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アニト編10 解放①

51階、エクストラステージ。

僕らは転移陣に乗る。


「前回のヒュドラは強敵だった。

今回も相当な魔物が待っているに違いない。

みんな、準備はいい?」


「新しい魔道具があるし、腕が鳴るわ」


「いつも通りやっていけば大丈夫です」


「初のエクストラ。わくわくが止まらん!」


それぞれの士気は高い。

転移陣を起動する。



≫

目の前の朽ちかけた扉が見える。

片方の取っ手はもげている。

僕は緊張に包まれながら扉を開ける。


白く平坦で、まるで四角形の建物の中にいるようなステージ。

壁一面と天井に鉄格子がはまっている。

中央に4体の魔物が確認できる。

しかし違和感がある。


部屋に踏み入れると、まばゆい光があたりを照らした。

あれは魔物ではない。

人間だ。

両手剣を持った剣士、盾を構えるタンク、杖を持った魔法使い、短い杖を持つヒーラーと思しき人物が目に入る。

先にエクストラステージをクリアした者たちだろうか。


声をかけようとして躊躇した。

こちらを振り返った全員の目がまっくろだ。

放つオーラもまがまがしい。


「あれは人ではない。かつて人だったものじゃ。今は魔物化しておる」


やはり敵か。

僕らは戦闘態勢に入る。



≫

定石通りに動く。


「グレネード!」


パーティーの前方で爆発した。

土煙が晴れると、タンクが爆風から味方を守っている姿が見えた。

さすがに一発では倒れないか。

銃でヒーラーを狙うがタンクに阻止される。


「僕らも動こう。

リリスは剣士を。僕とキキラはタンクをやろう。

ヒーラー、魔法使いは後回しだ」


リリスが一気に距離を詰め、剣士と戦い始める。

剣の技量は相手のほうが上のようだ。

珍しくリリスが手傷を負っている。


「スキル・円陣斬!」


剣士に強制的に間合いを取らせ、空中歩行で真横に回り込む。


「スキル・刺突!」


リリスの最速の攻撃だ。


だが紙一重でかわされる。


「こいつ、強いわ。

こっちは手一杯......支援できそうにないわ」


リリスの口から弱音が出るなんて、珍しい。

再び間合いが詰まり、剣の応酬が始まる。


僕とキキラはタンクを前にしていた。

巨大な盾とそれに見合った巨躯。

まずは僕がかく乱を試みる。

拳銃で威嚇しながら盾の横に滑りこんで、足に剣を突き立てる。

動じない。


キキラが、華麗な槍捌きでタンクの注意を引いている。

その隙に拳銃をありったけ胴体に打ち込む。

さすがのタンクでも、これだけ攻撃されたら響いたようだ。

一旦ヒーラーの元に戻っていく。


ヒールの光が見えたので、好機だと踏んだ僕らは追撃を試みる。

仕留めるなら今だ。

そこに風の矢が飛んできた。

魔法使いが杖を構えている。

身体をひねってかわし、直撃するものは武器ではじいてしのぐ。


また厄介な相手だ。

今まで僕らは魔物を相手にしてきた。

人間の、しかも完成されたパーティーを相手にするのは初めてだ。


タンクの回復が終わり、戦線に復帰してくる。

ヒーラーの能力も高いようだ。

傷跡すら残っていない。


僕らが敵と密着している間は、巻き込みを恐れて魔法を使ってこない。

必然的に後衛のラーナが狙われる。


風の矢がラーナに向かって飛ぶ。

杖を軽く振るうと同じく無数の矢が生成される。


「スキル・風矢」


魔法同士がぶつかり相殺される。


「魔法使いとやりあうのは久しぶりじゃな。楽しめそうじゃ」


まだ余裕のようだ。



≫

戦闘は膠着していた。

リリスは、剣士との打ち合いで浅い傷をいくつも作りながらくらいついている。

タンクは依然として立ちはだかっている。


「スキル・エリアヒール」


僕らの傷が回復していく。


相手がパーティーならこちらもパーティー。

より連携の取れた方が勝つ。

これまでの技量を観察すると、相手のほうがレベルが高そうだ。

レベル30程度だろうか。

今の僕らが正攻法で勝てる相手じゃない。


そうこうしている間に、タンクが膝をついた。

事前に準備していた毒が身体に回ったようだ。

その隙を見逃さず、キキラが盾を持つ手に深い突きを喰らわす。

たまらず再びヒーラーの元にしりぞく。

そして魔法攻撃。


この連鎖を断ち切りたい。


「ラーナ!」


ラーナが、収納魔法から取り出したアサルトライフルを投げてこちらによこす。

僕は無防備なタンクとヒーラーに向けて一斉掃射する。

魔法使いがバリアを張ってそれを防ぐ。

状況を察したキキラがリリスの加勢に向かう。



≫

強い。

今まで戦った敵の中で最もやりづらい。

スキル以前の、単純な技量の差が大きすぎる。

防戦一方になる。

まずはヒーラーを優先してつぶしたいが、バリアとタンクによってアサルトライフルは無効化されてしまう。


剣士との競り合いの中、リリスは冷静に相手を分析していた。

剣士には慣れ親しんだ型がある。

それぞれの呼吸のようなものだ。

それを見逃さないように集中する。


剣士は両手剣を横なぎに払った。

その際に脇腹に隙ができたのを、リリスは見逃さない。


「スキル・居合い斬り!」


剣士の脇から多量の出血。


そこにキキラが参戦する。

数の有利を利用して一気に攻め立てる。

キキラが正面に立って攻撃を引き受け、リリスは空中歩行で背後から斬り付ける。

剣士の態勢がぐらっと揺れた。


その時、リリスとキキラは吹っ飛ばされた。

何が起きたのか一瞬わからない。


剣士の前にタンクが立っている。

あの盾に吹き飛ばされたのか。



≫

このヒーラーは本当に優秀なようだ。

あれだけダメージを与えたタンクを、瞬く間に回復させている。

僕が追い付く間もなくタンクは傷ついた剣士の援護に回り、リリスとキキラを吹き飛ばした。


強い。

だが違和感。

タンクの横で剣士も倒れている。

傷のせいか?

いや、違う。

タンクの突進に巻き込まれたのだ。


――これだ。


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