最終リハーサル
第19話
リハーサルは照明合わせを含め教室で何回か行なっているが、五日後に発表会を控えて、発表会場舞台で最終リハーサルが夕方から行われた。
ほぼ全員が、本番舞台衣装で臨んでいる。
僕も、家で母親と姉が手直しをしてくれた本番舞台のチュチュを着た。
鏡で姿を見ると、少し膨らませた胸がきれいで、腰の括れと腰からお尻への丸みの増したラインが綺麗だった。この衣装で踊れることに嬉しさを感じた。
しかしこの段階にくると、もう衣装の事を話す人はいない。緊張感が漂っている。
僕は『白鳥の湖』の
“第2幕、白鳥たちの踊り”と
“第4幕、小さな白鳥たちの踊り”を踊る。
第2幕の白鳥たちのコールドは18人で、それに途中から春奈さん達のユニットが2組プラスで加わる。ユニットは技量の高い3年生と高校生で組まれている
第4幕の“小さな白鳥たちのおどり”には、第2幕のユニットメンバーも初めから加わって一緒に踊る。全員でゆっくりとしたテンポで心地よく踊る。
最終リハーサルは皆も気持ちが乗ってきて、一気に上達したように踊れた。
皆が本番へのフォーメーションにも自信を持ったのが分かる。
発表会の演目は抜粋だが、いつか全幕の舞台で踊ってみたい。
リハーサルが終了した後、先生が僕を呼んだ。
「お疲れ様。あなたが女の子として出てくれて、素晴らしい舞台が出来そうよ」
そして、続けて次のような内容の事を言った。
『発表会で一度、世代全体の納得の演技をさせてみたい。
僕は女の子たちの受けが良く、入ることによる纏まりを期待した。
僕が入って、女の子たちの練習への取り組みや雰囲気が変わった』
その他に色々と褒められて、女の子の複雑な世界の事も話されたが、良く分からなかった。
要するに、今回は女の子たちが僕に嫌われないように良い子に振舞い、纏まったということのようだ。そう解釈した。
ただ先生の、
「女の子はね、自分より綺麗なものには嫉妬するけれど、自分たちが作り上げた“理想の象徴”にはひざまずくのよ」、の言葉だけは印象に残った。
彼女達にすれば、僕は嫌われたくない神聖な存在だったようだ。
でも僕は、女の子達の複雑で湿った怖い世界の外にいて、関係しないようにしている。
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