アニト編6 30階
「ロックさん、お邪魔します」
「おう、キョウか。例の物、できあがってるぜ」
奥から取り出した鎧をゴンとテーブルに置く。
ミスリルを使った、左腕専用の防具だ。
可能な限り軽くしつつ、盾の地雷の爆破に耐えうる頑強さにしてもらった。
「中にはゲルと魔石が仕込んであってな。
これが爆発の衝撃を吸収してくれる。
完全にとはいかないが、腕が折れることはなくなるはずだ」
早速装着してみる。
銃と盾を装備して、色々な角度に曲げてみる。
悪くない。
「ロックさん、ありがとう!これでダンジョン攻略が進みそうです」
「3日徹夜した甲斐があったぜ!
こんなにおもしろい装備は久々だったもんでな。
こっちも気合が入ったぜ」
男同士で固い握手をかわす。
事前にスミスに頼んでおいた地雷のカートリッジを複数受け取り、宿に戻る。
これで僕の最大火力を連発できる。
みんなの助けになるはずだ。
次の階層はどんなところだろう。
考えているうちに、僕は眠りについた。
≫
僕らの攻略は、ジープと名付けた自動車のおかげでサクサク進んだ。
途中接敵することはあったが、僕らのコンビネーション、特にラーナの魔法の前には大した敵ではなかった。
このダンジョンの敵は毒をよく使う。
僕は、魔物を倒すたびに瓶に保管していった。
ダンジョン攻略が終わったら、ポーションの知識をいかして調合してみるつもりだ。
「快適な旅路ですね」
ジープは疾走する。
「油断は禁物だけど、移動が楽なのは本当に助かるね」
「今度はわたしが運転したい!」
「リリス、運転の仕方習ってないでしょ」
「えー!」
リリスはしょぼんとしている。
そんなこんなで僕らは30階の扉の前にたどり着いた。
≫
そこにはサメがいた。
手足が生え、その先には鋭い爪がついている。
サメが空気中で呼吸できるのか?
そんなことは置いておいて戦闘に入る。
前衛3人で切り込み、ラーナは後方で待機している。
キキラが注意を引き、大ぶりな一撃に合わせて僕がカウンターを決める。
リリスは空中歩行で背後に回った。
「スキル・居合い斬り!」
背中に大きな傷を作る。
大した敵ではないな。
そう思いながら体力を削っていく。
するとサメは詠唱を始めた。
短い詠唱の後、突然ぶわっとあたり一面が水に覆われた。
しょっぱい。
海水だ。
フィールドが海水で満たされる。
息ができない。
ふいにまばゆい光が全身を包むこんだ。
「スキル・エアバリア。
水中でも息ができるようにバリアをかけた。
もって3分じゃ」
ネックレスからラーナの声が聞こえてくる。
サメは速度をあげ、悠々自適に泳いでいる。
地上での戦いとは段違いだ。
僕はアサルトライフルに持ち替え発射する。
弾頭が数メートル先で勢いを失う。
水中では銃は役に立たないか。
サメがこちらに向かって、高速で接近してくる。
噛みつきを盾で何とか防ぐ。
キキラが合わせて槍で突くが、もう距離を取っている。
やりづらい。
唯一、リリスだけが空中歩行を応用して水中でも自由に駆け回っている。
だが、さすがにサメの早さには追いつけない。
銃はダメ。サメはヒット&アウェイに徹している。
何か打開策を。
残りの酸素も少なくなってきた。
「リリス!」
僕の意図を汲んだリリスがこちらに集まってくる。
サメは僕ら3人に突進をしてくる。
僕がガードし、リリスがスキルを放つ。
「スキル・円陣斬!」
サメの片目を削り取った。
やつは、より慎重にこちらの様子をうかがいながら周回している。
このままでは酸素がもたない。
「あまりやりたくない手ではあるが...坊主たち、電気風呂は好きか?」
「何それ?とりあえず打てる手があるならやっちゃって!」
「よかろう」
ラーナの杖が光る。
「スキル・紫電!」
水中を電気が走る。
身体が強烈にしびれる。
僕らは気を失った。
≫
気が付くと水が引いていた。
前方に目をやると、サメが横たわっていた。
「主らを巻き込みたくはなかったんじゃがの。
緊急事態につき勘弁してくれ。
水中の生物にはやはり電気が一番効く」
僕らの身体はまだしびれている。
キキラがエリアヒールをかけてくれる。
危うい場面が多かったが、何とか30階を制覇した。




