アニト編11 解放②
「ラーナ!時間を稼ぎたい。特大のやつをお願い!」
「相分かった」
ラーナが力を溜める。
「スキル・風龍巻」
巨大な龍を模した風の塊が、相手パーティーの周囲を回り身動きを取れなくする。
「リリス、キキラ!」
2人が駆け寄ってくる。
「作戦があるんだ。あのパーティー相手なら、これしかないと思う」
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リリスは剣士、キキラはタンクと戦う。
僕は一旦距離をとり、アサルトライフルを構える。
敵の足元を狙い弾丸をばら撒く。
2人の攻撃と僕の援護射撃によって、徐々に剣士とタンクの距離が短くなり近づいていく。
ラーナと魔法使いは変わらず、相手の魔法を相殺している。
僕らは作戦通り連携を取り、剣士とタンクを押していく。
彼らの背中がくっついた。
「いまだ!」
リリスが二人の側面に一瞬で回り込む。
「スキル・剣舞 参式!」
一振りで3つの斬撃が飛ぶ。
たまらずタンクが盾を振り回して防御にまわる。
それに押されて、剣士が膝をついた。
僕は、剣士に銃弾をこれでもかとお見舞いする。
剣士は血を吹き出しながら倒れ込んだ。
ここまで喰らわせたんだ。
ヒーラーの元までたどり着けまい。
状況を見て不利を察したのか、タンクが後衛まで下がる。
「スタングレネード!」
周囲にまぶしすぎる閃光と爆音が広がる。
少しでも相手に動揺を与えたい。
僕はライフルのスコープをのぞきこむ。
数回深呼吸をしたのち、息を止めて狙いを定める。
スタングレネードで少し時間は稼げたが、ヒールを受けて回復したタンクが慌てて前線に戻ろうとしている。
その横を高速の弾丸がかすめる。
後ろでは、ヒーラーが胸を撃ち抜かれ倒れた。
これで回復手段はつぶした。
覚悟を決めたのか、タンクが突っ込んでくる。
間合いはもう覚えた。
タンクの剣を紙一重でかわし、足に深い切り傷を残す。
僕の出番はここまでだ。
「スキル・刺突!」
体勢を崩したタンクの盾を、リリスが吹き飛ばす。
同時にキキラが槍で首を貫く。
その様子を見たラーナは、にやりと笑った。
「あちらは決着がついたか。ならば、わしらも終わりにするとしよう」
大気が震え、頭上に雲が形成される。
「スキル・轟雷」
魔法使いはとっさにバリアを張るが、まるで紙きれのようにそれを引き裂いて雷が全身を焼く。
魔法使いは、ぶすぶすと焼けこげる音を立てながら倒れ込んだ。
≫
強敵だった。
魔物なら何度も戦ってきたが、人間のパーティーは全くの別物だ。
個々の実力も高かったが、何より連携が厄介だった。
今回の勝利は僕らが彼らより連携を取れていた証だろう。
4人にはまだ息がある。
僕は歩み寄る。
顔を見て一瞬躊躇する。
人間ではない、魔物なのだ。
それでも理性がブレーキをかける。
震える手を抑えながら、1人ずつ頭に弾を撃ち込んでいく。
彼らは完全な死体となった。
不意に彼らの身体が光りだす。
光は収束し、丸い球状になる。
それがゆっくりと上へ登っていく。
―俺らの魂を解き放ってくれてありがとう―
知らない声が響き渡った。
彼らは元々は人間だったのだろう。
因果はわからないが、ダンジョンにとらわれ魔物になってしまった。
壁と天井にある鉄格子は、彼らの魂を拘束していたのだろう。
昇り行く魂を見送りながら安息を願う。
「キョウ、何してるの?」
「彼らの魂が天に還っていくんだ」
光の玉を指さす。
「うーん......何も見えないな」
「坊主には見えとるんじゃろ。魂の輝きが」
ラーナがそっと肩に手を置いてくれた。
≫
4人の遺体が消えるとともに、宝箱が姿を現した。
普通の大きさの物が2つ、金色の物が1つ。
まずは金色から開ける。
予想通り、精霊水が入っていた。
よかった。これでまたアキを回復させられる。
隣でリリスも微笑んでいる。
次はキキラ。
中には澄んだ水色の魔石が入っていた。
海を凝縮したような淡い色。
「これは、装備の強化に使う魔石のようですが、今まで見てきた物とは少し異なりますね。こんなに神秘的な物はみたことがありません」
「どれどれ。......魔力を感じる。
おそらく属性強化ができる魔石じゃろう。
色から見るに水系統かの」
「属性攻撃ですか。聞いたことはありますが、実際に見たことはありません。
通常の武器とは違って、魔法に似た効果も攻撃に付与されるとか」
「さよう。単純な武器の破壊力に、魔力を乗せることができるのじゃよ」
本で読んだことはあるが、実際にそんな武器は見たことがない。
キキラの槍が属性武器になる。
魔道具好きとしてはこの上なく楽しみだ。
≫
最後にラーナが宝箱を開ける。
中には小さな球体が入っていた。
透明で中に光でできた芯が入っている。
「コンパス?」
「そのようじゃの。
......ふむ。わしが望むのは世界の真理の探求じゃ。
その道を指し示すとするなら...」
ラーナがしばらく考え込む。
おそらく前世の膨大な記憶と似たものを照らし合わせているのだろう。
「......神域じゃな」
「神域って何?」
リリスの頭にはてなが浮かんでいる。
「神域っていうのはね、ドラゴンと同じく伝説上の話なんだ。
神が住まう地とされていて、誰も足を踏み入れることはできないんだ」
昔読んだ本の知識を披露する。
「坊主、その答えは概ね正しい。
じゃが訂正がある。神域には立ち入れる」
ラーナが真剣なまなざしで僕を見てくる。
「お主がいればな」
僕がいれば?
どういう意味だろう。
「いずれ時が来ればわかる。
それに、お主とリリスの求めるものも無関係ではない」
もしかしてアキの回復に関係があるのか。
詳しく話を聞き出そうとしたが、時期尚早だと言われそれ以上は説明してくれなかった。
何にせよ精霊水は手に入った。
もう一度帰郷して早くアキに飲ませたい。
僕らは転移陣でダンジョンを後にした。




