ネオポリス編1 新たな足②
僕らのダンジョン再攻略には、10日かかった。
ボス戦は楽勝であったが、アニトのダンジョンは移動に時間がかかる。
それでも、前回に比べたら雲泥の差だ。
ジゼットに依頼した新しい魔道具ができるまで、あと10日ほど。
僕らは、久しぶりにクエストを受けて時間をつぶすことにした。
≫
冒険者ギルドは、相変わらず活気に満ちている。
クエストについて論議する者。
前世の話を肴に酒を飲み交わす者。
クエストボードをチェックする。
緊急、と書かれたクエストが目に入る。
10歳と8歳の幼い兄弟が、山で行方不明になっているらしい。
消息を絶ってから1週間。
例え滑落などでケガを負っていなくても、生き延びられているかギリギリのラインだ。
僕らは迷うことなくそのクエストを受注し、件の山脈に向かった。
山は悠然と構えており、故郷の魔竜山脈を想起させる。
最初はなだらかな上り坂だったが、途中から木々がうっそうと生え、所々崖がのぞき始めた。
山でよく遊んでいたからわかるが、この山の中腹より上はかなり危険だ。
ふとした油断で滑落する恐れがある。
兄弟は、薬草の採取に来ていたらしい。
毒消草。
この植物は、じめじめとした湿気のあるところに生えていることが多い。
山中を捜索しながら、条件に合った場所を探す。
「ラーナの探知魔法でなんとかならないの?」
「前世が大賢者とは言え、今はまだ初期スキルしか使えん。
有効範囲はせいぜい100mじゃな。
当たりをつけなければ、ポイントの無駄遣いになる」
「魔法も意外とめんどくさいのね。
もっと何でもできると思ってたわ」
「たしかに、この世界の魔法は、他のスキルに比べて強力じゃ。
しかし、ポイント効率が著しく悪い。
ポイント消費が軽ければ、魔法使いでパーティーを組むだけで大抵のダンジョンはクリアできてしまう。
この世界の神は、その塩梅を加味するほど、よっぽど細かい性格なんじゃろ」
≫
僕らは半日ほど歩き回り、木々の合間に広場を見つけた。
湿気を帯びた地面に、毒消草が群生している。
よく見ると、乾いた足跡が見える。
ここだ。
「ラーナ」
「スキル・探知」
ラーナから、円周上に波紋が広がる。
「......見つけた。崖下じゃ」
広場の奥にある崖下を見る。
2人の人影が見える。
比較的なだらかとはいえ、徒歩で降りるのは二次遭難の危険がある。
ロープを持ってくればよかった。
降りる手段を考えていると、ラーナが杖を構えた。
「スキル・氷結」
崖沿いに氷の階段ができあがっていく。
さすがラーナ、応用が利く。
僕らは急いで階段を下った。
≫
そこにいたのは、やはり遭難した兄弟であった。
兄らしき人物は片足が折れ、衰弱している。
弟は、兄を抱きしめたまま気絶している。
「スキル・ヒール」
キキラが二人を癒す。
しばしの時間が経って、2人は目を覚ました。
「......ここは?お兄さんたちは誰?」
兄が問いかけてくる。
「僕らは冒険者。君たちは、山で遭難していたんだ」
兄がしばらく考えた後、ハッと顔を上げる。
「そうだ、僕らは毒消草を取ろうとして、崖下に転落したんだ。
僕が足を折って動けなくて、でも弟1人じゃ山を降りられなくて。
どうしようかと迷っている内に気を失ってた」
キキラが、2人のためにおかゆを作っている。
「とりあえず水分をちゃんと飲んで、栄養を取ろう。たき火にあたって、身体をしっかり温めて。その後はご飯を食べようね」
兄弟はおかゆを食べ終わり、再び眠りについた。
最初に見たときよりも、格段に血色がよい。
兄を抱きしめていた弟。
山中は、この季節でも冷え込む。
ケガをした兄を温めるために、必死だったんだろう。
ふとアキを思い出す。
僕らにも、こんなことがあったっけ。
山でアキが足にケガをして、僕が背負って帰宅したことがある。
その時のアキは、珍しくしおらしかった。
懐かしい景色に思いを馳せる。
その日は僕らもそこで野営をし、翌日下山した。




