アニト編5 アニトの街③
依頼人のジゼットに話を聞く。
「あたしは魔道具使いのジゼット。よろしくね」
油まみれの作業服を着た、30歳ほどの女性だ。
腰には道具入れをぶら下げている。
「今作っている新しい魔道具の作成に、どうしても魔石が必要でね」
ジゼットの後ろには、シートを被った大きな物体がある。
「私の世界の移動手段に使うものだよ。前世では簡単に採掘できる油を原料にしていたんだけど、
この世界では採掘が難しいみたいでね。動力を精霊石に置き換えたいんだ。
そこで大きな魔石が必要になるってわけ」
「なるほど。それであてはあるんですか?」
「海風の洞窟。ここは魔物の住処なんだけど、大きな魔石が奥に埋まっているって噂なんだ。
そこで魔物を一掃して魔石を回収してきて欲しい」
「わかりました。この依頼お引き受けしましょう」
≫
僕らは海風の洞窟に足を踏み入れた。
この洞窟は干潮時しか姿を現さない。
時間との勝負だ。
魔物との戦闘は極力避け、一気に最奥を目指す。
出てくる魔物は、魚人などの海に生息するものが多かった。
「空中歩行!からのスキル・一閃突!」
驚いた。
リリスが空中を飛び回っている。
これが昨日言っていた新しい魔道具か。
戦術の幅が大きく広がるな。
「スキル・ファイアボール」
ラーナの魔法は相変わらず強力だ。
魔法を打つたびに、褒めてとキキラに抱き着こうとするのは勘弁だが。
最奥には巨大な魚人が待っていた。
3mはあるかという巨体。
手には槍を持っている。
「リリスとキキラは前衛をお願い。
僕は中衛で試したいことがある」
二人は魚人と剣劇をかわしている。
キキラが注意をひきつけ、リリスが空中歩行を使い死角から斬撃を見舞う。
このまま二人に任せても勝てそうだが、僕も新しい武器を使いたい。
「ラーナ、ライフルをお願い」
空間の割れ目から武骨な長い鉄砲が姿を現す。
僕は射撃姿勢をとり、アサルトライフルをぶっ放した。
魚人の胸部に複数の大穴が開いた。
敵は倒れこんだ。
「やっぱりライフルの威力はすごいな!
これで近距離、中距離に対応できる」
予備のマガジンは、テープで使っている弾倉に括りつけている。
これで弾倉の交換に手間取ることがなくなるらしい。
「また新しい武器を手に入れたのね。
わたしたちの出番がどんどんなくなっていくわ」
「そんなことないよ。二人が注意を引いてくれたから、正確に胴体を狙えたんだ」
「キョウさんは使えるものはなんでも取り入れますね」
「スキルがない分、工夫していかないとみんなについていけなくなるからね
まだアイデアもあるし」
「坊主なりに考えておるんじゃの。感心感心」
ダンジョンの最奥には、今まで見たこともないくらい大きな魔石が埋まっていた。
直径は50cmくらいだろうか。
つるはしを使って掘り出して持ち帰る。
≫
取ってきた魔石をジゼットに渡した。
目が輝いている。
大きな塊の布をとった。
魔道具図鑑に載っていた、自動車という乗り物だ。
黒い車体に大きいタイヤと高い車高。
「ここに精霊石をはめ込んで回路をつないでっと。
キョウさん、運転席の鍵を回してくれますか?」
ブオンと音を立てて自動車のエンジンが回る。
「成功だ!」
ジゼットは大喜びしている。
「おめでとうございます。すごい物を作りましたね」
「ありがとう。これでこの店も繁盛できるわ!
ただ、試運転をして改良を施さないといけないのよね。
そうだ!キョウさん、これを使ってアニトのダンジョンを攻略してもらえませんか?」
たしかに、アニトのダンジョンは他と比べて広大だ。
移動手段ができるのは非常にありがたい。
「いいんですか?僕らの攻略でもし壊しでもしたら」
「大丈夫。魔石だけ持って帰ってきてくれたら、また一から作り直せる。
ダンジョン攻略向けの車だから、実際に使ってみて感想を聞かせてもらいたいの」
「わかりました。保証はできかねますが、できるだけ丁寧に扱いますね」
それからギアの使い方など、簡単な操作について教えてもらった。
「これくらいなら収納魔法におさまるじゃろ」
車が次元の切れ目に吸収された。
「ちと重いの。じゃがこれくらい、賢者のわしには朝飯前じゃ」
収納魔法に入れた物体の重さの何分の一かは、術者の身体にかかるらしい。
「軽量化を視野にいれて置きますね」
ジゼットは新しい課題に目を輝かせている。
これでダンジョン攻略に弾みがつくはずだ。




