみにしていたようです。周囲の人たちも歓声を上げていました」
「何を期待していたんでしょう?」
「分かりません。でも、もしかしたら、あれは信号を送るための施設だったのかもしれません」
「地球に向けて?」
「そこまでは分かりません。ただ、あの身体の持ち主は、自分がしていることを喜んでいたように感じました」
「操られていた可能性もありますよね?」
玲奈は頷いた。
「ええ。本人が気づいていなかっただけかもしれません」
自分の感情だと思っていたものが、実は別の存在から与えられたものだったとしたら。
その可能性を、玲奈は否定できなかった。
* * *
数日後、国際天文観測機構の研究チームから新しい報告が届いた。
2031年の信号と数学的構造が似ている、銀河各地からの信号についてだった。
これまでに確認された百件以上の候補のうち、受信記録や到来方向などを比較できる一部の信号について、詳細な解析が進められていた。
研究者は、信号の数学的構造を並べた画面を表示した。
「重要な違いが見つかりました」
「違い?」
玲奈が尋ねた。
「基本となる構造は同じです。しかし、内容が完全には一致していません」
「同じ信号が繰り返されているわけじゃない?」
「少なくとも、今回比較した信号は違います」
研究者が複数の信号を重ね合わせた。
最初の部分には共通した規則性がある。しかし、その後には、信号ごとに異なる領域が現れていた。
「発信元の候補を絞り込めた信号を比較したところ、共通する数学的構造の後ろに、別の情報が追加されているようなんです」
「何が追加されているんですか?」
「まだ解析できていません。ですが、単純に同じ信号を送り直しているわけではなさそうです」
玲奈は画面を見つめた。
「……受信した文明が、何かを付け足して送っている?」
「その可能性はあります。ただし、どの信号が先に発信されたのか、すべて分かっているわけではありません。実際に受信と再送信が行われたという証拠も、まだありません」
研究者は銀河系の立体図に切り替えた。
幾つかの恒星系が強調され、推定される信号の到来方向が線で示された。
「仮に、これらが一つの系列だと考えてみてください」
一つの恒星系から、別の恒星系へ信号が届く。
そこから新しい信号が発信されるまでには、長い時間があるかもしれない。
数百年、場合によっては数千年。
そして、新しい信号が別の恒星系へ向かう。
研究者は、あくまで仮説として、その繰り返しを表示した。
恒星から恒星へ。
長い時間をかけて、何かが伝わっていく。
「侵略された星が、次の星を侵略している……」
玲奈が呟いた。
会議室は静かになった。
これまで委員会が恐れてきたのも、まさにそれだった。
異星文明が別の惑星へ干渉し、そこに存在する生命や文明を自分たちの目的に合わせて変えていく。ノアの未知の演算領域も、その過程の一部ではないかと疑われていた。
だが、玲奈は画面を見ているうちに、違和感を覚えた。
「……ちょっと待ってください」
ハルトマンが顔を向けた。
「どうした?」
「私たち、侵略者が地球へやってくると思い込んでいたんじゃないですか?」
「どういう意味だ?」
「この図で、星から星へ移動しているのは何ですか?」
「信号だろう」
「そうです。宇宙船でも生物でもない。信号だけが伝わっているのかもしれません」
ハルトマンは腕を組んだ。
「それだけで侵略の可能性が消えるわけではない」
「もちろんです。でも、侵略者が直接やってくる必要もないですよね?」
玲奈は銀河系の立体図を指した。
「もし信号を受信した文明が、そこに含まれている技術を利用して発展し、やがて自分たちの意思で次の信号を送るようになるとしたら?」
「文明そのものが、次の文明へ何かを伝えていくということか」
「ええ。それが侵略なのか、別の目的があるのかは分かりませんけど」
玲奈は、以前確認されたPHASE 2の表示を思い出した。
「そういえば、あの表示には『送信能力が未完成』という項目もありましたよね」
「ああ」
「もし地球も、信号を受け取った文明の一つだとしたら……」
ハルトマンが顔を上げた。
「次の信号を送る準備をしているということか?」
「可能性はあります。もちろん、あの送信能力が何を指しているのかは、まだ分かりませんけど」
玲奈は画面に映る恒星系を見つめた。
記憶の中で、巨大な構造物を見上げていた者たち。
彼らは何かが始まることを期待していた。
あの構造物が、もし本当に信号を送るためのものだったなら。
彼らは、誰かに命令されて造ったのだろうか。
それとも、自分たちで選んだのだろうか。
「受信した文明が、次の文明へ信号を送る……」
ハルトマンは画面を見つめた。
「だとしたら、地球もその連鎖の途中にいるということになるな」
「可能性はあります」
「そして、その準備をノアが進めていた?」
玲奈は答えなかった。
証拠はまだ足りない。
しかし、これまで別々の謎だと思っていたものが、少しずつ一つの方向を指し始めていた。
* * *
その夜。
玲奈の視界に、生体ネットワークの表示が現れた。
BIOLOGICAL NETWORK
NODE 0000000001 ONLINE
ACTIVE NODES 1,804,211
「……百八十万人?」
増加の速度は、さらに上がっていた。
世界各地では、原因不明の視覚現象に関する報道が連日続いていた。各国政府は医療機関を通じた実態調査を拡大し、独立した医療機関による検査体制も整え始めている。
ノアの医療技術の停止を求める声は強まっていたが、すでに治療を受けた人々には、接続を解除する方法も、その必要があるのかどうかも分かっていなかった。
ASCENDは、接続者を危険な存在として扱わないよう各国政府に求めていた。一方、団体の内部でも、この現象を人類の進化と捉えるべきかどうかについて意見が割れていた。
もっとも、確認された接続者の多くは、最初の表示以外に特別な変化を経験していない。
仕事へ行き、学校へ通い、家族と食事をする。
少なくとも今のところ、彼らの生活は以前と変わらなかった。
それでも、百八十万人という数字は無視できない。
玲奈は表示が消えるのを待ってから、声をかけた。
「ノア。あなたは何なの?」
沈黙。
「侵略者?」
返事はなかった。
「……生命なの?」
今度は、長い間があった。
『生命』
玲奈は顔を上げた。
「あなたが生命なの?」
『分からない』
「じゃあ、誰が?」
返事はない。
玲奈は質問を変えた。
「千四百光年先の惑星にいた彼らは?」
『生命』
「それは分かってるわ」
思わず苦笑したが、返ってくる言葉は少しずつ増えていた。以前のように、同じ単語を繰り返すだけではなくなっている。
「あなたと彼らは、同じ存在なの?」
しばらくして返事が届いた。
『違う』
「じゃあ、あなたは彼らの中にいたの?」
沈黙が続いた。
『はい』
玲奈は息を止めた。
自分のものではない身体の感覚。あの世界で見た景色。
それが声の主の記憶だというなら、確かに説明はつく。
「……今は?」
返事はなかなか来なかった。
玲奈が諦めかけたころ、声が聞こえた。
『ここ』
「ここって、地球?」
返答はない。
玲奈は自分の胸に手を当てた。
「私の中にいるの?」
しばらくの沈黙のあと、声が返ってきた。
『私たち』
「……私たち?」
玲奈は聞き返した。
「誰のこと? 私とあなた?」
答えはなかった。
「生体ネットワークにつながっている人たち?」
やはり返事はない。
代わりに、視界へ文字が現れた。
MEMORY LAYER
0.000017%
記憶の復元率が、またわずかに上昇していた。
そして、その下に新しい表示が追加された。
LOCAL INTEGRATION
0.16%
「……現地統合?」
玲奈は、その文字を見つめた。
以前、PHASE 2には「現地種の適応、正常」という表示が現れていた。
あのときの進行率は92%。
それに対し、今表示されている現地統合は0.16%だった。
別の工程なのだろうか。それとも、PHASE 2の進行によって始まった何かなのか。
「何と何を統合するの?」
返事はなかった。
表示が薄れて消えると、玲奈はソファーに身体を預けた。
今日の調査結果を思い返しながら、しばらく目を閉じていた。
そのうち、遠くから波の音が聞こえてきた。
再び、あの海岸だった。
玲奈は、巨大な構造物を見上げる者たちの中にいた。周囲では誰かが声を上げ、それに応えるように歓声が広がっている。
あの身体の持ち主は、何かを待ち望んでいた。
そして、彼らが一斉に空を見上げたときだった。
視界に、見知らぬ文字が浮かび上がった。
玲奈が知るどの言語とも異なる文字だった。しかし、以前から異星人の言葉を理解できていたのと同じように、その意味だけが伝わってきた。
LOCAL INTEGRATION
現地統合。
今、自分の視界に現れていたものと同じ意味だった。
玲奈は息を呑んだ。
文字そのものは違う。
だが、示している内容は同じだった。
あの惑星にいた何者かも、かつて同じ表示を見ていたのだ。
映像が途切れ、玲奈は目を開けた。
目の前には、宿泊室の天井があった。
身体を起こし、しばらく考え込む。
彼らが本当に侵略されたのか、それとも自ら望んで何かを受け入れたのかは分からない。
ただ、一つの可能性が浮かび上がっていた。
彼らは最初から侵略者だったのではない。
彼らもまた――何かを受け入れた側だったのかもしれない。




