↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
67/72

レッジ村②

魔族の襲撃は、僕らが村に到着してから3日後の夜間だった。


「敵襲!」


村の鐘が、けたたましく鳴らされる。


「戦いに参加できない者は、村の奥に避難を!

戦える人たちは僕らについてきてください」


僕らは、魔族の集まっている正門前に集合した。


「初の魔族退治ね。父さんから嫌というほど手ほどきも受けたし、腕が鳴るわ」


「みなさんの回復はお任せを。絶対に、死者は出しません」


「こちらの世界の魔族がどれほどの力を持っているのか、楽しみじゃ」


3人とも、決意は固まっているようだ。

僕らは、村の兵士とともに正門から出て魔族に相対する。

カイとそのほかの村人は、高台から弓を構えて待機している。


「この村を襲う理由はなんだ!」


僕は声を張り上げて問う。

群衆をかき分けて、ひと際大きな翼をもつ魔族が前に出た。


「人間を狩るのに理由なんているか。ただ、邪魔な羽虫を払うだけよ」


よし、あいつがリーダーか。

あいつを落とせば統率が乱れ、戦局は混乱するだろう。

僕らは作戦通りに戦闘態勢をとる。


まずは弓矢隊の攻撃。

1人でも数を減らしたい。

魔族の装備はしっかりしているが、それでも5人ほどは倒せた。

次の弓をつがえる間に、僕とリリスで斬りかかる。


「カイ!」


僕が叫ぶと、カイは作戦通りに動き始めた。


「スキル・錬成!」


僕らとリーダーを囲むように、壁ができる。

これで一騎打ちの構図に持ち込めた。

残りはラーナの魔法と村の兵士、弓隊に狩ってもらう。

キキラがいるから、ラーナに被害は及ばないだろう。

エリアヒールもこの局面には相性がよい。



≫

「こざかしい手を使うな。人間」


「あいにく、僕は自分の弱さには自信があるからね。

力比べなんてごめんだよ」


「わたしは上等だけどね」


そう言って、リリスが斬りかかる。

魔族も、大剣を取り出し応戦する。

お互い譲らない攻防が続いたが、徐々にリリスが相手を押し始めた。

ゴウに習った先読みが、効果を発揮しているのだろう。

敵の剣筋をかわすタイミングが、段々早くなってきている。

攻撃の当たらない魔族からは、いら立ちが感じられる。


「人間風情に使うのは癪だが。魔強化!」


魔族の身体が紫色に光り、筋肉が盛り上がる。

身体強化の類か。


「行くぞ!」


リリスが防御するが、そのまま押し切られていく。

単純な力比べでは分が悪いようだ。

剣筋の速度も上がっていて、先読みが通じなくなってきている。

フェイントからの一発をかわし損ねたリリスは、足に一本もらい、鮮血が噴出している。


「威勢がいいのは最初だけか。所詮、人間ごときが高貴な魔族に勝てるはずもなかろう」


魔族がリリスを見下ろしている。

機動力を失ったリリスを、取るに足らない敵と判断したのだろう。


「......キョウ、そろそろいいわね?」


僕は外の音に耳を傾ける。

カイの叫ぶ声が聞こえる。

どうやら、魔族が防壁を乗り越えて高台に到着したようだ。

これ以上、戦闘を長引かせるのはまずい


「ああ。敵の実力は測れたし、戦況的にもタイミングは問題ない」


「ここからは、私も全力解禁よ!」


リリスが空中歩行で飛び回りながら、魔族の背後に回り込む。


「何だ、この動きは!」


魔族は動揺を隠せない。


「スキル・剣舞 伍式!」


6閃が魔族を襲う。

背中から鮮血が舞う。


「ぐがあ!この小娘が!」


魔族が力任せに大剣を振るう。

しかし、空中歩行を解禁したリリスには全く届かない。


今度は前面に回り込んだリリスが、一呼吸の間に2撃を与える。

魔族は膝をついた。


「こんな小娘に高貴なオレが膝をつかされるなど、あってはならない」


「失礼ね。小娘じゃなくて、レディーよ」


リリスは軽口を叩きながらも、しっかりと注意深く構えを解かない。


突然、魔族が翼をはためかせた。

飛んで逃げるつもりだ。

僕はアサルトライフルを乱射する。


翼を打ち抜かれた魔族が、派手に落下する。

顔には屈辱の色がにじんでいる。


再びリリスと相対する。

魔族は再び身体強化の魔法をかけ、リリスに瞬足の突きを繰り出す。

リリスは先読みを頼りに、敵の突きを紙一重でかわす。

いや、完全には避けなかった。

刃が皮膚をかすめるのも構わず、敵の懐へ踏み込む。

そして、すれ違いざまに胴体を深々と切り裂いた。

魔族は血反吐を吐きながら、膝から崩れ落ちた。



≫

「......殺せ」


「その前に、村を襲った理由をおしえろ」


「......魔人様の言いつけだ。お前たちの通る村を襲撃しろとな。

それ以上は言わん」


魔人?

なぜ魔族の上位存在が、僕らのことなんかを?


リリスは、居合い斬りで魔族の首をはねた。


「カイ! 終わったよ!」


上から見ていたカイが土壁を解除する。


キキラ、ラーナ、そして村の兵士によって、残敵は30人程度に減っている。


僕は魔族の首を持ち上げて言う。


「お前たちの大将は討ち取った! ここからは殲滅戦だ」


魔族の間に動揺が走る。

その隙を見逃さずにラーナが魔法を放つ。


「スキル・氷結」


魔族の足が凍り付き、地面に縫い付けられる。

それを弓が貫く。


動けるようになった敵は、破れかぶれに突進してくるが、リリスとキキラに斬り刻まれる。

僕は、アサルトライフルで残った敵を正確に射抜いていく。


初めての魔族との戦いは、完勝に終わった。

リーダーを引きはがして統率を崩す、という作戦が見事にはまった。

こちらの被害は想定より軽かった。

軽傷は多数。

重傷を負った者もいるが、キキラがヒールをしている。

死人は出ていないようで、安堵のため息をもらす。



≫

一夜明け、村の後片付けがひと段落したところで、僕たちは次の目的地に旅立つことにした。


「この度は誠にありがとうございました。これで、平穏な暮らしを取り戻すことができます」


「君らの力はすごかった。作戦が功を奏したとしても、その強さがなければ達成できなかっただろう」


「僕らもいい経験になりました。

ところで、カイさん、錬金術とはどのような構造なのですか?」


僕とカイは論議をかわし始める。


「あーあ。また新しいおもちゃ見つけちゃった」


「キョウさんは本当におもしろい方ですね。昨日の戦闘時とはまるで別人のようです」


「村長、茶菓子を持ってこい」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。