アニト編9 キマイラ②
それは、中央に寝そべっていた。
獅子の顔に、鱗の生えた5mはあろうかという胴体。
翼を有し、しっぽは蛇だ。
キマイラ。
複数の攻撃手段を持つ、厄介な相手だ。
読んだ本によると、再生能力も持っているらしい。
キマイラが身体を起こし、戦闘態勢に入る。
まずは先制攻撃だ。
「グレネード!」
キマイラの前方で爆発する。
顔がえぐれたが肉が盛り上がり、再生する。
以前倒したヒュドラと同じか。
おそらく体内のどこかに核があり、それを壊せば倒せるのであろう。
「リリスは僕と来て。キキラは、いったん後衛で様子をみよう」
「いくわよ!」
リリスが刀を振るう。
刀が胴を切り裂く。
そのままの勢いで切り刻む。
しかし瞬く間に再生してしまう。
僕はリリスに攻撃が向かないように、キマイラに相対して攻撃を受ける。
そこまで重たさは感じないが、指先についた鋭利な爪がやっかいだ。
一撃受けたら、ただでは済まないだろう。
攻撃を受けながら隙をうかがう。
ここだ。
「パリィ!」
腕をはじき顔面に一撃くらわせる。
ひるんだところを銃で追撃する。
視界を奪った。
「リリス!」
「任せて! スキル・剣舞 参式!」
胴体が大きく切り裂かれ、キマイラは地面に倒れこむ。
「やったね! さすがわたし」
喜ぶリリスの後ろに光る眼が見えた。
「危ない!」
とっさにリリスを突き飛ばす。
僕の顔をキマイラの尾がかすった。
額を切ったのか、出血で片目がふさがる。
「スキル・エリアヒール」
傷が回復していく。
2本の腕についた鋭い爪、牙での噛みつき、そして尾の蛇。
こいつはまた面倒だ。
「キキラ、ここからは君も前衛に加わって。3人で抑えよう」
僕は正面、リリスは側面、キキラは背後に回り尾を担当する。
ラーナは何かあったときに備えて待機してもらう。
魔法は強力だが、ポイント消費も膨大だ。
安易には使えない。
僕は懐から瓶を取り出し、紫色の液体を剣に塗り付ける。
「第2ラウンドだ」
相変わらずの猛攻。
再生力を落とすためにリリスには胴体の攻撃に集中してもらい、
キキラには尾の対処を任せる。
僕は二人に注意が向かないようにキマイラの気をひき続ける。
キマイラがいら立ったように立ち上がり、両手を振り下ろした。
脇元に大きな隙。
こいつの間合いはもう見切った。
僕は攻撃をひらりとかわすと、腹をざっくりと斬りつけた。
≫
しばらく攻防が続いた後、キマイラに変化が現れた。
明らかに動きが鈍くなり、時折、口から血を吐いている。
「やっと毒が効いてきたか」
このダンジョンで対峙した大サソリ、サンドワームの毒を混合したものを剣に塗り付け振るってきた。
やはり魔物にも毒は効くらしい。
さすがのこいつでも毒状態はつらいようだ。
「スキル・刺突!」
リリスの強烈な突きが胴体を貫通する。
一瞬光る物体が目に入る。
ヒュドラ戦で目にした核と同じ光り方だ。
「こいつの核は胴体にある。一気に畳みかけよう!」
3人で切りかかろうとした瞬間、キマイラが翼を動かし始めた。
飛んだ。
こんな余力がまだあったのか。
キマイラは空中を旋回しつつ、傷の回復を待っている。
「こざかしいやつね。今行くわよ」
リリスが空中歩行でキマイラに迫る。
がばっとキマイラが口を開けた。
喉の奥が赤く光る。
「リリス、避けて!」
キマイラのブレスだ。
リリスはよけきれず、左足を負傷して落下する。
ブレスに焼かれた足は赤く腫れあがり、血がにじんでいる。
キキラが駆けつけヒールをする。
しばらくは動けそうにない。
やつは空中にいて、尚且つブレスを吐いてくる。
ここで空中でも交戦できるリリスが負傷したのは、非常に痛い。
どうしたものか。
「やっとわしの出番のようじゃの」
ラーナが杖をかまえて一歩前に出た。




