アニト編12 滞在①
エクストラステージを含めてダンジョン攻略をした僕らは、再び冒険者ギルドに訪れた。
「あんたたち、よくそのレベルでアニトのダンジョンをクリアしたね!
ほら、これであんたたちはCランクの仲間入りだよ」
冒険者証を受け取る。
Cランク。
これで、より難易度の高いダンジョンに挑戦できる。
現在の仲間のステータスを確認する。
僕 【Lv.19 現世: 剣術士 前世: ――― スキルポイント: 0】
リリス【Lv.20 現世: 剣術士 前世: サムライ スキルポイント: 200】
キキラ【Lv.23 現世: ヒーラー 前世: ヒーラー スキルポイント: 230】
ラーナ【Lv.24 現世: 魔法使い 前世: 賢者 スキルポイント: 160】
それぞれレベルが格段に上がっている。
相変わらずリリスより僕のレベルが下なのは悔しいが。
僕らは3日ほど休養をとってからラピッドに出発することにした。
≫
まずはスミス工房に向かう。
リリスの刀の手入れと、キキラの槍の強化が目的だ。
「いらっしゃいませ、キョウ様」
相変わらず、紳士という言葉が似あう立ち振る舞いだ。
「今日は僕の弾薬の補充と、リリスの刀の手入れをお願い。
それから」
キキラは、懐から淡く水色に輝く魔石をとりだす。
スミスの顔が輝いた。
「こ、これは、武器に属性を付与する魔石ですね!
長いこと、この商いをしておりますが、実物を目にするのは初めてです!」
珍しくスミスが眼鏡をずらし、興奮している。
やはり希少価値のある物のようだ。
「これを使って、私の槍の強化をお願いします」
「むしろ、こちらからお願いしたいくらいです!
まさか、こんな魔石に触られる機会が訪れるとは......
わたくし、スミスが全身全霊を持って調整をさせていただきます」
ようやくスミスが調子を取り戻した。
僕は、自然と魔道具コーナーに目が行く。
やはり魔道具を見ると血がたぎる。
物色していると、1つの指輪が目に入った。
「それは、防御結界を張るものです。
ただ、低レベル向けの物でして、あくまで護身用といった性能です」
裏庭で試させてもらう。
キキラに突いてもらう。
あっさりとバリアが砕けた。
これでは実戦で使用するには性能不足だ。
だが......
魔道具好きの血が騒ぐ。
頭でアイデアが構築されていく。
あるアイデアが頭に浮かぶ。
僕は1つ購入することにした。
≫
それぞれの武器の調整に3日ほどかかるということなので、
僕らはアニトの街を散策する。
道中、レストランで食事をすることにした。
ここの店の売りは、豚をメインにした肉料理だそうだ。
僕は田舎出身とはいえ、領地の息子。
テーブルマナーは心得ている。
キキラ、ラーナも同じようだ。
唯一、リリスだけはフォークとナイフの順番に戸惑っている。
「もう!こんな堅苦しいところじゃ、食べた気なんてしないわよ!
次は酒場にしましょ。あそこなら、いつも通りマナーを気にせず食べられるわ」
リリスには、まだレストランは早かったらしい。
そんなリリスをよそに、僕ら3人は料理を堪能した。
≫
次に目指すは、防具屋のロックの店だ。
「おう、よく来たな!
噂じゃ50階をクリアしたんだって?
そのレベルでよくやったな」
口角を思い切り上げて、歓迎してくれる。
「ロックさんに作ってもらった防具が、とても役に立ちました」
「そうだろうとも。あいつはオレの作品の中でも、トップクラスに入るものだ。
これからも大事に使ってくれ」
「はい。ところでロックさん、実は見てもらいたいものがありまして」
懐から指輪を取り出す。
「こりゃ......防御結界を張る指輪か。
お前らが使うにはだいぶ心許ないが」
「これを改造できないかと思っています。
ここをこうして......」
僕はアイデアを図面に書き記す。
ロックが興味ありげに眺めている。
「なるほどな。それなら、この先のダンジョンでも十分使い物になるだろう。
となると、この部分は......」
白熱するロックとの議論。
「また始まったわ。魔道具バカ」
「キョウさんは、本当に魔道具がお好きなんですね」
「魔道具か。前世でも似たようなものがあったな。
魔法を使えない者を補助する道具だった。
本物の魔法にはかなわなかったがな」
ラーナが淡々と語る。
キョウとロックの話し合いは、より熱を帯びていく。
3人はあきれ顔をしながら店を出た。
≫
あれから、結局夜半過ぎまで論議をしてしまった。
重力に負けそうなまぶたを、冷水で引きしめる。
「おはようみんな」
「おはよー」
「おはようございます。キョウさん、目のくまがひどいですね」
「よっぽど白熱したようじゃの」
宿で朝食をとりながら、今日の予定を話し合う。
「実は魔道具の作成に必要な素材があってね。
アイアンスパイダーの糸が大量に必要なんだ。
幸いアニトからほど近い森の中に、やつらの本拠地があるらしい」
「今日はクモ狩りね!で、どれくらい狩ればいいの?」
「......100体」
「え......いくらなんでも、多すぎない?」
「やつらの巣を叩けばもっと糸が集まるから、できれば殲滅したい」
「しょうがありませんね。キョウさんは一度決めたら引きませんから」
「クモごとき、わしの魔法で根絶やしにしてやるわ」
朝食を食べ終わった僕らは、森に向けて歩き出した。
≫
アイアンスパイダーの本拠地は、わりとすぐに見つかった。
そこら中に貼られた巣をみながら、密集する方向に進んでいく。
黒光りする鋼鉄の身体に8本の足。
僕らを見つけると、一斉に襲い掛かってきた。
が、動きが妙に遅く見える。
ダンジョンで出会った強敵に比べたら大したことはない。
リリスが一閃するたび、鋼鉄の身体が二つに割れる。
僕らは作業的に駆除をしていった。
殲滅し終わった後、スパイダーの体内と巣の素材となっている糸を回収する。
両手では持ちきれないほどの量だ。
「ラーナ、シープを出して」
「まったく坊主は人使いが荒い」
帰りは、木々の間を疾走するジープで快適に過ごした。




