レッジ村①
僕らは、神域のコンパスの指し示す北の方角にジープを走らせた。
10日ほど走ったところで、村が見えてきた。
木造の建物が多く、どこにでもある村のようだ。
しかし、異様なのはその防壁。
木で出来た壁の外側には、赤褐色の土壁が重ねられている。
叩いてみるが、鉄のように固い。
かなり強固に守りを固めているということは、襲撃された過去があるのだろう。
僕らは、村の門をくぐった。
そこに活気はなかった。
村人たちは疲弊し、道端に転がっている者もいる。
水が飲みたいと泣き叫ぶ子供。
傷が痛むのか、身をよじり転がる男性。
目に深いくまのできた、武装した兵士。
僕らは、急いで準備してきた食料と水を分け与える。
負傷していたものは、キキラがヒールをかけていく。
そうこうしていると、村長とおもわしき人物が奥から現れた。
「旅のお方、お助けいただき、誠にありがとうございます」
「困っている人々を助けるのは、当然のことですから。
しかし、何があったんですか?」
村長は語って聞かせてくれた。
元々はのどかな農村であったこと。
1か月前から魔族が周辺に出没し、人々が傷つき、川へ水を汲みに行くのも難しくなったこと。
僕は村の各所にある井戸に、水を貯蓄した魔石を投げ入れていく。
これで、当面の間の水の問題は解決する。
問題は魔族か。
≫
魔族。
僕も本で読んだことしかない。
人間に似ていて、非なる者。
外見はほぼ人間と変わらないが、背中に黒い翼が生えているのが大きな特徴だ。
翼の大きさでその格がわかり、強さの指標となっているそうだ。
魔族が、昔から人間と戦争をしているのは知っている。
父さんはその戦争で功績をあげ、ラピッド領の領主となっている。
しかし、魔族との主戦場は遠く離れた場所のはずだ。
なぜこんな何もない村に。
思案しているとある、青年が会話に割って入ってきた。
「村長、破損していた外壁の修理、終わったよ」
「おお、いつもすまんな、カイよ」
「こちらは、旅のご一行だ。我々を助けてくれている」
「恩にきります。私は、カイ。錬金術師をやっています」
20歳ほどだろうか。
細身だが、しっかりと筋肉のついた男性。
眼鏡をかけ、その眼からは知性を感じられる。
あの特殊な防壁は、錬金術によるものだったのか。
魔道具好きとして、錬金術にも食指が伸びる。
だが、それよりもまずやることがある。
「魔族は退治できたのですか?」
≫
村長の話によると、魔族は50人ほどで、武装して村を繰り返し襲っているらしい。
カイの防壁は頑丈で、魔族も思ったように手が出せず、苦戦しているようだ。
しかし、籠城戦では村がもたない。
現に、水と食料が底をつきかけている。
「退治するしかないですね」
魔物とは山ほど戦ってきた。
しかし、知恵のある魔族との戦いは未知数だ。
僕らの力が、どこまで通用するかもわからない。
それでも、この村の人々を放っておけない。
それなら、万全の準備をして立ち向かうだけだ。
幸い、こちらから手を出さずとも、相手から向かってきてくれる。
「それなら、私も戦いにでます。
スキルは戦闘向きではないですが、みなさんの補助なら任せてください」
カイは地面に手をかざした。
「スキル・錬成」
土が盛り上がり、僕を模した人形が出来上がった。
叩いてみると防壁と同じ、硬い音がした。
「私の得意分野は、土の錬成です。
これを作戦に入れていただければ」
カイの目に迷いはない。
僕らは、これまでの魔族の襲撃から対策を考え、作戦を立てた。
今回は、カイに活躍してもらうことになりそうだ。
リリス、キキラ、ラーナも参加し、意見を交わしていく。
今回の戦闘のカギはカイになりそうだ。
決行は、次の戦いの日。
それまでに回復できたものには、弓で村内から援護してもらう。
僕らは、粛々と準備を進めた。




