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舞踊劇酔夢譚 (バレエすいむたん)、僕は白鳥のバレリーナ  作者: 優鶴
衣装の魔力と憑依、近づく本番
16/22

最近の心理状態、衣装による変身・変心、練習の進捗状況

第16話


今日もバレエ教室に来て、

「おはようございます」

挨拶しながら更衣室に急ぐ。教室では時刻に関係なく、この挨拶がされる。

男子の更衣室はこの時間帯は実質僕専用で着替えができる。

今日はボンかチュチュを着て、全体練習することになっている。

最近チュチュに着替えている間、少しワクワクし女の子になる高ぶりがある。少しおかしくなっているのだろうか。


衣服を脱ぎ、サポーターをきっちり締め、重ねてピッタリと薄ショーツを穿く。

次にボディファンデーションを着る。補布で少し膨らんだ胸やお尻と少し括れたウエストが、女の子になる覚悟を促してくる。

その上に白色系の薄タイツを穿く。

床に広げたチュチュの同心円の内円に足をいれる。

足を内円の左右の脚穴に通したら、痛まないようにゆっくりと腰まで引き上げる。

腰の辺りの水平に広がったスカートが、女の子になる覚悟を更に強く迫る。

胸のあたりまで引き上げたら、肩紐を持ち上げて肩に通す。

お尻のはみ出た肉を直し、下腹部のパンツの形や締め付けを整え、スカート位置を調整する。

胸の膨らみを整え、肩紐を調整する。

鏡を見ながらウィッグをつけ、リップクリームを塗る。

「もうバレリーナよ」、繰り返し自分に言う。

トレーナーを羽織り、バレエシューズを穿き、更衣室を出てスタジオに向かう。

自分につぶやく。「照れをなくしなさい」。

姿勢も、身のこなし方も、歩き方も、話し方にも女の子を意識する。

見慣れた光景として、取り立てて視線を向けてくる人はいない。



「おはようございます」

「おはようございます」

挨拶が軽やかになってきている。

あの壮行会以降、一体感のようなものが出てきている。

今日はチュチュを着ている子が多い。

「今日もよろしくね」

上級生から声を掛けられた。

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

最近、返事の声が、意識せず女の子の様になっている。

女の子の世界では、上級生たちに可愛がってもらう事は大切だ。


上級性たちからは

「あなたの演舞、本当の女の子になったわね」

「白鳥になった気持ちが伝わるわ」

「以前は妖艶に踊る男の子だったけど、今は優雅に踊る女の子よ」

などとも言われ、気分をよくしている。

「スカートも馴染んできているわね」

確かにボンやチュチュのスカートが以前はジャマな付属物だったが、最近は体の一部になったように感じることもある。スカートの広がりを自分のパーソナルスペースとして、周囲との距離感を察知できるようにもなってきている。

「チュチュで踊るのが楽しそうね」

一緒に踊る女の子達から、この頃よく言われる。

言われるように、チュチュを着るとモチベーションが上がり、上手く踊れて楽しさも増す。

それに最近、女の子として見られると嬉しい気持ちにもなる。

「チュチュを着れるのが嬉しい?」、何人からも尋ねられる。

「はい」と正直に気持ちを返事している自分にも違和感がない。

どうして以前はチュチュを着るのがあんなに恥ずかしかったのだろうか、という気持ちにさえなる。

優れた役者は衣装を着ると、その衣装の人物に成るという。「チュチュを着ると、魔法で女の子にされるのよ」、と上級生に言われた空想話しが本当に思える。

バレリーナに変身だけでなく、変心もしている。そんな自分がスタジオの鏡に映っている。

僕はおかしくなっているのだろうか。


僕は大勢で踊る練習が、最近楽しくなってきている。

コールドバレエは、動作の一致とフォーメーションの踊りと言っても良いだろう。

個々人の踊りが上達して動きも揃ってきているが、更にフォーメーションが上手く決まると嬉しくなる。こんな時は踊ることが更に楽しくなる。

群舞として上達してきているのを感じる。

舞台はスタジオとは広さも違うが、上手くいきそうな気がする。


春奈さんはクラスも別で今まで何回かコンクールにも出ていて、今回の発表会ではソロで踊るのかなと思っていたが、同じ舞台で高校生とユニットを組んで4人で踊る。“大きな白鳥の踊り”などだ。

今日は4人ともチュチュで練習している。僕たちよりも上のランクの踊りをする。

春奈さんはこの半年でものすごく進歩している。それに体形も、バレエをする為のような体形に成長している。

今年はコンクールには出ないで、ストレッチを含め基礎から徹底して練習を遅くまでしている。今後の進路を考えて、準備しているようだ。

僕はどういう訳か最近、春奈さんが気になる。ストイックに凄みを漂わせ一心に練習する春奈さんが以前は怖かったが、あの壮行会以降、年上なのにレオタードやチュチュ姿に可愛さを感じる。一生懸命に練習する春奈さんを愛おしいと感じる。

読んでくださり、ありがとうございます。

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