ネオポリス編1 新たな足①
僕らはラピッドを出発し、またアニトの街に戻ってきた。
目指すは、魔道具屋のジゼットの店だ。
ラピッド村とは趣の異なるアニトの大通りを抜け、店を目指す。
ジゼットは店内にはおらず、ガレージで作業をしていた。
「こんにちは、ジゼット」
「おや、キョウじゃないか。
とっくにアニトを離れたと思っていたよ。
ジープの不具合かい?」
「いえ、快適に走ってますよ。今のところ、不具合は1つもありません」
「さすが私の自信作。新しいデザインも考えているから、そのうちギルドを通して魔石採集の依頼をさせてもらうよ」
「わかりました。
ところで、今日はジゼットさんに相談があって来ました」
次の目的地が、ネオポリスであること。
そして、道中にヤンク湿原があるため移動手段に困っていること。
「湿原か。たしかにあそこは危険だね。
足場が悪いから戦闘になると厄介だし、水中から魔物が飛び出してくることもある。
野営をするにしても、場所が見つからずに歩きどおしなんてこともしょっちゅうさ」
「そこで、ジゼットさんに問題を解決してほしいんです」
僕は、事前の考えておいた設計図を机に広げる。
「ボートに車輪をつけて陸地では転がるようにして、水中では浮かぶ。
推進力は、風を使えたらと思っています。
ジープのように車輪が回転しても、水中は進めませんから」
「なるほど。よく考えてきたね。それなら、ここの素材は木じゃなくて......」
「また始まったわ」
「魔道具の話になると、とたんに周りが見えなくなりますね。
そこがまた魅力的なのですが」
「小難しいことは、坊主に任せておけばよいじゃろ」
3人は、街の散策にむかった。
≫
ジゼットと夜まで話し合いを続け、設計図は完成した。
資材調達を含めると、製作まで3週間かかるそうだ。
その間に何かできることがないか考える。
ふと、ある疑問が浮かんだ。
エクストラステージ。
ダンジョンの50階のさらに下。
あれは一度きりなのだろうか?
魔道具の作成までには時間がかかり、ダンジョン攻略をしても十分おつりがくる。
宿屋でみんなと合流し、明日からまたアニトのダンジョンに潜ることにした。
≫
10階、20階と順調に進んでいく。
ジープとラーナの収納魔法。
リリスの空中歩行に、キキラのウォーターランス。
道中の快適さと戦闘の安定感は、前回とは大違いだ。
想定よりも早いペースで攻略が進んでいく。
1週間ほどで、50階の扉の前にたどり着いた。
≫
扉を開ける。
そこにいたのは前回と同様に、やはりキマイラだった。
獅子の顔に鱗のある胴体。
翼が生え、尾は蛇だ。
前回は、空中を飛び回られて厄介だった。
今回は、飛び上がる前に終わらせたい。
リリスとキキラがキマイラに向かっていく。
初手はキキラ。
ウォーターランスがやすやすとキマイラのうろこを突き破る。
そのまま体内にウォータージャベリンをお見舞いする。
槍から水の刃が飛翔する。
これが体内で爆発したのだ。
キマイラは、内臓をぶちまけて苦しんでいる。
リリスが空中歩行でキマイラの頭上から降下する。
「スキル・剣舞 肆式!」
一息に重なった5閃が首を襲う。
あっけなく首が転がる。
そのまま胴体の核を壊し、戦闘が終わった。
「最初に戦った時は苦戦しましたが、今回は圧勝でしたね」
キキラがウォーターランスを撫でながら言う。
「私の剣舞のおかげよ!次は6閃重ねてみせるわ!」
リリスが意気込んでいる。
「わしと坊主の出番はなしか。楽ができてよいのう」
ラーナは地べたに座り込んでいる。
ここからが重要だ。
果たして、エクストラステージは現れるのか。
≫
キマイラの身体が霧散すると、宝箱が現れた。
今回は4つだ。
まずはラーナ。
やはり魔導書だった。
本に手をかざし内容を読み取る。
「ふむ。
特に重要なことは書かれていない。
前世でも触れたことのある知識を、現世の理に置き換えて再理解した形じゃな」
次はキキラ。
中からは木彫りのロザリオが出てきた。
てっきり魔石が出てくると思っていた僕は、拍子抜けした。
キキラがロザリオを見つめる。
「これは、キョウさんが身に着けておいてください」
「どうして?」
「効果はわかりませんが、私の直感がそう言うのです」
好意を無下にすることもない。
キキラは、わざわざ僕の首にロザリオをかけてくれた。
ふわりと大人の香りがした。
≫
次は僕とリリスだ。
声を合わせて同時に開ける。
「せーの!」
......空だ。
ほこり1つ入っていない。
宝箱が3つではなく、4つの時点で察してはいた。
しかし、中身がないとは世知辛い。
再攻略しても、エクストラステージが現れないことは証明された。
新しい武器での連携も確認できたし、それぞれレベルも上がった。
決して今回の攻略は無駄ではなかった。
僕らはダンジョンを後にした。




