アニト編5 アニトの街①
街に戻った僕らは3日ほど宿で休暇を取った。
一気に20階まで潜ったのだ。
ラーナはピンピンしていたが、僕ら3人は疲労でクタクタだった。
≫
4日目、街にくり出す。
「とりあえず朝食を食べようか。どんなお店がいい?」
「魚!せっかくの港町なんだから堪能しておかないと」
「私も魚料理に賛成ですわ。新鮮な魚を食べられる機会は貴重ですから」
「それなら心配ないぞ。わしの収納魔法の中は時が止まっておる。
食料はいつまでも新鮮に保管しておけるぞ」
リリスとキキラの目が輝いている。
「もう干し肉だらけの冒険とはおさらばなのね!
ラーナ、わたしに好きなだけ抱き着きなさい!」
「じゃから、お嬢はわしの好みではない」
そう言いつつ、リリスに抱きしめられ、まんざらでもない顔をしている。
朝食は海鮮丼というものを食べた。
新鮮な魚の生身を米にこれほどかと乗せ、醤油という調味料がかかったものだ。
魚の風味と米のふんわりとした食感があいまって、とても美味しかった。
リリスは3杯おかわりしていた。
≫
それから僕らは、アニトの散策にでかけた。
海を眺め、朝市で新鮮な魚を買い取ってラーナに収納してもらう。
市場を眺めていると、見慣れない野菜が目に入る。
黄色くて丸い果物。
赤々とした葉の葉物野菜。
やはり土地によって採れるものは違うのだ。
途中で路地裏に目が向いた。
生気のない人々がたむろしている。
ここでも前世中毒者か。
港町の喧騒に反して、よどんだ空気が漂っている。
「キョウ、あの屋台見に行きたい!
串焼きがおいしそうよ!」
リリスに引っ張られて、その場をあとにする。
≫
市場を抜けると、また違った店並みが揃っていた。
武器屋。
防具屋。
魔道具屋。
ここには冒険者向けの店が集まっているようだ。
歩き回っていると1軒の店に目が留まる。
【スミス工房】
ハランドの街でお世話になった武器屋と同じ名前だ。
僕は扉を開いた。
整えられた白髪を滑らかに後頭部になでつけている。
着ている服はオーダーメイドのスーツだ。
革靴は丁寧に磨きこまれている。
「スミスさん?」
ハランドの街にいるはずじゃないのか?
「おやおや、その装い、キョウ様でいらっしゃいますね?
私はスミスの兄、ジョンでございます」
よく見るとハランドのスミスとは違い、眼鏡をかけている。
「キョウ様の話は弟よりかねがね聞いております。
弟からご購入いただいた武器が役立っているようで、何よりでございます」
スミスがさわやかな笑顔を向けてくる。
「弟さんには大変お世話になりました。機会があれば、元気にやっているとお伝えください」
「かしこまりました。本日はどのようなご用向きで?」
ラーナの収納魔法のおかげで、大きな武器も持ち運ぶことができる。
スミスの店なら品質は間違いない。
ちょうどよいので店内を物色する。
銃だが拳銃よりも銃身が長く大柄なものが目に入った。
「これは?」
「アサルトライフルと呼ばれる銃でございます。
拳銃よりも強力で、連射性能に優れております。
オプションパーツも豊富で、近接戦闘から遠距離戦まで幅広くカバーできます」
裏庭で試射させてもらう。
強烈な反動に驚いたが、レベルが上昇して強化された今の僕なら制御できそうだ。
何より甲冑を着た人形をハチの巣にした威力に一目ぼれした。
「現状では拳銃と同じアイアンサイトでの照準ですが、スコープを付けてより精度をあげることもできます。
他にも......」
スミスに丁寧に説明してもらい、スコープを含めた一式を購入した。
グレネードを買い足すついでに地雷も見る。
ヒュドラの胴体を吹き飛ばした地雷の一撃。
これからも必要になるであろう。
しかし、毎回腕を折っていては話にならない。
スミスに相談をする。
「地雷をそのように扱うとは。
でしたら、腕に防具をつけてみるのはどうでしょう」
≫
僕らはスミスに紹介された防具屋に向かった。
【アニト1の防具屋―前世は勇者の防具を作成―】
分厚い門扉を開く。
「......いらっしゃい」
比較的低い身長でありながら、筋骨隆々とした肉体。
その後ろ姿からは威厳が放たれている。
「スミスさんの紹介で来ました。キョウと申します」
男性が顔を上げる。
「スミスの紹介だと?これはまた珍しい。
オレは防具屋のロックだ。よろしくな」
握手をした手は硬くゴツゴツしている。
「で?今日は何を探しに来たんだ?」
これまでの経緯を説明する。
「腕に爆弾を付けて爆破するとは。
小僧、命知らずだな。気に入った!」
ロックは豪快に笑った後に話を進めた。
一緒に設計図を考える。
僕は接近戦、しかも超近距離のカウンターが主体だ。
重すぎる装備は避けたい。
しかし、左腕が強化されれば取れる選択肢も増える。
熱くロックと語り合う。
「わたしたちは眼中にないようね。外でお茶でもしてましょ」
3人は店を後にしてカフェに向かった。




