アニト編9 キマイラ③
ラーナがキマイラと対峙する。
「キマイラか。どこの世界でも、魔物の寄せ集めは醜いものじゃの」
言葉がわかるのか、キマイラが威嚇する。
「手始めじゃ。スキル・風弓」
空気が圧縮され、無数の矢がキマイラに飛ぶ。
身をよじってかわすが、何本か命中しキマイラが態勢を崩した。
「ようかわしおる。次じゃ。スキル・風槍」
先ほどより凝縮された、密度の濃い大きな槍が姿を現す。
「いけ」
その一言で槍が射出され、キマイラの身体の下半分が消し飛んだ。
たまらず落下する。
僕はアサルトライフルに持ち替え追撃する。
肉体の再生力は衰えつつあるが、まだとどめを刺すまでにはいかない。
リリスの刺突であれば核ごと貫けるかもしれないが、まだ回復には時間がかかる。
片手剣に毒を塗り付け、接近戦に切り替える。
下半身が再生するまでに、より多く毒を盛っておきたい。
僕は何度も顔を切りつけた。
不意に殺気を感じかわす。
もう尾が再生している。
さすがに一人ですべてをさばき切るのは厳しい。
どうしたものか。
一瞬尾に気を取られていて、気付くのが遅れた。
キマイラの口から熱気があふれてくる。
「しまった!」
「スキル・氷結」
ブレスが凍った。
危なかった。
意識を再び攻撃に切り替えるが、キマイラの下半身はもう復活している。
再びキマイラは飛び始めた。
一旦距離をとる。
≫
「ラーナ、どう思う?」
「衰えてはいるが、あの再生力は厄介じゃ。
それに空を飛んでいるから、こちらとは相性が悪い。
お嬢が動けない今、攻撃が届くのはわしの魔法くらいじゃろう」
核は胴体にある。
リリスの刺突のように深く胴体をえぐれたら、今の再生力なら核を破壊できるだろう。
左手の盾に目をやる。
「ラーナ、あいつの足を止めて。僕がとどめを刺す」
「わかった。任されよう」
僕はアサルトライフルでキマイラをけん制し、逃げ道を塞ぐ。
ラーナが詠唱する。
「スキル・風弓」
弾丸と弓の嵐だ。
さすがのキマイラでも全てはよけきれない。
高度が落ちる。
「スキル・轟雷」
キマイラに複数の雷が落ちる。
ぶすぶすと身体の焼ける音を立てながら落下した。
僕は走り出す。
キマイラは腹を向けて横たわっている。
また再生が始まる前に決める。
「グレネード!」
まずは腹に一発。
えぐれた肉に盾を押し付け、スイッチを押す。
ボンッ!と音がして地雷から無数の鉄球が飛び出す。
キマイラの肉が四散する。
あった、核だ。
僕は弾丸を数発撃ち込み、それを破壊した。
キマイラは煙を立てながら消失していく。
勝った。
前回盾の地雷を使った時は腕があらぬ方向を向いていたが、
今回はかなりのしびれがあるものの無事だった。
ロックが用意してくれた鎧が良い仕事をしてくれたと実感する。
≫
「坊主、よくやった!」
ラーナが頭を撫でてくる。
「ラーナこそ。やっぱり魔法はすごいね」
「たしかに魔法は強力じゃ。しかし、他のスキルに比べてポイントの消費効率が悪すぎる。
前世では魔力任せに撃ち放題じゃったが、この世界では戦い方を改めねばならぬ」
ようやく治療の終わったリリスとキキラが寄ってきた。
「そのためのわたしたちよ。連携して敵を倒す。それがパーティーでしょ?」
「パーティーか。懐かしい響きじゃ。お嬢の言う通り」
そんなやり取りをしつつ、勝利の余韻に浸る。
突如地面が輝きだし、3つの宝箱が出現した。
普通の大きさの物が2つ、巨大な物が1つ。
≫
まずは普通の物から確認する。
1つ目をキキラが開けた。
前回よりもまばゆい光を放つ魔石が出てきた。
キキラの願いは、仲間と共に前線で戦うこと。
おそらく、これも槍の強化に使うものだろう。
次にラーナ。
魔道書が出てきた。
本を開き手をかざすと光があふれ、ラーナに吸収されていく。
「なるほど、強化の魔法か。それも身体ではなく装備に。実に面白い」
普段は眠たげな顔をしているラーナの目が輝いている。
やはりラーナは賢者なのだ。
魔法の探求には余念がない。
最後に巨大な宝箱。
中身はわかり切っている。
リリスと僕で蓋を押し上げる。
光と共に宝箱は消え、転移陣が現れた。
「これがエクストラステージへの入り口か。興味深い」
ラーナがじっくりと観察している。
「前回のヒュドラは強敵でしたね。今回も覚悟をした方がよいでしょう」
キキラが身を引き締める。
とりあえずは休息だ。
万全な状態でなければ挑むことは難しい。
僕らはラーナの収納魔法から取り出した食材をふんだんに使い、
豪勢なご飯にありついた。




