アニト編12 滞在②
スミス工房を訪れてから3日後、僕らは武器を受け取りにいった。
「キョウ様、ご指定の品は出来上がっております。
特にこの槍。ウォーターランスはこれまで作った武器の中でも、間違いなく最高傑作の1つです!」
スミスは興奮を抑えられないようだ。
「早速試し突きを」
裏庭に案内される。
分厚い鋼鉄の甲冑を着た人形が立っている。
「キキラさん、まずは普通に突いてみてください」
槍が甲冑にめり込みひび割れを残したが、貫通するまではいかない。
「ここまでは想定通りです。では、槍に集中して水の流れるイメージを描いてください」
キキラが目を閉じる。
水の流れるイメージ......僕も考えてみたが、いまいちピンとこない。
キキラが目を開けた。
それと同時に、槍に水がらせん状にまとわりつく。
槍の先端まで水がいきわたったところで、槍を人形に突き立てる。
今度は甲冑をいとも簡単に貫き、人形ごと背面まで突き抜けた
「すごい威力ですね!」
珍しく、キキラの目が子供のような輝きに満ちている。
「流れる水流は岩をも削ります。それを凝縮したのです。
効果はこの人形が証明してくれました」
スミスは鼻息を荒くして語り続ける。
「真価はまだあります。
キキラさん、人形から離れてください。
今度は槍先に水を集めるイメージをし、それを一気に解き放ってください」
キキラは人形をにらみつけ、先端に十分水流が集まったところで槍を突いた。
ジャベリンの形をした3つの水流が、人形を再び貫いた。
しっかりと背面まで貫通していた。
「まさか、槍から水流が飛び出すとは......驚きです」
「さすがに長距離は飛ばせませんが、5mほどなら威力を保てます。
水流を槍状に圧縮して放つので、距離が離れるほど威力が落ちますが、
これで、安全策も含めて戦闘の選択肢が増えるかと」
スミスの言う通りだ。
今までは中距離の攻撃手段は、僕の拳銃とラーナの魔法しかなかった。
だが、これからはキキラも敵の攻撃が届かない距離からダメージが与えられる。
頭の中で、新しい戦略が目まぐるしく浮かぶ。
「お気に召していただけましたか?」
「もちろんです!家宝にさせていただきますわ」
戦闘により貢献でき、仲間の負担を減らし傷を少なくできる。
キキラは相当喜んでいた。
≫
次はロックの店だ。
「こんにちは、ロックさん。例の品はできあがった?」
「おう。こんなにまめな作業は普段しないから、神経を使ったぜ」
ロックが小さな指輪を手渡してくる。
「無理を言ってすみません。お代ははずみますから」
「そうこなくっちゃ!徹夜した甲斐があったぜ」
「キョウ、その指輪は何?」
「今見せてあげる」
指輪を起動する。
格子状に結界が展開される。
「紅桜だと斬れちゃうかもしれないから、適当な剣で打ち込んでみて」
リリスは転がっていた鉄製の剣を拾い、全力で振りぬいた。
ガンッという音を立てて剣が弾かれる。
「すごっ!これ、スミス工房で買った指輪でしょ?
弱い結界を張るやつ。どうやったらこんな強度になるわけ?」
「そいつにはな、元々の結界の上にアイアンスパイダーの糸を編み込んだ縄を使ってるんだ。
引っ張ってテンションをかけながら編み込んだから、
よっぽどのことがなきゃ切れないぜ。それに...」
僕はもう一度指輪に念じた。
次は、前方に一つの線が現れた。
「糸で再現できるものなら、作れる形も自由自在。要は使い方次第だな」
ロックが得意顔をしている。
「キキラ、この装備は君に使ってほしいんだ」
「私がですか?接近戦の多いキョウさんが適任だと思いますが」
「ヒーラーが傷ついたら、パーティーは崩壊する。
今までは問題なかったけど、不意に強敵が現れたら危ないかもしれない。
その保険だよ」
「わかりました。キョウさんが私に着けてください」
キキラは、左手を差し出す。
不自然に薬指が浮いている。
僕は中指に指輪を通した。
一瞬、キキラがむすっとした顔をする。
だが、すぐに笑顔に戻った。
「まったく、坊主は空気が読めないのお」
≫
最後に、ジゼットの店に向かう。
「これだけの数の魔石を作るのは、大変でしたよ」
「お手数おかけしました。少し色を付けてあります」
先日、ジゼットにお願いしていた魔石を受け取る。
よし、これで村へのおみやげもできた。
生活が向上するはずだ。
大量の大袋を抱えて、僕らはラピッドに帰郷することにした。




