ハランド編11 血塗られた首①
―ザザッ
ノイズの先。
これは前世の記憶だろうか。
首を......はねろ。
首を落とせ。
もっとだ......まだ足りない。
≫
今日も正座した人に刀を振り下ろす。
首から飛び散る流血。
リリスの前世は首切り役人だった。
罪を犯した者は役人の裁きを受け、ここに運ばれてくる。
罪人が座るござの上には小さな台があり、小刀が置かれている。
罪人は切腹を求められる。
腹に小刀を突き刺し、横に切れ目を入れていく。
その痛みは想像を絶する。
そのため、途中で介錯人が首を落として苦しみを止めるのだ。
≫
〇〇は首切り役人の家に生まれた。
幼いころから剣術に励み、俵を一刀両断する力を求められた。
生活は裕福でも質素でもなく、稽古の後には並みの食事にありつけた。
〇〇が16歳になった。
大人として認められる証、元服を受ける。
その日から〇〇の人生は変わった。
ある日、父親の勤め先に連れていかれた。
広い庭先の一角に男が正座している。
父親はその後ろに立つ。
〇〇はその横にいるよう命じられた。
突如、男が小刀を腹に突き刺す。
痛みにもだえ苦しむ。
十分な時間を待った後、父親が首をはねた。
飛び散る血しぶきを浴びる。
その日から〇〇の人生は変わった。
≫
リリスは前世の記憶を取り戻した。
私は首切り役人だった。
罪を犯した者が切腹をし、その介錯として首を斬る。
殺人、窃盗、幕府への反旗。
罪状は様々だ。
だが時代が時代、えん罪の者が中にはいることを知っていた。
その中には幼子もいた。
〇〇は淡々と首をはねていった。
もう首を斬ることに抵抗はない。
だが精神はすり減っていった。
あんな人が死罪?生活に困ってた食べ物を盗んだだけなのに...
こんな幼子が?親が反旗を翻しただけなのに...
違う、私はまちがってなんかいない。あれは全部罪人だったんだ。
切腹の苦しさから救うために慈悲をかけていたんだ。
責務と良心が葛藤している。
いや、違う。
首だ。
首をはねて人生を楽に終わらせることが幸福なのだ
≫
リリスの様子が明らかにおかしい。
身体の損傷は見ての通りだが、まがまがしいオーラをまとっている。
動きがより鋭く、かつ危険になっていく。
頬に深い切り傷を負いながら首をはねる。
返り血を浴びて微笑んでいる。
あんなのリリスじゃない。
リリスが吹っ飛ばされて僕の足元に転がった。
「首......首を斬れ......」
リリスはボロボロの身体でなおも首を斬るために立ち上がろうとする。
「リリス、これ以上はだめだ!」
その時、体内で力の奔流を感じた。
以前から宿っているものだ。
いつもより力強い。
―光を......彼女を......助けてあげて―
ふいに女性の声が聞こえる。
声に命じられるがまま、自然と僕は目を閉じ集中する。
手のひらに光を集約させるイメージ。
以前はうっすらとした光だったものが今回は輝きを放つ。
僕はリリスの肩に手を置く。
すると僕の手のひらからリリスに緑色の光が伝わっていき全身を包んだ。
何が起こっているのかわからない。
僕にはスキルがない。
この光は何だ?




